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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:06.12.01)
第110巻 第11号/平成18年11月1日
Vol.110, No.11, November 2006
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第109回日本小児科学会学術集会 |
分野別シンポジウム:小児血液・腫瘍難病に対する遺伝子治療・再生治療 |
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Upshaw-Schulman症候群―仮面血小板減少症―
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藤村 吉博 1491 |
分野別シンポジウム:小児血液・腫瘍難病に対する遺伝子治療・再生治療 |
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ウイルス特異的細胞傷害性T細胞を用いた免疫療法の基盤的研究
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葛島 清隆 1505 |
分野別シンポジウム:成長曲線から見えてくるこどもの心の問題 |
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小林 正子 1509 |
総 説 |
1. |
北米Childhood Cancer Survivor Studyによる小児がん経験者の長期的な問題点―第1編
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石田 也寸志 1513 |
2. |
北米Childhood Cancer Survivor Studyによる小児がん経験者の長期的な問題点―第2編
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石田 也寸志 1523 |
原 著 |
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井口 正道,他 1534 |
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井口 正道,他 1540 |
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今井 孝成 1545 |
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前垣 義弘,他 1550 |
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十河 剛,他 1558 |
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松山 温子,他 1565 |
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深沢 達也,他 1570 |
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住本 真一,他 1574 |
短 報 |
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木村 宏,他 1578 |
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1581 |
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1596 |
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1598 |
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1599 |
【原著】
■題名
入院加療した食物アレルギー合併乳児重症アトピー性皮膚炎患者に関する検討(第1報)
■著者
東京慈恵会医科大学小児科1),(独)国立病院機構相模原病院小児科2),同 臨床研究センターアレルギー性疾患研究部3) 井口 正道1)3) 宿谷 明紀2) 小俣 貴嗣2) 田知本 寛2) 海老澤 元宏3)
■キーワード
食物アレルギー, アトピー性皮膚炎, 気管支喘息, 乳幼児, IgE-CAPRAST
■要旨
平成9年から7年間に相模原病院小児科にてアトピー性皮膚炎(AD)の診断で入院加療した乳児のうち原因抗原として2項目以上の食物アレルギー(FA)を合併していた患児67例を対象とし,その患者背景および入院経過について検討した.
患児の出生月は7月〜12月の6カ月間で全体の70%を占め,97%の症例において生後4カ月までに湿疹が出現し,ほとんどの症例で顔面に認めていた.入院時の好酸球数は2,516±259 μL/mm3(平均±標準誤差),総IgE値は1,022±242 IU/mLと著明高値を呈していた.IgE-CAPRASTまたは皮膚プリックテスト(SPT)陽性にて感作が証明された食物抗原数は4.6±0.4項目であり食物負荷試験にて確定した原因食物抗原数は3.5±0.2項目であり,感作抗原数と比べ有意に減少していた.食物抗原は卵白が最も多く,次いで牛乳,小麦,大豆,魚,芋,鶏肉,ごま,落花生,豚肉,甲殻類,米の順であった.
1週間入院での原因食物の確定および軟膏治療,スキンケアによる皮膚症状の改善により母子ともにQOLの改善が得られ,重症乳児例での短期入院による精査加療は意義深いものと考えられた.
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【原著】
■題名
入院加療した食物アレルギー合併乳児重症アトピー性皮膚炎患者に関する検討(第2報)
■著者
東京慈恵会医科大学小児科1),(独)国立病院機構相模原病院小児科2),同 臨床研究センターアレルギー性疾患研究部3) 井口 正道1)3) 宿谷 明紀2) 小俣 貴嗣2) 田知本 寛2) 海老澤 元宏3)
■キーワード
食物アレルギー, アトピー性皮膚炎, 気管支喘息, 乳幼児, IgE-CAPRAST
■要旨
平成9年から7年間で相模原病院小児科において入院加療した67名の多抗原陽性食物アレルギー(FA)合併重症アトピー性皮膚炎(AD)乳児のAD・FA・気管支喘息(BA)の経過について検討した.
