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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:07.04.17)
第111巻 第4号/平成19年4月1日
Vol.111, No.4, April 2007
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総 説 |
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岡本 伸彦 539 |
原 著 |
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三沢 あき子,他 550 |
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村田 浩章,他 556 |
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芳本 誠司,他 562 |
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此元 隆雄,他 568 |
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中林 玄一,他 573 |
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高橋 朋子,他 577 |
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松下 悠紀,他 582 |
短 報 |
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菅沼 広樹,他 587 |
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野末 裕紀,他 590 |
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地方会抄録(島根,山陰,熊本,岩手,東京,高知,滋賀,鹿児島,宮城,甲信,栃木,青森,愛媛,福岡,佐賀)
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593 |
日本小児内分泌学会成長ホルモン委員会・日本未熟児新生児学会薬事委員会報告 |
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641 |
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647 |
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【原著】
■題名
我が国における小児がん外来化学療法の診療
■著者
京都大学医学部附属病院外来化学療法部1),同 小児科2),京都府立医科大学小児科3) 三沢 あき子1) 足立 壮一2) 梅田 雄嗣2) 平松 英文2) 渡邉 健一郎2) 松本 繁巳1) 柳原 一広1) 細井 創3) 杉本 徹3) 中畑 龍俊2)
■キーワード
小児がん, 外来化学療法, 安全管理
■要旨
成人領域においては,数年前からがん化学療法が入院から外来へ急速にシフトし,各施設において外来化学療法センターの整備が進んでいる.この流れの中での我が国における小児がんに対する外来化学療法の現状を把握するために,日本小児白血病リンパ腫研究グループ参加施設に,小児がん患者の外来化学療法の現状に関するアンケート調査を行った.204施設に調査用紙を送付し,133施設(66%)から回答を得た.このうち122施設(92%)が小児の外来化学療法を行っていた.外来化学療法センターを設置している施設が63施設(48%)におよんだが,このうちの47施設(74%)は小児の外来化学療法は外来化学療法センターを使用せずに小児科外来で実施していた.小児外来化学療法の対象疾患は急性リンパ性白血病の維持療法が最も多く83%をしめた.外来化学療法をうけている患児の年齢は6歳未満が47%,次いで6歳以上10歳未満が27%であった.また,実施場所が小児科外来である106施設のうち外来化学療法加算を算定しているのは26施設(25%)のみであった.今後,小児に対しても,より安全で快適な外来化学療法を行うために,各施設の実情に応じた小児への安全管理システムの導入・応用,さらには,小児外来化学療法を配慮した外来化学療法加算施設基準の改定が望まれる.
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【原著】
■題名
ステロイド追加治療した川崎病患者のステロイド減量に伴う再燃への対応
■著者
静岡済生会総合病院小児科1),静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科2) 村田 浩章1) 木村 光明2) 見松 はるか1) 鈴木 一孝1) 渡辺 千恵子1) 石田 敦士1) 宮地 雅直1)
■キーワード
川崎病, γグロブリン, ステロイド, 再燃, 血清IgG
■要旨
川崎病に対してはγ-グロブリン大量静注療法(IVIG)が有用であるが,一部に不応患者が存在する.IVIG不応川崎病患者には追加療法として,ステロイドが使用されることが多い.ステロイドの効力は高いが,その減量により一旦鎮静化した炎症が再燃する事がある.現在,このような事態への対応については全く指針がない.今回,我々はこのような患者を4例経験し,IVIGの追加,ステロイドの増量あるいは両者の併用により再び炎症を鎮静化させることができた.IVIGの追加投与に当たっては過剰投与の弊害を避けるため,投与前の血清IgG値が2,500 mg/dl以下という基準を設けた.血清IgG濃度の推移の分析から,ステロイド減量に伴う再燃の時期に一致して血清IgG濃度も有効と考えられる濃度域よりも低下していることが明らかになった.ステロイド減量に伴う再燃に対してはステロイド増量のみでなく,IVIG追加投与を併用することにより最大の治療効果が得られることが示唆された.
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【原著】
■題名
先天性心疾患を合併した極低出生体重児60例の予後
■著者
兵庫県立こども病院周産期医療センター新生児科 芳本 誠司 中尾 秀人 溝渕 雅巳 吉形 真由美 柄川 剛 坂井 仁美
■キーワード
先天性心疾患, 極低出生体重児, 染色体異常, 肺動脈絞扼術, 予後
■要旨
目的:先天性心疾患(CHD)を合併した極低出生体重(VLBW)児の予後を検討する.
対象および方法:1994年10月から2005年12月までに日齢28未満に入院し新生児管理が行われたVLBW児1,218例のうちCHDを合併した60例を対象とし,臨床経過および転帰について後方視的に検討した.
