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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:07.01.22)
第110巻 第12号/平成18年12月1日
Vol.110, No.12, December 2006
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総 説 |
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城 謙輔 1601 |
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東 範行 1616 |
3. |
急性脳症に対するステロイドパルスと脳低温と血液透析濾過による3者併用療法の有用性
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平井 克樹,他 1624 |
4. |
妊娠中の選択的セロトニン再取り込み阻害剤服用に伴う胎児・新生児への影響
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伊藤 直樹,他 1632 |
第109回日本小児科学会学術集会 |
分野別シンポジウム:インフルエンザup-to-date |
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菅谷 憲夫 1638 |
分野別シンポジウム:インフルエンザup-to-date |
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坂下 裕子 1644 |
原 著 |
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真部 哲治,他 1648 |
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清水 真樹,他 1652 |
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三善 陽子,他 1657 |
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新田(佐古) 恩,他 1665 |
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田村 知史,他 1671 |
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盛一 享徳,他 1676 |
短 報 |
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阿部 祥英,他 1680 |
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1683 |
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1699 |
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1708 |
小児医療政策室からのお知らせ「小児科の集約化・重点化を考えるシンポジウム」
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1709 |
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1710 |
「こどもの健康週間」作文コンクール 日本小児科学会会長賞受賞作品
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1711 |
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1712 |
【原著】
■題名
川崎病の主要症状を呈した熱傷後のToxic shock syndromeの1例
■著者
横浜市立大学附属市民総合医療センター
小児総合医療センター 真部 哲治 原田 知典 町田 裕之 志水 直 伊藤 秀一 相原 雄幸
■キーワード
毒素性ショック症候群, 川崎病, 熱傷, 黄色ブドウ球菌, TSST-1
■要旨
川崎病の主要症状を呈した熱傷後のToxic shock syndrome(TSS)の1例を経験したので報告する.症例は22番環状染色体による精神,運動発達遅滞が認められる2歳の女児である.II度,6%の熱傷(第1病日)で入院加療中,第3病日に発熱,痙攣,意識障害が出現し,その翌日には急激な血圧低下等のショック症状をきたした.同時に,両側眼球結膜の充血,手指の硬性浮腫,不定形発疹,口唇発赤を認め,川崎病およびTSSが疑われた.急性期に一致してCD4陽性T細胞の中でTCRVβ2陽性細胞の増加が認められたこと,および創部から検出されたMRSAがTSST-1産生株であったことからTSSと診断した.TSSの症状は川崎病に類似しているため,特に熱傷などの創部感染を伴って川崎病症状が出現した場合には,鑑別診断としてTSSの可能性を考慮すべきであると考えられた.
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【原著】
■題名
白血病治療中の敗血症性ショックに対してバソプレッシンの少量持続投与が奏功した女児例
■著者
徳島大学医学部発生発達医学講座小児医学分野 清水 真樹 岡田 隆文 渡邊 浩良 岡本 康裕 渡邊 力 香美 祥二
■キーワード
バソプレッシン, 敗血症性ショック, 血管拡張性ショック, カテコラミン不応性低血圧, 急性骨髄性白血病
■要旨
小児白血病治療において,骨髄抑制時の重症感染症は最も懸念される合併症であり,致死的であることも多い.なかでも,敗血症性ショックは末梢血管拡張による低血圧が病態の進展に大きく関与しており,臓器虚血による多臓器不全を来すため,その予後は不良である.敗血症性ショックに伴う低血圧は,多くの場合,カテコラミンの昇圧作用に対して抵抗性である.近年,このカテコラミン不応性低血圧に対してバソプレッシンの投与が有効であるとの報告が散見される.我々は,急性骨髄性白血病治療中に敗血症性ショックに至った小児に対してバソプレッシンの少量持続投与を行い救命し得た症例を経験した.患児は2歳の21トリソミーを有する女児.骨髄異形成症候群より急性骨髄性白血病(FAB分類M7)に進展した.寛解導入療法中に発症した敗血症性ショックに対してカテコラミンの投与がなされたが,低血圧は改善されず,利尿低下,胸腹水の貯留,全身の浮腫が進行した.そのため,血管拡張性ショックに対する効果を期待して,バソプレッシンの少量持続投与を併用した.バソプレッシン併用直後より,十分な昇圧と共に良好な利尿が得られた.安定した全身状態のもと,抗菌療法を継続し敗血症を治癒し得た.敗血症性ショックに伴うカテコラミン不応性低血圧に対して,バソプレッシン少量持続投与は試みられるべき治療法であると考えられた.
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【原著】
■題名
高度肥満と注意欠陥多動性障害を合併した閉塞性睡眠時無呼吸症候群の1治療例
■著者
大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学小児科学1),砂子療育園2),大阪バイオサイエンス研究所3),京都大学高次脳機能総合研究センター4) 三善 陽子1) 谷池 雅子1) 西村 久美2) 毛利 育子3) 中長 摩利子1) 恵谷 ゆり1) 虫明 聡太郎1) 立花 直子4) 大薗 恵一1)
■キーワード
高度肥満, 閉塞性睡眠時無呼吸症候群, 経鼻式持続陽圧呼吸療法, 注意欠陥多動性障害, ポリソムノグラフィ
■要旨
肥満は成人のみならず小児においても閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)の重要な発症因子かつ増悪因子である.症例は7歳男児,BMI40の高度肥満を認め,日中の傾眠・集中力低下・衝動性,夜間の無呼吸,夜尿を主訴に受診した.午睡ポリソムノグラフィ(polysomnography:PSG)にて閉塞性の無呼吸・低呼吸とそれに伴う覚醒を頻回に認め,無呼吸・低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI)は82.6と非常な高値であった.アデノイド肥大を認めたが摘出術は麻酔のリスクが高いと判断されたため,栄養指導,運動療法を強化すると同時に,経鼻式持続陽圧呼吸療法(nasal continuous positive airway pressure:nCPAP)を開始した.行動面における衝動性及び気流への過敏性を有したためnCPAPの導入は当初困難であったが,徐々に使用時間を延長し,数カ月かけて適正圧での使用が可能となり,いびき,傾眠と夜尿が消失した.終夜PSGにてAHI 4.2と著明な改善を認め,睡眠構築は正常化したが,衝動性や多動が消失しなかった.このため再度行動評価を行い注意欠陥多動性障害(attention-deficit/hyperactivity disorder:ADHD)と診断し,メチルフェニデートの経口投与を開始したところ,多動と衝動性が改善した.高度肥満,ADHDを有する小児OSAS患者においても,nCPAPは有効な治療法と考えられた.