対象67例中,現在外来でフォローされているものは50例であった.退院時に食物負荷試験によって決定した原因食物抗原の平均は3.5抗原であったが,その後減少し5歳で1.4抗原と改善していた.食物抗原別の耐性獲得状況は,卵が5歳時においても耐性獲得率30%と低く,牛乳は5歳で,小麦,大豆に関しては2歳時には50%を超えていた.退院時は全例でステロイド軟膏が必要であったが,5歳でステロイド軟膏を常用しているのはわずか10%であった.また4歳時の喘息罹患率は53%と半数を超えており,ステロイド軟膏離脱群,悪化時のみ使用群からの喘息発症が常用群からの発症と比べ有意に高かった.
多抗原陽性FA合併重症AD児ではADの予後はFAの早期診断により比較的良好に保たれていたが,BA発症率は高く,5歳でも卵アレルギーや牛乳アレルギーが遷延するという特徴を持っていた.
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【原著】
■題名
学校給食において発症した食物アレルギーの全国調査
■著者
独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科 今井 孝成
■キーワード
食物アレルギー, 学校給食, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー, 疫学調査
■要旨
目的
学校給食における食物アレルギー対策は決して充分とはいえず,いかに学校における食の安全を確保するかが課題である.しかしこれまで学校給食で発症した食物アレルギーの調査報告はなく,その実態は不明であった.
方法
社団法人全国学校栄養士協議会の協力を得て,同会に所属する全国の学校栄養士にアンケート用紙を郵送で配布した.調査は平成14,15年度の実態に関して行い,調査対象は平成14年度が小中学生8,035,306名,平成15年度が小中学生7,062,583名となった.
結果
のべ637症例が集積され,食物アレルギー発症頻度は約2.3万人に1名であった.原因食物は果物類が最も多く,以下甲殻類,乳製品が多かった.出現症状は皮膚症状が最も多く,ショック症状は7.2%であった.死亡例は無く,入院症例が4.7%,医療機関受診症例が59.0%であった.原因が判明した436名中,255例は新たに診断された食物アレルギーであった.運動中にアレルギー症状が出現したものは21.1%であり,原因食物は甲殻類が最も多かった.発症の第1発見者は本人以外では担任が39.5%で最も多く,主な対応者は養護教諭が53.8%で,次に担任が34.9%であった.
結論
学校給食における食物アレルギー発症頻度は決して稀ではなく,健康被害の予防に向けた対策を講じることは緊急課題である.新規発症例の予防は困難であるが,発症後の迅速な対応のためには関係各所の啓発が重要である.
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【原著】
■題名
けいれん重積で発症する急性脳症の早期診断における臨床症状と検査所見
■著者
鳥取大学医学部脳神経小児科1),同 健康政策医学2),同 周産期・小児医学3) 前垣 義弘1) 黒沢 洋一2) 林 篤3) 辻 靖博3) 岡本 里伊奈1) 近藤 章子1) 景山 博子1) 井上 岳彦1) 杉浦 千登勢1) 関 あゆみ1) 斎藤 義朗1) 神崎 晋3) 大野 耕策1)
■キーワード
急性脳症, 意識障害, けいれん重積, 頭部画像検査, 肝機能障害
■要旨
けいれん重積で発症する急性脳症の早期診断に重要な臨床症状と検査所見を見出すことを目的に,けいれん重積小児例(211発作)を後方視的に検討した.21発作で後遺症を認め急性脳症と診断した.急性脳症は,急性期臨床経過から,単相型(けいれん後の意識障害が一定期間遷延し,その後に改善した場合と急性期に死亡した場合),二相型(意識障害が一旦改善傾向を示すが3〜6日後に増悪した場合),反復型(けいれん発作が長期間反復し,意識障害を伴う場合),に分類した.早期診断の要点は以下のとおりであった.急性脳症は全例急性期に発熱を伴っていた(107発作).107発作中,急性期に頭部画像異常を認めた8発作は全て急性脳症であった(単相型7,二相型1).頭部画像に異常のない99発作のうち,AST/ALT>100であった2例は急性脳症であった(二相型).残り97発作のうち,意識レベルが12時間後にJapan Coma Scale II・IIIであった16発作中8発作が急性脳症であった(単相型1,二相型6,反復型1).1〜3日後も,意識障害が遷延する場合に急性脳症である率は高くなるが,意識清明となった急性脳症もあった(3発作).二相型脳症は,急性期画像異常や肝機能異常などが少なく早期診断は容易ではないが,12時間後の意識レベルが予測に重要である.