結果:CHD以外の合併疾患がなかった29例(単独群)は,合併疾患があった31例(合併群)より有意に早産で低体重であった(在胎期間中央値28.9週 vs 35.0週,出生体重中央値1,012 g vs 1,212 g,各p<0.01).体重が2,000 g以上まで増加または生存退院したのは単独群29例中25例(86.2%),合併群31例中6例(19.4%)で,合併群が単独群より有意に予後不良であった(p<0.01).動脈管非依存型CHDは52例中30例(単独群24例全例,合併群28例中6例)が,体重2,000 g以上まで増加または生存退院した.4例(単独群1例,合併群3例)には体重2,000 g未満(1,160 g~1,610 g)で肺動脈絞扼術が行われた.動脈管依存型CHDは8例中1例(単独群5例中1例,合併群3例中0例)のみがプロスタグランジン長期投与後に短絡術が行われ生存退院した.動脈管依存型CHDが動脈管非依存型CHDより有意に予後不良であった(p=0.02).
結論:動脈管非依存型CHDを単独に合併したVLBW児は抗心不全療法や肺動脈絞扼術により管理可能であったが,動脈管依存型CHDを合併した場合はプロスタグランジン投与による長期管理可能な症例は限られ,CHD以外の疾患を合併した場合も予後不良であった.
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【原著】
■題名
小児ネフローゼ症候群に対するミゾリビン1日1回投与の再発抑制効果
■著者
宮崎大学医学部小児科1),宮崎県立日南病院小児科2) 此元 隆雄1) 高橋 真悠子2) 布井 博幸1)
■キーワード
ミゾリビン, 1日1回投与, 小児ネフローゼ症候群, 血中濃度
■要旨
小児ネフローゼ症候群では再発抑制やステロイド減量のために免疫抑制剤が使用される.ミゾリビン(MZR)の安全性は確認されているが,再発抑制効果は不十分である.一方,種々の疾患でMZRの投与量や投与法の変更による治療効果の改善が報告されている.今回,小児ネフローゼ症候群に対するMZR 1日1回投与への投与法変更による治療効果について年間平均再発回数とプレドニゾロン(PSL)投与量を用いて後方視的に検討した.投与方法を変更し6カ月以上観察し得た8例を対象とした.平均年齢は10.7歳.投与量は3.97 mg/kg,内服2時間後の血中濃度は2.36 μg/mlであった.MZR分2投与では再発回数は減少したが,PSL投与量に有意差は認めなかった.1日1回投与では再発回数,PSL投与量ともに有意に減少していた(投与前,分2投与,1回投与それぞれの年間平均再発回数;4.6, 2.5, 0.9回/年,PSL投与量;0.31, 0.13, 0.05 mg/kg/日).年齢が10歳以上の3例で効果不十分であったが,MZR投与量,血中濃度に差は認めなかった.投与法変更による重篤な副作用は認めなかったが,血清IgG値が低値であり感染症の合併には注意を要すると思われた.MZR 1日1回投与は小児ネフローゼ症候群の再発回数およびPSL投与量を減少し,有効かつ安全な治療法である.さらに治療効果を高めるために,投与量や至適血中濃度の設定など今後の検討が必要である.
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【原著】
■題名
分子疫学的に同一のBLNAR株インフルエンザ菌で発症した細菌性髄膜炎の2例
■著者
市立砺波総合病院小児科1),千葉大学大学院医学研究院小児病態学2),横浜市立大学附属病院臨床検査部3),千葉大学医学部臨床検査医学4),千葉大学・埼玉医科大学小児科5) 中林 玄一1) 住田 亮1) 嶋 大二郎1) 星野 直2) 黒木 春郎2) 満田 年宏3) 菅野 治重4) 上原 すゞ子5)
■キーワード
βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)インフルエンザ菌, インフルエンザ菌b型(Hib), 細菌性髄膜炎, パルスフィールドゲル電気泳動を用いた制限酵素切断断片長多型性解析(PFGE-RFLP), 集団保育
■要旨
Haemophilus influenzae type b(Hib)は小児細菌性髄膜炎の起炎菌としてよく知られているが,近年はβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR)株が高率に分離されるようになり,Hib感染症治療上の大きな問題点となっている.今回我々は集団保育環境が伝染に関与したと考えられたBLNAR株Hibによる細菌性髄膜炎の同時発症例を経験した.患児は5カ月男児と1歳9カ月女児で,前者の兄と後者は同じ保育園に通っていた.起炎菌は両者ともHib,生物型II型,βラクタマーゼ非産生菌であった.培養上,両者は同一の抗菌薬感受性パターンを示し,ディスク法で感受性株と判定されたにもかかわらず,微量液体希釈法にてMIC:ABPC≧8 μg/mLと高度耐性を認め,耐性度の解離からBLNAR株と考えられた.さらに両株のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)パターンも一致したことから同一菌株と同定され,集団保育環境を介した伝染の可能性が考えられた.本邦においてもHibワクチンによる予防の普及が望まれる.
