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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:06.09.07)
第110巻 第8号/平成18年8月1日
Vol.110, No.8, August 2006
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総 説 |
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小林 圭子,他 1047 |
2. |
シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)―臨床像の検討
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大浦 敏博 1060 |
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中野 眞汎 1066 |
第109回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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観察,発見,挑戦の小児医学・小児医療―ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1欠損症発見からセレンディピティを学ぶ―
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小泉 晶一 1073 |
原 著 |
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南部 光彦,他 1082 |
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名木田 章,他 1092 |
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西村 龍夫 1099 |
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井埜 利博,他 1105 |
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土屋 貴義,他 1112 |
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井上 奈巳,他 1117 |
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河津 由紀子,他 1122 |
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田中 政幸 1126 |
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石井 茂樹,他 1130 |
短 報 |
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西田 光宏,他 1134 |
小児医療 |
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緒方 昌平,他 1137 |
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1141 |
イーライリリー海外フェローシップ報告書 |
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川崎 幸彦 1161 |
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1167 |
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1170 |
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1180 |
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1182 |
【原著】
■題名
小児喘息治療薬に関するアンケート調査―ガイドラインを参考にするかどうかでの違い―
■著者
天理よろづ相談所病院小児アレルギーセンター1),こくらアレルギークリニック2),別表3)
南部 光彦1) 古庄 巻史2) 小児気管支喘息治療 管理ガイドライン2002作成委員会3)
■キーワード
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン, 発作時治療, 長期管理薬
■要旨
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(GL)2002の喘息治療に対する影響を調べる目的で,GLを参考にしているかどうかに分けて,アンケート調査で見た発作時の治療と長期管理薬について比較検討した.
急性発作時の治療として,GLを参考にしている医師は,小発作でβ2刺激薬吸入を,大発作で酸素吸入下でのβ2刺激薬の吸入,キサンチン製剤静注,ステロイド薬静注,イソプロテレノール持続吸入を行い,呼吸不全ではさらに気管内挿管の上,人工呼吸を選択した者が多かった.一方,GLを参考にしていない医師は,少人数ではあったが,小・中発作でエピネフリン皮下注やステロイド薬の全身投与を選んだ者が多かった.
長期管理薬では,GLを参考にしている医師は,間欠型と軽症持続型でロイコトリエン受容体拮抗薬を使用し,中等症・重症持続型ではそれに加えてDSCG+β2刺激薬の吸入と吸入ステロイド薬を選んだ者が多かった.乳児喘息では,軽症持続型で,上記に加えて徐放性テオフィリン製剤を選んだ者が多かった.一方GLを参考にしていない医師は,少人数ではあったが,経口・貼付β2刺激薬や吸入・経口ステロイド薬をステップの低い段階から使用している者が多かった.
GLを参考にしている医師はほぼGLに沿った治療を行っていたが,GLを参考にしていない医師の中には,疑問の残る治療を行っている者が存在した.今後もGLのより一層の普及が望まれる.
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【原著】
■題名
炎症性耳下腺腫脹患児における耳下腺超音波検査の有用性
■著者
井原市立井原市民病院小児科1),同 内科2),川崎医科大学第1小児科3),守口敬仁会病院消化器科4)
名木田 章1) 青木 理香1) 綾田 潔2) 小坂 康子3) 荻田 聡子3) 小林 嘉一郎3) 飴本 完二4)
■キーワード
耳下腺炎, 耳下腺超音波検査
■要旨
炎症性耳下腺腫脹患児における耳下腺超音波検査の有用性について検討した.過去3年間に耳下腺腫脹で来院した延べ175患児に超音波検査と血液検査を実施した.性別は男児90人と女児85人で,年齢分布は1.3歳から16.8歳(平均:5.7±2.4歳)であった.枯れ木様所見は化膿性耳下腺炎を除いた全耳下腺疾患に認められたが,それぞれの群の全例にみられた訳ではなかった.多発性小円形低エコー域,低エコー域内高エコー斑,不均質内部エコー所見は反復性耳下腺炎以外にはみられなかった.音響陰影を伴った高エコー線と境界不明瞭な無エコー性占拠病変はそれぞれ化膿性耳下腺炎と耳下腺膿瘍患児だけにみられた.耳下腺内リンパ節腫脹は全例にみられた.これらのことは耳下腺超音波検査が反復性耳下腺炎,化膿性耳下腺炎,耳下腺膿瘍の診断に有用であることを示している.耳下腺腫脹を再発した時やムンプス非流行期の耳下腺腫脹患児には積極的に同検査を実施すべきである.