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【原著】
■題名
小児期の自己免疫性肝炎における肝病理組織学的検討
■著者
国際医療福祉大学附属熱海病院小児科1),順天堂大学医学部病理学第一講座2) 十河 剛1)2) 藤澤 知雄1)
■キーワード
interface hepatitis, 自己免疫性肝炎スコアリングシステム, Histological activity index, 巨細胞性変化, 胆管病変
■要旨
本邦における小児期に発症した自己免疫性肝炎(AIH)の肝病理組織学的な特徴を検討した.AIHの特徴的所見とされるinterface hepatitisは全例で認められたが,肝小葉中心領域の壊死・炎症も12例中8例(66.7%)と高率にみとめられた.とくに急性肝炎発症型に有意に多かった.また,巨細胞性変化は急性肝炎発症型では全例に認められ,小児の急性肝炎発症型では診断的価値があると考えられた.今回検討した12例では肝病理組織学的には完成された肝硬変は認められなかった.炎症細胞浸潤はリンパ球が主体であったが,形質細胞浸潤もみられ,半数に好酸球浸潤もみられた.胆管病変は12例中11例(91.7%)と高率に認め,原発性硬化性胆管炎(PSC)との鑑別が病理学的にも重要であると考えられた.
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【原著】
■題名
ステロイドが有効であったコリン性蕁麻疹と後天性無汗症の合併例
■著者
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科1),つるた小児科2),藤田保健衛生大学医学部小児科3) 松山 温子1) 小松原 亮1) 平田 典子1) 各務 美智子1) 佐野 葉子1) 須賀 定雄1) 宇理須 厚雄1) 鶴田 光敏2) 浅野 喜造3)
■キーワード
特発性後天性無汗症, コリン性蕁麻疹, ステロイド治療
■要旨
症例は14歳男児.抗ヒスタミン薬が無効な難治性コリン性蕁麻疹の治療中に,後天性無汗症の合併が判明し,プレドニゾロン内服にて発汗異常,蕁麻疹とも軽快した.治療前の運動負荷試験で疼痛と蕁麻疹が出現し,血中ヒスタミン,トリプターゼの上昇を認めたが,治療後には軽減し,蕁麻疹発生の機序に肥満細胞の関与が示唆された.皮膚の組織学的検査では汗腺組織に異常を認めなかった.難治性のコリン性蕁麻疹の場合には,後天性無汗症・減汗症の存在を疑い,合併が証明されればステロイド治療を早期に選択する価値があると考えられた.
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【原著】
■題名
新生児淋菌性結膜炎の1例
■著者
名古屋記念病院小児科 深沢 達也 福島 由佳 牛田 肇 森田 誠 長谷川 真司
■キーワード
淋菌性結膜炎, 淋菌感染症, 新生児, 経産道感染, 薬剤耐性
■要旨
経産道感染による新生児淋菌性結膜炎の1例を経験した.日齢3の新生児に著明な眼脂と眼瞼腫脹を認め,児の眼脂および母の腟分泌液から淋菌が分離された.菌の薬剤感受性試験はレボフロキサシン耐性を示した.点眼薬のみでは効果がなく経静脈的にセフトリアキソンを投与したところ,症状は速やかに改善した.
