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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:06.03.28)
第110巻 第3号/平成18年3月1日
Vol.110, No.3, March 2006
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小林 正夫 巻頭 |
総 説 |
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斎藤 義朗 389 |
原 著 |
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黒澤 るみ子,他 398 |
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朝倉 由美,他 406 |
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窪 智宏,他 412 |
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山中 岳,他 417 |
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浦野 博央,他 425 |
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濱田 匡章,他 430 |
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長門 雅子,他 434 |
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酒井 秀政,他 437 |
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水野 泰孝,他 442 |
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渡部 晋一,他 447 |
短 報 |
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宇杉 朋子,他 450 |
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金堀 瑞穂,他 453 |
小児医療 |
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宮崎 雅仁,他 456 |
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地方会抄録(福島,岩手,千葉,滋賀,甲信,山口,愛媛,東京,福岡)
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460 |
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492 |
認定医にゅーす No.40 「第13回認定医試験実施要領」(109巻12号掲載)の追記事項
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496 |
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497 |
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498 |
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499 |
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501 |
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巻末 |
【原著】
■題名
小児期発症全身性エリテマトーデス38例の臨床的特徴と診断における問題点
■著者
横浜市立大学医学部附属病院小児科 黒澤 るみ子 梅林 宏明 今川 智之 片倉 茂樹 森 雅亮 満田 年宏 相原 雄幸 横田 俊平
■キーワード
全身性エリテマトーデス, ループス腎炎, シェーグレン症候群, 抗リン脂質抗体症候群, 臨床的特徴と診断
■要旨
【目的】発症時より観察しえた小児SLEの診断と発症時の特徴について検討した.【方法】1980年から2003年に当科を受診した小児期発症のSLE 38例を,発症時に行うスクリーニング検査をもとに,臨床症状,検査所見,overlapしたリウマチ性疾患について検討した.【結果】抗核抗体は全例陽性で,抗ss-DNA抗体,抗ds-DNA抗体は高率に上昇していた.低補体血症は75.0%に認められた.尿所見異常が76.3%の症例にあり,腎組織学的に90%以上の症例に腎炎を合併していた.WHO分類III, IV型の進行例は60.5%みられた.中枢神経系は無症状の症例にも脳波で徐波が出現することや,脳血流シンチグラフィーで血流低下を認めることが多かった.また,シェーグレン症候群が42.1%に併発していたが,乾燥症状を伴わないものが多数をしめていた.抗リン脂質抗体症候群は診断基準をみたしたのは1例であったが,抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが陽性であった例が10例あり,そのうち6例は凝固異常を認めていた.【考察】SLEは全身の慢性炎症性疾患であり,多臓器に病変が及ぶ.検査で異常所見が認められても症状を伴わない例もあり,早期に診断を確定し,全身の臓器障害を把握することが肝要と思われた.
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【原著】
■題名
先天性甲状腺機能低下症マススクリーニング陽性児の情緒と行動の異常に関する検討
■著者
神奈川県立こども医療センター・内分泌代謝科1),東京大学精神神経科2) 朝倉 由美1) 安達 昌功1) 加藤 進昌2) 立花 克彦1)
■キーワード
先天性甲状腺機能低下症, 新生児マススクリーニング, Child Behavior Checklist/4-18
■要旨
胎児期から新生児期にかけての甲状腺機能低下症が,情緒や行動の異常と関連するかを検討する目的で,神奈川県での新生児先天性甲状腺機能低下症マススクリーニング陽性児85例の情緒と行動の問題をChild Behavior Checklist/4-18(CBCL/4-18)を用いて評価した.
今回対象となったマススクリーニング陽性児のCBCL各尺度得点の平均は一般群に比べて高いということはなかった.内向尺度,外向尺度,総得点の何れをとっても,臨床域(含む境界域)となった例の頻度も一般群より高いということはなかった.甲状腺機能低下症の程度の指標となると考えられる初診時TSH・FT4値とCBCL総T得点の間にも有意な相関は認められなかった.恒久的甲状腺機能低下症と一過性機能低下症の間にT得点の差は認められなかった.男児はどの尺度項目でも女児よりT得点が高値であったが有意差は認められなかった.