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【原著】
■題名
急性脳炎・脳症を合併した伝染性紅斑の1例
■著者
高松赤十字病院小児科 高橋 朋子 関口 隆憲 井上 奈巳 松下 正民 須賀 健一 秋田 裕司 幸山 洋子 大原 克明
■キーワード
急性脳炎・脳症, 伝染性紅斑, ヒトパルボウイルスB19, サイトカイン
■要旨
伝染性紅斑の経過中に脳炎・脳症を発症した症例を経験した.症例は9歳の男児で紅斑出現2日後に痙攣で発症した.急性期に血清ヒトパルボウイルスB19(以下B19と略す)IgM, IgG抗体が陽性で,回復期に血清B19 IgM抗体の低下を認めた.髄液中のB19-DNAは陰性であったが,血清B19-DNAは陽性であった.本例はB19感染に伴う脳炎・脳症と考えられた.頭部CTでは進行する脳浮腫を認めた.人工呼吸管理下にチオバルビタール持続静注,軽度脳低体温療法,メチルプレドニゾロンパルス療法,大量ガンマグロブリン療法などを行い,後遺症なく治癒した.血清IL-6が高値で,高サイトカイン血症の存在を確認した.B19感染に伴う脳炎・脳症の病態形成に炎症性サイトカインが関与している可能性があると思われた.
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【原著】
■題名
緩和的ケアをおこなったmicrolissencephalyの1例
■著者
国立病院機構九州医療センター小児科1),同 臨床研究部2) 松下 悠紀1)2) 金城 唯宗1)2) 関 真人1)2) 佐藤 和夫1)2)
■キーワード
microlissencephaly, 重篤な中枢神経形態異常, ガイドライン, 緩和的ケア, 最善の利益
■要旨
出生後にmicrolissencephalyと診断し,緩和的ケアを行った症例を報告する.
症例は在胎38週4日,出生体重2,846 g.骨盤位の適応で帝王切開分娩により出生した.出生時Apgar scoreは1分後2点,5分後5点であった.頭囲は30.7 cm(-3.2 SD)と小頭であった.出生直後より全身性強直性痙攣を認めた.全経過を通して有意な反応はなく,痙攣のコントロールは不良であった.日齢3に頭部MRIにてmicrolissencephalyと診断した.画像所見,臨床症状および経過から,生命予後不良と判断し,家族とともに児に対するケアのあり方を決定していった.予後不良の児に対して,NICU内での日常ケアから児の誕生を祝うパーティー等,家族での時間を大切に過ごすためのケアを続けた.月齢3,家族の希望に沿い自宅で永眠された.
重篤で予後不良な児と家族に関わる時,「こどもの最善の利益」と「家族の福祉」を求めた医療において,過剰な治療の差し控えや中止は選択され得る.症例を通して児と家族に対する緩和的ケアの重要性を痛感し,周産期における予後不良の児に対する取り組みかたを,厚生労働省研究班のガイドライン,報告書を参考に考察した.
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【短報】
■題名
好中球エラスターゼ阻害剤が著効したRSウイルス感染に伴う急性肺障害の1例
■著者
越谷市立病院小児科 菅沼 広樹 今 紀子 鎌田 彩子 春名 英典 木下 恵司 大日方 薫
■キーワード
RSウイルス感染症, 急性肺障害, 好中球エラスターゼ阻害剤, PaO2/FiO2比
■要旨
RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)感染による急性肺障害をきたした1歳男児例に対し,ステロイドパルス療法,γグロブリンの投与を行ったが呼吸状態の改善なく,人工換気を施行した.しかし,呼吸不全は進行しPaO2/FiO2比が160となったため,好中球エラスターゼ阻害剤であるシベレスタットナトリウム水和物(0.2 mg/kg/時間)投与を開始した.投与開始3日後にはPaO2/FiO2比は正常化し,6日後には人工換気から離脱し,シベレスタットナトリウムを中止した.RSV感染症の重症化には,好中球による肺障害が関与していることから,好中球エラスターゼ阻害剤はRSV感染による小児の急性肺障害にも有用と考えられた.
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【短報】
■題名
市中病院における看護師によるトリアージシステム導入の経緯とその効果
■著者
筑波メディカルセンター病院小児科 野末 裕紀 今井 博則 齊藤 久子 青木 健 市川 邦男
■キーワード
トリアージ, 小児救急, ガイドライン, 緊急性
■要旨
小児救急外来における看護師によるトリアージは,本邦では国立成育医療センターがさきがけて行っているが,成人部門と合同の市中病院レベルで行っている施設は少ない.当院でも混雑する小児救急外来の効率化を目的に,トリアージシステムを導入した.導入初期はトリアージもれ,記載不備が多かったが,徐々に是正された.処置率,入院率からみると導入初期から比較的良好に分類でき,待ち時間も緊急度に応じて短縮された.また混雑度が高くとも蘇生・緊急・準緊急群では待ち時間を短縮することができた.人員不足やトリアージ場所など問題点もあるが,緊急度の高い患児に素早く対応するという本来の救急外来の目的に沿うこのシステムは,一般の市中病院でも有用であった.
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