新生児淋菌性結膜炎は,本邦での報告は稀であるが,近年,性感染による成人女性の淋菌感染症は増加しており,今後,母子感染による症例の増加も懸念される.急速に進行し敗血症や角膜穿孔に至る例もあるため,迅速な診断と抗生剤の全身投与が必須である.また,本邦では淋菌の薬剤耐性株が蔓延しており,適切な抗生剤の選択が必要と思われる.
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【原著】
■題名
気管支喘息として経過観察されていた気管腫瘍の1例
■著者
大阪赤十字病院小児科 住本 真一 鶴和 美穂 森田 耕輔 宋 大光 杉峰 啓憲 坂本 晴子 濱田 実保 葭井 操雄 山本 英彦 金岡 裕夫 田中 晴樹 新居 正甫
■キーワード
気管腫瘍, 顆粒細胞腫, 気管支喘息, フローボリュームカーブ
■要旨
気管支喘息として経過観察されていた気管腫瘍の13歳女児例を経験した.患児は,喘鳴を伴う呼吸困難発作を繰り返し,近医で気管支喘息として2年以上吸入ステロイドを含めた薬物治療を受けていた.今回,患児は呼吸困難発作を契機に当科へ入院となった.血清IgE値とダニ特異IgE値の高値も認めたため,気管支喘息と診断した.発作はすぐに軽快したが,その後に肺炎や呼吸困難発作を繰り返し,通常の喘息発作の治癒経過と異なっていた.また,深呼吸ができず,呼吸機能検査のフローボリュームカーブも気管支喘息と一致しなかった.以上より,上気道の狭窄性病変の存在を疑い,胸部CTを施行したところ,気管分岐部直上に気管内をほぼ占拠する腫瘍を認めた.全身麻酔下経気道的に腫瘍の7〜8割を鉗子で切除し,病理組織診断にて顆粒細胞腫と診断した.切術後3年以上経過するが,現在無治療で,全く無症状である.気管腫瘍は症状が気管支喘息に似ているため,しばしば誤診されることがある.しかし詳細な経過観察とフローボリュームカーブの検討により本疾患の推測は可能なものと思われた.
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【短報】
■題名
慢性活動性EBウイルス感染症の長期予後について
■著者
名古屋大学大学院ウイルス学分野1),大阪母子保健総合医療センター血液・腫瘍科2),埼玉県立小児医療センター感染免疫科3),高知大学医学部小児思春期医学4),大阪母子保健総合医療センター血液・腫瘍科5),九州大学大学院成長発達医学6),富山大学医学部小児科7),横浜市立大学医学部小児科8),京都府立医科大学小児科9),東京医科歯科大学発達病態小児科学10),高知大学医学部感染分子病態学11),北海道立衛生研究所感染症センター微生物部12),金沢大学医学部保健学科13),東北大学医学部小児科14),高知大学医学部小児思春期医学15) 木村 宏1) 河 敬世2) 大石 勉3) 前田 明彦4) 岡村 隆行5) 大賀 正一6) 金兼 弘和7) 森 雅亮8) 森本 哲9) 森尾 友宏10) 今井 章介11) 岡野 素彦12) 谷内江 昭宏13) 土屋 滋14) 脇口 宏15)
■キーワード
EBV, CAEBV, 全国調査, 生存分析
■要旨
2000年に行った全国調査により診断した慢性活動性EBウイルス感染症症例82例を追跡調査し,Kaplain-Meier法による生存分析を行った.生存率は発症後5年59%,10年48%,15年では29%と年を経るごとに落ちていた.前回調査で予後に差を認めた感染細胞(T細胞型:NK細胞型),発症年齢(8歳以上:8歳未満)の比較では,発症後5年,15年ではT細胞型および8歳以上の生存率が低く顕著な差を認めたが,15年以降はほとんど生存率の差が認められなかった.24症例が造血幹細胞移植を受けており,移植後の5年生存率は53%であった.
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