今回の結果からは,胎児期から新生児期早期にかけての甲状腺機能低下症がこれらの精神発達に影響することは確認されなかった.
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【原著】
■題名
小児A型インフルエンザ感染症の診断に関する検討
■著者
自衛隊仙台病院小児科1),独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター2) 窪 智宏1) 西村 秀一2)
■キーワード
インフルエンザ, 診断, 迅速診断キット, 家族歴, 腹部症状
■要旨
一般小児科外来におけるA型インフルエンザ感染症の診断に影響を及ぼす因子に関する検討を行った.対象は2003年12月から2004年3月までのインフルエンザ流行期に発熱から48時間以内に当科を受診し,インフルエンザ感染を疑われた111例で,平均年齢6.2歳(0〜13歳),男:女=65:46であった.
問診・診察の後,全例鼻腔拭い液を採取し,ウイルス分離およびRT-PCR法によるウイルス検出結果を基準とし,インフルエンザ迅速診断キットの成績を検討した.その結果,特異度は94.9%であったが,感度は79.2%であり,特に発熱から12時間以内に検査を行った症例群の感度は77.5%であった.また臨床像との検討結果から,家族歴(オッズ比11.7;95%信頼区間1.36〜100.74;P=0.025)及び腹部症状がないこと(オッズ比10.4;95%信頼区間2.48〜43.91;P=0.001)がA型インフルエンザ感染を強く疑わせる因子であり,家族歴のある患児の94.4%はインフルエンザ感染症であったが,その迅速診断キットの正診率は64.7%であった.
現在の迅速診断キットの性能を鑑みると,インフルエンザ流行期に発熱を主訴とする患児にインフルエンザの家族歴があり腹部症状がない場合,特に発症早期には迅速診断キットを用いずに臨床診断を行い,抗ウイルス薬等を投与する診療が医療費や患児への侵襲などの点から有効であると考えられた.
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【原著】
■題名
インフルエンザ脳症重症度予測
■著者
東京医科大学小児科 山中 岳 平良 尚子 河島 尚志 渡邊 嘉章 五百井 寛明 宮島 祐 武隈 孝治 星加 明徳
■キーワード
インフルエンザ脳症, IL-6, フェリチン, PELOD score, 重症度予測
■要旨
インフルエンザ脳症(influenza-associated encephalopathy;IE)病初期の臨床像,発症から異常値が検出されるまでの期間を含めた血液検査所見からIEの重症度予測が可能であるか,また,小児多臓器不全の指標であるPELOD scoreがIEの重症度判定に適応できるかを検討した.IE15例とインフルエンザ感染に伴う有熱時けいれん(influenza-associated febrile seizure;IFS)13例を対象とした.IEは死亡もしくは神経学的後遺症を伴ったA群(5例)と神経学的後遺症を伴わなかったB群(10例)に分類し,IFSをC群(13例)とした.意識障害の持続時間における3群間の比較では,A群がB,C群に比べ明らかに持続時間が長かった.しかしながら,けいれんの持続時間では有意差は確認されなかった.入院初期の検査所見で,血清IL-6,CK,LDH,CRPはA+B群はC群に比べ有意に高値であった.3群間の比較では,ferritinのみがA群で明らかに高値であった.その他の血液検査(白血球,血小板,血糖,AST,Cr,TG)は3群間の比較で有意差は認められなかった.A+B群において,発熱後平均34.5時間,けいれん後平均19.4時間後に一般血液検査で異常値を示し,TG,ferritin,IL-6を含めれば入院時(発症から25.6時間)に1例を除き異常値が検出可能であった.PELOD scoreと共に最重症時から入院時を差し引いたΔPELOD scoreを評価したところ,A群が明らかに高値を示した.IE急性期におけるferittinの測定が重症度予測に,血清IL-6,CK,LDH,CRPの測定がIFSとの鑑別に有用であると思われた.また,PELOD score,ΔPELOD scoreはIEの重症度判定に適応できるものと考えられた.