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【原著】
■題名
化膿性髄膜脳炎へ進展した経篩骨洞型脳瘤の1例
■著者
仙台市立病院小児科1),同 脳神経外科2) 新田(佐古) 恩1) 高柳 勝1) 村田 祐二1) 山本 克哉1) 大竹 正俊1) 刈部 博2) 小沼 武英2)
■キーワード
けいれん重積, 化膿性髄膜炎, 化膿性脳炎, 経篩骨洞型脳瘤
■要旨
けいれん重積にて発症し化膿性髄膜脳炎に進展した経篩骨洞型脳瘤の1例を経験したので報告する.症例は,5歳男児.左側優位の全身性強直間代けいれん重積にて来院した.翌日には意識清明になったが,第3病日に髄膜刺激症状とともに再び意識障害が出現し化膿性髄膜炎を発症した.脳MRI矢状断,冠状断と3D-CTにて経篩骨洞型脳瘤の存在が明らかになった.炎症の沈静化を確認後,脳瘤切除術と前頭蓋底形成術を施行した.術後経過は良好で神経学的後遺症は残していない.非常にまれな先天奇形である経篩骨洞型脳瘤を介して副鼻腔炎から直接脳に炎症が波及したことによりけいれん重積を発症した.脳膿瘍を形成したことで意識清明期間を経過して髄膜炎に進展したと推測された.直接脳と交通のある脳瘤の存在は髄膜炎や脳炎を引き起こす危険因子になると考えられ,髄膜炎の原因が明らかでない場合や髄膜炎を繰り返す場合,外傷歴のある髄膜炎の場合には,まれではあるが脳瘤の存在も念頭におくべきであると考えられた.
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【原著】
■題名
初診時に左心房内への進展を呈していた胸膜肺芽腫の1例
■著者
福井大学小児科1),福井大学医学部附属病院病理部2) 田村 知史1) 金谷 由宇子1) 塚原 宏一1) 谷澤 昭彦1) 眞弓 光文1) 今村 好章2)
■キーワード
胸膜肺芽腫, 心臓腫瘍, 自家末梢血幹細胞移植
■要旨
胸膜肺芽腫は稀な原発性肺腫瘍であり,悪性度が高く,その予後も不良な疾患である.一方,原発巣から直接進展する心臓腫瘍もきわめて稀であり,心機能や血行動態,腫瘍塞栓,転移の面から迅速かつ慎重な対応が必要である.胸膜肺芽腫が心腔内に進展した小児例はこれまで2例しかないが,いずれも診断治療後早期に死亡していた.今回我々は,初診時すでに左心房内に進展していた胸膜肺芽腫の男児例を経験した.患児は化学療法を先行させた後,腫瘍切除,自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を行い,治療終了後1年寛解を維持している.本症例は,心腔内に進展を呈した胸膜肺芽腫では初の寛解維持例であり,自家造血幹細胞移植を含めた集学的治療は有効な治療法になりえると思われた.
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【原著】
■題名
アデノウイルス3型による重症肺炎の剖検例
■著者
函館中央病院小児科 盛一 享徳 佐々木 真樹 水上 晋 山田 豊
■キーワード
アデノウイルス3型, 肺炎, 核内封入体, 剖検, 急性呼吸促迫症候群
■要旨
アデノウイルス3型(Ad3)による重症肺炎が進行し呼吸不全のため死亡した小児症例を経験した.急性呼吸促迫症候群にて人工呼吸管理,ステロイドパルス療法等を施行するが無効であった.剖検肺にて壊死性気管支炎・細気管支炎,核内封入体,硝子膜形成が認められ,喀痰・尿・肺組織よりAd3が分離された.
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【短報】
■題名
脳死と考えられる状態が5年以上継続した後に在宅人工呼吸療法に移行した1幼児例
■著者
昭和大学医学部小児科1),同 耳鼻咽喉科2),渡辺こどもクリニック3) 阿部 祥英1) 大戸 秀恭1) 齋藤 多賀子1) 森田 孝次1) 古田 厚子2) 松本 道祐1) 渡邉 修一郎3) 田角 勝1) 板橋 家頭夫1)
■キーワード
急性壊死性脳症, 脳死, 長期心拍持続, 在宅人工呼吸療法
■要旨
症例は,現在6歳4カ月の男児である.1歳1カ月時に急性壊死性脳症に罹患した後,臨床的に遷延性脳死と思われる状態にあると判断されたが,長期間心拍が持続し,4歳7カ月時から在宅人工呼吸療法への移行を開始した.下垂体ホルモンの補充療法と注入栄養管理を行いながら,近医の往診医の協力を得て在宅人工呼吸療法を継続している.在宅人工呼吸療法に移行した小児脳死例の報告は少ないが,家族とも相談のうえ在宅医療とした.今後,小児の遷延性脳死症例への対応について充分な議論が必要であると思われる.
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