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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:06.11.10)
第110巻 第10号/平成18年10月1日
Vol.110, No.10, October 2006
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第109回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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高橋 公太 1367 |
教育講演 |
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松本 慎一 1378 |
教育講演 |
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内潟 安子 1385 |
原 著 |
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多田 光,他 1392 |
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抗菌薬適正使用のための外来小児科ワーキンググループ,他 1401 |
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林谷 道子,他 1409 |
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内田 俊彦,他 1414 |
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田辺 卓也,他 1418 |
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石井 まり,他 1422 |
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塩浜 直,他 1428 |
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秋吉 健介,他 1433 |
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杉山 延喜,他 1437 |
小児医療 |
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江原 朗 1442 |
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桜井 淑男,他 1446 |
委員会報告 |
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入院中の患児と家族を支援するシステムに関する調査―平成17年度アンケート結果報告―
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石崎 優子,他 1450 |
日本小児内分泌学会報告 |
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田中 弘之,他 1468 |
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長谷川 奉延,他 1472 |
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成長ホルモン分泌不全性低身長症の小児期の成長ホルモン治療から成人期の成長ホルモン治療への移行ガイドライン
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横谷 進,他 1475 |
イーライリリー海外フェローシップ報告書 |
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瀧谷 公隆 1480 |
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1486 |
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1488 |
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1489 |
【原著】
■題名
肥満児の心理学的特徴と家族背景
■著者
立正佼成会附属佼成病院小児科1),東京女子医科大学東医療センター2),高柳病院3) 多田 光1)2) 梅津 亮二2) 木下 敏子3) 杉原 茂孝2)
■キーワード
肥満, 小児, 心理学, 家族
■要旨
近年の肥満児の増加に伴い,私たちは小児肥満の改善と予防のために,家庭環境の中から関与する因子を検出する目的で,肥満児の性格検査,家庭環境調査を行い,非肥満児と比較検討した.対象は小学5年生から中学3年生までの軽度,中等度,高度肥満児27例で男子16例,女子11例である.そして非肥満児41例(小学5,6年生20例,中学生21例)を対照群とした.尚Family Relationships Inventory(以下FRI)は肥満群のみ施行した.肥満児の家族環境は対照群と比較すると,複合家族が多く,朝食はとらない,とったとしてもひとりでとるものが多いと言う結果を得た.YG性格検査では対照群と比べ,D型が少なく,E型が多い結果となった.さらに30項目について文章完成法検査を施行したところ,対照群と比較して,肥満群に「好き」などの肯定的表現が少なく,特に父親への態度で拒否的,防衛的表現が多く見られた.FRIの結果からは,父親母親ともよく子供を受容していたが,高度肥満群で子供を甘やかし自由にしている傾向がうかがえた.肥満児の治療に家族面接を取り入れることで肥満度が改善した症例を実際経験し,肥満児の治療には,家族を含めたカウンセリングが必要であると思われた.
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【原著】
■題名
インフルエンザ菌・肺炎球菌髄膜炎の早期スクリーニングの可能性
■著者
耳原総合病院小児科1),ふかざわ小児科医院2) 抗菌薬適正使用のための外来小児科ワーキンググループ 武内 一1) 深澤 満2)
■キーワード
細菌性髄膜炎, インフルエンザ菌b型, 肺炎球菌, occult bacteremia, CRP
■要旨
目的:わが国では,細菌性髄膜炎,特にインフルエンザ菌b型(以下,Hib)髄膜炎が増加している.感染病巣不明の発熱として発症することが多い細菌性髄膜炎の見逃しを防ぐには,診断の確定前にリスクの高い症例を選び出して対応する必要がある.今回,米国の外来診療で一般的な各種のスクリーニング法の有効性を検討した.対象と方法:1983年から2002年までの20年間に17施設で経験した細菌性髄膜炎98例中,インフルエンザ菌による57例と肺炎球菌による21例を対象とし,発熱第1病日と第2病日の臨床所見と検査所見を後方視的に検討した.臨床所見ではAcute Illness Observation Scales(以下,AIOS)の6つの観察項目(泣き声,親への反応,覚醒度,皮膚色,脱水の程度,表情)による重症度判定基準,検査所見ではBaraffらの重症細菌感染症の判定基準である末梢血白血球数が15,000/μl以上,およびKuppermannらの好中球数が10,000/μl以上,さらにわが国で頻用されているCRP値について検討した.結果:臨床所見および検査所見による判定基準で,陽性率が50%以上であったのは,発熱第1病日および2病日での肺炎球菌症例における末梢血白血球数および好中球数,第2病日のインフルエンザ菌症例および肺炎球菌症例におけるCRP値5.0 mg/dl以上であった.結論:細菌性髄膜炎を発熱早期にスクリーニングすることは現在の医療水準では困難であり,特にインフルエンザ菌髄膜炎は発熱第1病日では過半数が見逃される.