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【原著】
■題名
ターナー症候群に若年性特発性関節炎を合併した1女児例
■著者
群馬大学大学院医学系研究科小児生体防御学1),群馬県立小児医療センター2),アレルギー感染免疫科3) 浦野 博央1)2) 加藤 政彦2)3) 鬼形 和道1) 滝沢 琢己1) 荒川 浩一1) 望月 博之1) 徳山 研一1) 林 泰秀2) 森川 昭廣1)
■キーワード
ターナー症候群, 若年性特発性関節炎, 合併例, 膝関節炎, 中手骨短縮
■要旨
ターナー症候群は自己免疫疾患との関連のある染色体異常症である.今までに,甲状腺炎,I型糖尿病,炎症性腸疾患などとの合併が報告されてきたが,ターナー症候群と若年性特発性関節炎(以後JIA)との合併例は,1986年に初めて欧米から報告された.その後この2疾患の合併は,偶然の合併と比較して約6倍の頻度としている報告を含め,今までに延べ23例の報告がある.本邦では,2000年に第1例目の報告があり,われわれは本邦第2例目と考えられる1女児例を経験した.本症例は11歳時にターナー症候群(核型mos 46,X,idic(X)(p11.2)[25]/45,X[5])と診断され,12歳時に多関節型JIAを発症した.2つの疾患の合併する機序について詳細は不明だが,ターナー症候群におけるX染色体異常が免疫異常を来たすことが推察されている.過去の合併例報告から,ターナー症候群からみた膝関節炎の存在およびJIAからみた中手骨の短縮が特徴的との報告があり,合併例の発見にはこれらの所見を念頭におくことが有用であると考えられた.
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【原著】
■題名
コルヒチンが奏効した精巣上体炎併発不全型ベーチェット病の5歳男児例
■著者
済生会中和病院小児科1),小西橋医院2),東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター3) 濱田 匡章1) 澤西 正2) 藤川 敏3) 森近 省吾1)
■キーワード
小児ベーチェット病, コルヒチン, 精巣上体炎
■要旨
小児期発症のベーチェット病には確立された治療法がない.われわれは5歳男児の精巣上体炎併発不全型ベーチェット病を経験した.発熱と口腔内潰瘍,外陰部潰瘍,結節性紅斑および陰嚢の腫脹がみられ入院した.本症例では,少量(0.01 mg/kg/day)のコルヒチンを短期間投与することで速やかに症状は軽快し寛解した.全身症状が著明ではない症例において小児期発症ベーチェット病ではコルヒチンは第一選択薬になりうる薬剤であると考える.
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【原著】
■題名
手足口病後に発症したポリオ様麻痺
■著者
京都大学医学部附属病院小児科 長門 雅子 服部 春生 加藤 竹雄 山中 康成 中畑 龍俊
■キーワード
ポリオ様麻痺, 手足口病, 残存運動麻痺, 潜在性感覚神経障害
■要旨
2歳女児が手足口病の罹患6日後,右下腿痛で始まり徐々に上行性弛緩性麻痺により歩行・座位困難を来した.明かな脳神経症状・感覚障害及び自律神経障害は認めなかった.髄液では細胞数増多とその後の蛋白上昇を認め,胸腰髄MRIでは膨大部の腫大とT2強調画像で脊髄実質内部の広範な高信号,及び前根を中心に後根を含め髄膜全周の造影効果を認め,広範な血液脳関門の破綻が示唆された.神経伝導検査では脱髄所見なく,運動神経活動電位低下とF波の消失を認めた.2クールの高用量免疫グロブリン投与とメチルプレドニゾロンパルス療法により,発症75日までに徐々に下肢の麻痺改善を示し高這いも可能となった.MRIや神経伝導速度検査は発症7カ月時にはほぼ正常範囲内であったが,発症2年後もなお,下肢の弛緩性麻痺は残存し独歩不可能であった.当地周辺の発症時の流行より原因としてエンテロウイルス71が疑われたが,同定できなかった.臨床症状や画像・神経機能検査よりポリオ様麻痺が示唆された.また,MRI上の後根の造影効果や,神経機能検査でも感覚神経活動電位の低下を伴い,潜在性の感覚神経障害が示唆された.また,免疫抑制療法に対し症状の部分的改善を認め,免疫学的機序による病態が考えられた.