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【原著】
■題名
生後100日までの乳児におけるRSウイルス感染症の多施設共同調査
■著者
乳児RSウイルス感染症研究グループ,にしむら小児科 西村 龍夫
■キーワード
RSウイルス, 乳児, RSウイルス抗原迅速検査, 呼吸障害, 酸素
■要旨
目的:乳児期早期におけるRSウイルス感染症の全体像を明らかにする.
方法:2002年5月から2005年4月までの3年間,小児の一般外来診療を行っている16施設において,出生体重が2,500 g以上の基礎疾患のない生後100日までの乳児が感冒症状で受診した場合を対象とし,全例のRSウイルス抗原迅速検査を施行した.迅速検査陽性例については10日間の経過観察を行い,その転帰を明らかにした上で,以下の調査を行った.
1.全対象児の中でRSウイルス感染症の割合
2.RSウイルス感染症の臨床症状
3.RSウイルス感染症のうち,呼吸障害を起こす割合
4.呼吸障害を予測できる症状の検討
結果:対象症例892例中203例(22.8%)でRSウイルス抗原が陽性となり,RSウイルス感染症と診断した.RSウイルス抗原陽性例と陰性例の間で,鼻汁,咳嗽,喘鳴の出現率には有意差を認めたが,発熱には有意差を認めなかった.追跡調査中に酸素投与を必要としたのは21例(10.3%),呼吸管理が必要となったのは1例(0.5%)であった.酸素投与例と非投与例の間で発熱,鼻汁,咳嗽,喘鳴,呼吸数,心拍数,SpO2には有意差を認めなかったが,陥没呼吸と日齢には有意差を認めた.
結論:乳児期早期に感冒で受診する児の中には多くのRSウイルス感染症が存在し,呼吸障害の重要な危険因子となっている.
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【原著】
■題名
喫煙検診による小児受動喫煙の実態と両親への禁煙動機付け
■著者
いのクリニック1),熊谷市医師会2),群馬パース大学3)
井埜 利博1)2)3) 渋谷 友幸2) 斉藤 洪太2) 西田 貞之2) 岡田 了三3)
■キーワード
喫煙検診, コチニン, 受動喫煙, コレステロール, 生活習慣病
■要旨
喫煙検診は児童における受動喫煙の客観的評価のみならず児童・両親への禁煙指導を含めた包括的事業である.今回は2005年度の検診結果について若干の知見が得られたので報告する.対象は小学校4年生261名で,尿中コチニンの測定は高感度ELISA法を用いた.2004年度に高値であった27名についても再検した.その結果,尿中コチニン値≧10 ng/mlの児童54名(20.7%)を受動喫煙ありと判定し,保護者へ通達した.両親の喫煙の有無で分類すると,尿中コチニン値は両親共喫煙あり:13.9±15.5 ng/ml,父親のみ喫煙:6.4±8.9 ng/ml,母親のみ喫煙:26.1±42.0 ng/ml,喫煙なし:1.9±3.0 ng/mlで母親のみ喫煙の群が最も高かった(分散分析でP<0.001).喫煙場所で分類し,喫煙なし群の平均値1.9 ng/mlを1とした場合,それと比較すると居間・リビング:7〜17倍,台所:7〜9倍,寝室・自分の部屋:5〜10倍,換気扇の下:2〜5倍,外1〜4.5倍であった.尿中コチニンを目的変数とし生活習慣病測定項目について多変量解析を行った結果,総コレステロール,HDLおよび動脈硬化指数の影響度が高かった.前年度高値であった27名の再検の結果,尿中コチニン値は24名で低下し,平均値32.6±16.3 ng/mlから17.0±20.9 ng/mlへ低下した(P=0.0018).両親へのアンケート調査で11%は禁煙した,43%は本数が減った,70%は喫煙の仕方が変わったなどの喫煙様式の変化を認めた.
今回の結果から喫煙検診は児の受動喫煙の状態を把握できるのみならず,両親への禁煙教育の一助となることが検証された.また児の受動喫煙は生活習慣病スコアに少なからず影響を与えることが確認された.