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【原著】
■題名
早産児に対するパリビズマブの有用性
■著者
広島市立広島市民病院未熟児新生児センター 林谷 道子 野村 真二 中田 裕生 高下 敦子 早川 誠一
■キーワード
早産児, RSウイルス感染症, パリビスマブ
■要旨
2002年からの3シーズン(各年の10月から翌年3月のRSウイルス流行期)にパリビズマブを投与した早産児402例(投与群)を投与開始前の3シーズンの431例(対象群)と比較検討した.
投与群と対象群の平均在胎週数,平均出生体重に差はなく,RSウイルス感染症による全体の入院率,入院日数に差はみられなかったが,在胎28週以下で流行期に月齢12カ月以下の児では投与群で有意にRSウイルス感染症が少なかった.
在胎28週以下の児では,母体由来のIgG移行抗体がより少なく,パリビズマブ投与による抗体価の上昇は重篤化の予防に有効であったものと思われる.
投与群のRSウイルス感染児8例のうち,慢性肺疾患のない4例では,前回のパリビズマブ投与後28〜56日で発症した.これらの児では重症化し血中濃度が低下していた可能性が考えられた.一方,慢性肺疾患を合併した4例では,肺の予備能の低下にもかかわらず,投与後発症までの期間は9〜26日で,有効血中濃度が保たれていた時期であり,投与により重篤化を防ぐことができた.
今後パリビズマブの投与にも関わらず重篤なRSウイルス感染症に罹患した例で血中濃度の評価を行い,流行期までに十分な血中濃度を保つために必要な投与開始時期,投与回数についての検討が必要と思われる.
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【原著】
■題名
早産児の遷延性無呼吸に対する増粘ミルクの効果
■著者
岩手医科大学医学部小児科 内田 俊彦 佐々木 美香 熊谷 秀規 松本 敦 戸津 五月 千田 勝一
■キーワード
早産児, 無呼吸, 増粘ミルク, 胃食道逆流, pHモニタリング
■要旨
修正37週以降になっても無呼吸が遷延する早産児7例に増粘ミルクを使用し,その有用性を検討した.無呼吸は増粘ミルク開始前後の各3日間記録し,増粘ミルクは「はぐくみ」に0.35%ローカーストビンガムを含有するHL-350を使用した.このうち5例で24時間食道pHを測定した.その結果,増粘ミルク開始前後の各3日間において,平均無呼吸回数(SD)は10.9回(3.7)から6.1回(5.4)へ有意に減少した(p<0.01).pH 4.0未満の逆流時間率は2例で著明に低下した.増粘ミルクによる有害事象は観察されなかった.早産児の遷延する無呼吸には胃食道逆流によるものが少なからず混在する可能性があり,今後,増粘ミルクの有用性を検討する価値があると考えられた.
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【原著】
■題名
児童虐待の診断・対応に関する救急外来担当医師へのアンケート調査
■著者
市立枚方市民病院小児科1),枚方市虐待問題連絡会議2),大阪医科大学小児科3) 田辺 卓也1)2) 玉井 浩3)
■キーワード
子どもの虐待, 小児救急, アンケート調査, 通告義務, 児童虐待防止法
■要旨
枚方市虐待問題連絡会議において,子どもの虐待対応マニュアルを作成する準備として,医師に対するアンケート調査を行った.対象は市立枚方市民病院の救急外来に出務している小児科医師19名,外科系医師21名である.子どもの虐待を診断した経験は,小児科医84.2%に対し外科系医師は33.3%と少なく,有意(p=0.003)に差がみられた.ともに身体的虐待の経験が多く,ネグレクト,心理的虐待,性的虐待の順に診断の経験は少なかった.虐待と診断したあと,児童相談所などに通告したことのある医師は小児科医81.3%,外科系医師42.9%にとどまり,一人で対応した場合や,当事者である保護者と相談して方針を決めた場合もみられた.児童福祉法や児童虐待防止法で定められた通告義務は小児科医の78.9%,外科系医師の52.4%,通告先は小児科医の63.2%,外科系医師の33.3%しか認識しておらず,子どもの虐待に対する診断のきっかけや対応法の知識不足が背景にあると考えられた.以上の結果より,医師,特に外科系医師に対して診断のきっかけとなる症状や疑った後の対応法,その際の関連法律のような基本的な事項の啓発が,さらに必要であることが確認された.