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【原著】
■題名
低身長を主訴とし骨所見が軽微であったRMRP遺伝子異常症の1例
■著者
神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科 土屋 貴義 朝倉 由美 室谷 浩二 安達 昌功
■キーワード
RMRP遺伝子, 軟骨毛髪低形成症, Metaphyseal dysplasia without hypotrichosis, Anauxetic dysplasia, 低身長
■要旨
骨外所見を認めず,低身長以外の症状に乏しいRMRP遺伝子異常症の1例を経験した.症例は9歳女児.精査時(8歳8カ月)身長−2.9SDで四肢の短縮,毛髪異常も無く内分泌・免疫学的検査も正常であった.骨X線所見では各所の骨幹端異形成を認めた.RMRP遺伝子解析の結果,両親を保因者とする複合ヘテロ接合変異を同定した.最近,軟骨毛髪低形成症,Metaphyseal dysplasia without hypotrichosis,Anauxetic dysplasiaの3つの骨系統疾患において,RMRP遺伝子異常が原因であることが報告された.この中で本症例はMetaphyseal dysplasia without hypotrichosisに近いと考えられるが,表現型が軽度の場合,内分泌学的に異常のない体質性低身長の中にRMRP遺伝子異常症が存在する可能性が示唆された.
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【原著】
■題名
ロタウイルス胃腸炎後に小脳症状を呈した急性脳炎の1例
■著者
高松赤十字病院小児科 井上 奈巳 関口 隆憲 松下 正民 須賀 健一 高橋 朋子 秋田 裕司 幸山 洋子 大原 克明
■キーワード
ロタウイルス, 小脳炎, 脳炎, サイトカイン, SPECT
■要旨
我々は,ロタウイルス胃腸炎に引き続き,小脳症状を呈した急性脳炎の1例を経験した.症例は4歳,男児.ロタウイルス胃腸炎として前医で入院加療中,第3病日に意識障害が出現し,第6病日に当科に紹介,入院となった.入院時ADH不適切分泌症候群を認めたが,頭部CT・脳波は異常なかった.髄液細胞数は296/3 μlと増加し,便のロタウイルス抗原迅速検査が陽性であったが,髄液のRT-PCRは陰性で,血清サイトカインの上昇はなく,髄液IL-6が軽度上昇していた.水分制限と抗生剤投与により,検査値は速やかに改善し,意識障害も第10病日頃より徐々に回復したが,四肢筋緊張低下・無言・体幹のふらつき・測定異常・感情失禁等の小脳症状が顕在化した.発症後1カ月半の頭部MRIでは著変なかったが,SPECTで小脳の血流の低下を認めた.リハビリテーションにより,症状は緩徐に改善傾向にあるが後遺症を残し,頭部MRI上,小脳の著明な萎縮を認めている.ロタウイルス胃腸炎の中枢神経合併症として,脳炎・脳症などの重症例の報告が増加しているが,小脳症状を呈するものは比較的まれであり,その予後推測にはSPECTが有用であると考えられた.
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【原著】
■題名
総肺静脈還流異常の胎児診断におけるポイント
■著者
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科 河津 由紀子 稲村 昇 北 知子 萱谷 太
■キーワード
総肺静脈還流異常, 家族歴, 胎児心エコー
■要旨
他に心内奇形を伴わない総肺静脈還流異常の胎児診断を行った.兄が総肺静脈還流異常という家族歴があったため在胎31週に胎児心エコー検査を施行した.初回の胎児心エコー検査で共通肺静脈を確認し,総肺静脈還流異常(Darling分類1)Ib)と診断した.この在胎31週の胎児心エコー検査では右心系の拡大を認めなかった.しかし,在胎35週の再検査では,明らかな右心系拡大を認めた.出生後も同診断で,病状が急変することなく生後15日に修復術を施行しえた.総肺静脈還流異常の胎児診断においては,右心系の拡大ではなく,共通肺静脈の検出が重要であること,及び家族歴との関連性も示唆された.
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【原著】
■題名
小児科医としてかかわり,寛解を維持できているパニック障害の14歳女児例
■著者
国立病院機構滋賀病院小児科 田中 政幸
■キーワード
パニック障害, ひきこもり, SSRIs, ベンゾジアゼピン
■要旨
近年,本邦の小児医療では精神症状を呈する患児が増加し,小児科医に対して行動発達小児科学,精神医学の重要性が論じられている.このような患児の診断を確定し治療を早期に開始することが小児科医に必要になっていると思われる.今回,広場恐怖を伴うパニック障害のため,ひきこもりがあった患児が,小児科医による治療により日常生活がほぼ問題なく過ごせるまでに回復した症例を経験したので報告する.症例は14歳,女児.来院半年前からひきこもりがあり,近医で半夏厚朴湯を開始.改善なく当院受診.広場恐怖を伴うパニック障害と診断.マレイン酸フルボキサミン,ロフラゼプ酸エチルによる薬物治療,および呼吸訓練法,面接による認知の再構築を中心とした認知行動療法をおこなった.治療開始から1年が経過するが,日常生活にほぼ支障がなくなるまで改善し,寛解を維持できている.
本疾患患児は身体症状を主訴に小児科を最初に受診することが多いと考えられ,本疾患に対する認識が小児科医にとって重要であると思われる.
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【原著】
■題名
経過中に感染を合併したと考えられた肝限局性結節性過形成の1女児例
■著者
自衛隊中央病院小児科 石井 茂樹 黒木 康富 古池 雄治 磯崎 淳 山岡 功児 藤塚 聡
■キーワード
肝限局性結節性過形成, 腫瘍内感染, 車軸状血管, 中心瘢痕, superparamagnetic iron oxide
■要旨
我々は,肝限局性結節性過形成(FNH)に感染を合併した症例を経験したので報告する.症例は9歳女児.偶然発見されたFNHにて当科で経過観察していた.気管支喘息大発作にて入院し,アミノフィリンとステロイド剤投与により加療し軽快したが,入院第3病日に突然の発熱および右上腹部痛が出現した.血液一般検査にて炎症反応の上昇と肝機能異常を,画像検査にてFNHの増大と出血,壊死を認めたため,腫瘍内感染と診断し抗生物質の投与を行った.その結果,全身状態は改善したため,抗生物質はCRP陰転化から2週間使用し,画像検査にて所見が改善していることを確認した後に治療を終了し退院した.
FNHに感染を合併することは極めて稀で,これまで小児での報告例はない.しかし,免疫機構の破綻など何らかの機序により,本症例のように感染を合併する可能性がある.FNHの経過観察中に発熱と上腹部痛を認めた場合,腫瘍内感染の可能性があり注意が必要である.
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【短報】
■題名
気管支喘息児におけるスギ花粉飛散期の肺機能変化
■著者
共立湖西総合病院小児科 西田 光宏 田口 智英 小山 尚俊 山口 徹也
■キーワード
気管支喘息, スギ花粉症, 肺機能
■要旨
気管支喘息児60名を対象にスギ花粉飛散前期と飛散期の1秒率(FEV1%)を基にΔFEV1%={(飛散期FEV1%−飛散前期FEV1%)/飛散前期FEV1%}×100を検討した.全例のΔFEV1%は−2.2±5.6で,花粉症治療群(n=31)は6名(19%)で10%以上低下し,無治療群(n=29)より低値であった(−3.8±6.4 vs−0.5±4.2,P<0.05).IgE-RAST別ではクラス0(n=10)に比較してクラス3〜6で低値傾向を認め,クラス5(n=17)は有意に低値であった(1.1±4.4 vs−4.8±7.4,p<0.05).スギ花粉症を合併する喘息児の一部では花粉飛散期に1秒率は低下する.
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【小児医療】
■題名
三自治体合同による小児救急医療体制構築の試み
■著者
海老名総合病院小児科1),同 外科2),同 内科3),廣井内科(三市小児救急医療推進委員会)4),小島小児科(三市小児救急医療推進委員会)5),まなべ小児科クリニック(三市小児救急医療推進委員会)6),北里大学医学部小児科7)
緒方 昌平1) 箕浦 克則1) 安藤 寿1) 越野 浩江1) 内藤 剛彦1) 内山 喜一郎2) 田中 昭太郎3) 廣井 基祥4) 小島 邦彦5) 真部 秀治6) 福島 崇義7) 石井 正浩7)
■キーワード
小児救急医療, 地域センター構想
■要旨
海老名市は総人口数12万人の小都市である.海老名総合病院小児科は30床の入院病床を持ち,24時間当直体制で小児一次,二次救急医療の役割を担ってきた.しかし,周辺市町を含め夜間・休日救急診療体制が未整備であったため,小児患者が当院に集中し,二次救急病院としての機能が果たせない状態に陥った.そこで平成15年度より周辺市町と連携し,市町村単位にとらわれることのない三市,二医師会の協力体制をもとに小児救急システムを整えた.その結果,当院における時間外受診の小児患者数は体制前と比較して半減し,二次救急病院としての機能が果たせるようになった.また,各市民への広報が徐々に広まる事で,小児一次救急センターへの患者の誘導が確立しつつあり,小児一次救急医療センターへの受診者は設置時と比較し約1.7倍の増加傾向を示した.総人口数が少なく,また小児科医が専属する病院が少数の小都市では,近隣都市と連携した形で,市町村の枠組みを超えた救急体制を確立する事が,一つの対応策として有用であると考えられる.
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