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【原著】
■題名
ピーナッツ気道異物の診断におけるマルチスライスCTの有用性
■著者
岩手医科大学医学部小児科学講座1),同 放射線医学講座2) 石井 まり1) 内田 俊彦1) 松橋 一彦1) 相馬 洋紀1) 石川 健1) 佐々木 美香1) 佐々木 真理2) 千田 勝一1)
■キーワード
マルチスライスCT, 気道異物, ピーナッツ, 小児
■要旨
X線透過性の気道異物が疑われた6例にマルチスライスCT(computed tomography)を施行した.このうち4例はピーナッツ気道異物の典型例で,ピーナッツ摂取後に咳嗽が出現し,呼気性喘鳴や呼吸音の左右差,Holzknecht signが認められたが,他の2例は非典型例で,それぞれ誤嚥性肺炎と喘息が疑われた.マルチスライスCTにより全例で気道異物が描出され,硬性気管支鏡でそれと同じ部位にピーナッツを確認し,摘出した.マルチスライスCTは息止めの必要がなく,約10秒の撮影時間で高分解能の画像を描出できるため,幼児のピーナッツ気道異物の診断に有用と考えられた.この際,画像スライス厚が10 mmではピーナッツを見逃す危険があり,5 mm未満が推奨される.
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【原著】
■題名
体幹失調と群発性けいれんを認めた突発性発疹関連脳症の3例
■著者
総合病院国保旭中央病院小児科 塩浜 直 北澤 克彦 前本 達男 川戸 仁 高橋 明子 仙田 昌義 稲川 直浩 本多 昭仁
■キーワード
ヒトヘルペスウイルス6, 突発性発疹, 無熱性けいれん, 体幹失調, 脳血流シンチグラム, 急性脳症
■要旨
我々は有熱性けいれんの後,意識清明期を経て解熱発疹期に再度けいれんを呈した突発性発疹の3例を経験した.
うち1例で血清学的にヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の初感染が証明され,髄液よりHHV-6特異的DNAが検出された.3例とも解熱発疹期のけいれん前には意識清明で明らかな,錐体路徴候を認めなかったが体幹失調を呈した.急性期のCT,MRIでは異常を検出できなかったが,2例で脳血流シンチグラム上小脳の血流低下を認めた.3例とも体幹失調は自然軽快したが1例では2年後に言語発達遅滞が明らかとなった.2例では抗けいれん薬の定期内服を行っていないが,全例でけいれんの再発は認めていない.突発性発疹あるいはHHV-6初感染例において体幹失調は強調されていないが,有熱性けいれん後の体幹失調は軽度の脳症が持続している徴候であり,無熱性けいれんの予兆となりえるのではないかと考えられた.
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【原著】
■題名
在宅管理のためにパルスオキシメーターが有用であった特発性肺ヘモジデローシスの1例
■著者
大分大学医学部脳・神経統御講座小児科学 秋吉 健介 山田 博 末延 聡一 小杉 雄二郎 長倉 智和 川野 達也 後藤 一也 泉 達郎
■キーワード
特発性肺ヘモジデローシス, 肺出血, リポステロイド, パルスオキシメーター
■要旨
1歳10カ月,顔色不良と活動性の低下にて発症した女児.2歳7カ月時に喀血を認めた.鉄欠乏性貧血と肺出血,胃液細胞診によるヘモジデリン貪食細胞より,特発性肺ヘモジデローシスと診断した.抗アレルギー療法,吸入ステロイド療法は効果なく,プレドニゾロン投与にて軽快するも,減量に伴い肺出血は再発した.リポステロイド(0.1 mg/kg/回,週2回静注)に変更し軽快後,アザチオプリンとステロイド吸入の併用により,リポステロイドから離脱した.現在9歳で,肺出血の再発はなく,拘束性肺障害を認めるも,身体発育,精神運動発達は正常である.軽度〜中等度の反復する肺出血の際の自覚症状は乏しく,当初は対応が遅れることがあったが,簡易型パルスオキシメーターによる酸素飽和度は,肺出血の程度の指標となり,在宅外来管理と,再発時の早期診断と治療を行う上で有用であった.
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【原著】
■題名
ステロイドパルス療法中に急性肺血栓塞栓症を併発した急性散在性脳脊髄炎の1例
■著者
東海大学医学部専門診療学系小児科学 杉山 延喜 加藤 真由美 佐々木 真理子 宮下 好洋 新村 文男 市川 家國
■キーワード
急性肺血栓塞栓症, 急性散在性脳脊髄炎, ステロイドパルス療法, 抗凝固療法, D-dimer
■要旨
症例は15歳男児.意識障害を主訴に入院となった.髄膜刺激症状と膀胱直腸障害があり,髄液検査にて細胞数,蛋白およびミエリン塩基蛋白の上昇を認めた.頭部MRIにて大脳白質に散在性の病変を認め,急性散在性脳脊髄炎と診断した.ステロイドパルス療法中に,急激な呼吸状態の悪化を認め,各種検査の結果より急性肺血栓塞栓症(acute pulmonary thromboembolism:以下APTE)と診断した.呼吸状態悪化時よりAPTEを疑い,抗凝固療法を開始し症状は改善し,神経学的所見も含め後障害は呈さなかった.APTE発症の危険因子として肥満,体動減少および脳圧降下剤使用による血管内脱水が関与し,更に急性散在性脳脊髄炎の治療のためのステロイドパルス療法がAPTEの発症を増長したと思われた.またAPTEは認識が高まったことと,画像診断の進歩により近年頻度は増加傾向であり,早期治療が予後を左右する疾患として成人においては注目されている.小児科領域ではAPTEに対する認識度はまだ低く,急激な呼吸状態悪化時には同疾患も鑑別に考慮し,確定診断前より治療を開始することが重要と思われた.
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【小児医療】
■題名
新臨床研修制度導入の前後における各都道府県の小児科医師数の変化について
■著者
コアラメディカルリサーチ 江原 朗
■キーワード
臨床研修制度, 小児科医師, 偏在, 地域医療
■要旨
平成16年4月に必修化された新臨床研修制度の導入の前後において,各都道府県の小児科医師数がどう変化したのか検討した.
平成14年12月から平成16年12月にかけて小児科医師の総数は196人増加した.特に東京都をはじめとする関東地方と九州・沖縄への集中が著しかった.また,時間外および休日診療の主体となる病院勤務の小児科医師は,この2年で36人減少したが,関東地方では104人(東京都だけで98人),九州・沖縄では47人増加した.
勤務医が増加している関東地方,特に東京都では他の地域に比べて病院1施設あたりの小児科医師の数が多く,時間外・休日の小児救急医療に従事する月当たりの日数も他の地域に比べて少ないと考えられる.また,豊かなマンパワーを背景に高度先進医療に従事することもできる.勤務医が東京都をはじめとした関東地方に集中する理由を検討し,地方においても小児科医師の過重労働の改善と先進技術習得の促進を行わなければ,地域医療は崩壊する.
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【小児医療】
■題名
急増する小児救急患者への大学附属病院小児科の対応策と変革の方向性
■著者
埼玉医科大学総合医療センター小児科 桜井 淑男 森脇 浩一 荒川 浩 高田 栄子 田村 正徳
■キーワード
小児救急医療, 休日・時間外診療, 大学附属病院, 小児科
■要旨
我が国の小児救急医療体制の不備は,深刻な社会問題となり,小児病院・大学附属病院のあり方にも根本的な再構築を迫っている.我々は,1大学附属病院の休日・時間外救急医療に占める小児科診療の現状を明らかにし,今後の大学病院小児科の方向性を提示した.
対象と方法:平成11年から平成16年までの埼玉医科大学総合医療センター休日・時間外診療の患者総数を年度別,各科別に後方視的に解析し,当センター休日・時間外救急医療における小児科診療の意義及び今後の課題を検討した.
結果:平成16年度の当センター休日・時間外患者総数において,小児科はその約40%を占め,各科別では第一位であった.また,休日・時間外入院患者総数における小児科入院患者の占める割合は約20%で第一位であった.一方,平成16年度の小児科外来患者総数及び小児科入院患者総数に占める休日・時間外の割合はどちらも約半数を占めていた.
考察:大学附属病院全体の休日・時間外診療に占める小児救急医療の比重が年々増大している.これは,国民が小児医療の専門性へ期待する一方で,市中病院が不採算の小児救急から撤退したことなどから,大学病院に対して,1〜2次までをも包括した小児総合医療を求めている結果と考えられる.このような現状では,休日・時間外の小児救急医療に対して,小児科の個別の対応ではなく,大学附属病院全体の問題として捉え,診療体制を再構築する必要があると考えられた.
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