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【原著】
■題名
テオフィリン製剤の関与が疑われたHemiconvulsion-Hemiplegia-Epilepsy syndromeの1例
■著者
彦根市立病院小児科1),京都大学医学部附属病院小児科2),はっとりこどもクリニック3),滋賀医科大学附属病院小児科4) 酒井 秀政1) 田中 篤志1) 宗村 純平1)4) 安藤 徹1) 石上 毅1) 熊田 知浩2) 服部 春生3)
■キーワード
Hemiconvulsion-Hemiplegia-Epilepsy syndrome(HHE syndrome), テオフィリン関連痙攣
■要旨
テオフィリン製剤の関与が疑われたHemiconvulsion-Hemiplegia-Epilepsy syndrome(HHE syndrome)の1例を報告する.症例は1歳9カ月の女児.双胎第2子,在胎37週0日,生下時体重2,304 g,仮死はなく,発病前の発達は正常.家族歴に痙攣性疾患なし.平成13年12月始めより喘息様気管支炎として近医でフマル酸ケトチフェン,テオフィリン製剤が投与されていた.12月8日より発熱,12月10日夕より右側優位の間代性痙攣が生じ,当院に救急搬送.1時間近い重積状態を経てジアゼパム,フェニトイン投与にて発作は抑制された.その後から右片麻痺が認められた.脳CTやMRIで局所的な異常所見はなく,入院時諸検査や入院後経過から髄膜炎・脳炎は否定,脳波で左半球に徐波が目立った.12月15日無熱性の右側優位の痙攣が出現したため,カルバマゼピンの投与を開始した.その後痙攣発作はないが,脳波上左側に棘波が頻発している.平成16年7月の脳CTにて明らかな左半球の萎縮が見られ,HHE syndromeと診断確定した.右片麻痺が残存しており,探索・言語面を中心とする精神発達遅滞も見られている.
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【原著】
■題名
アトバコン・プログアニル合剤によって治療を行った熱帯熱マラリアの3例
■著者
国立国際医療センター国際疾病センター渡航者健康管理室1),同 小児科2),東京医科大学八王子医療センター小児科3) 水野 泰孝1) 佐藤 典子2) 早川 依里子2) 松下 竹次2) 三枝 舞3) 久保嶋 慎二3)
■キーワード
熱帯熱マラリア, 小児マラリア, 国際感染症, アトバコン・プログアニル合剤(マラロン®), visiting friends and relatives(VFRs)
■要旨
アフリカから帰国後に発症した熱帯熱マラリアの小児例を3例経験し,治療薬としてわが国ではこれまでに小児に対する報告例のないアトバコン・プログアニル合剤(マラロン®,GlaxoWellcome,UK)を選択し,良好な結果を得ることができた.わが国は欧米諸国に比べて移民の割合が少なく,マラリア流行地に帰省し家族や親戚を訪問する機会も少ないため,小児のマラリア症例は年間1〜2例程度の報告にとどまっており,一般の小児科診療ではきわめて稀な感染症である.しかし,国際化に伴う海外渡航者の増加や国際結婚の増加により,国際感染症としてのマラリアの重要性について再認識する必要がある.また,多剤耐性マラリアの問題から,小児マラリア症例に対してもマラロンの効果と副作用について,詳細に検討する必要があると考えられた.
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【原著】
■題名
風疹ワクチン接種歴のある母親から出生した先天性風疹症候群の1女児例
■著者
倉敷中央病院小児科 渡部 晋一 豊田 直樹 北 誠 松本 亜沙子 横山 宏司 石崎 裕美子 澤田 真理子 西 有子 井田 鈴子 美馬 隆宏 由良 和夫 田原 昌博 西田 吉伸 藤原 充弘 脇 研自 桑門 克治 新垣 義夫 馬場 清
■キーワード
先天性風疹症候群, 風疹ワクチン, 不顕性感染
■要旨
風疹ワクチン接種歴のある母親から生まれた,先天性風疹症候群(Congenital rubella syndrome,以下CRS)の1女児例を経験した.児は在胎37週,1,888 gで出生した.全身の出血斑,両側難聴,白内障を認め,心エコー検査にて動脈管開存症を合併していた.肺鬱血と心不全が進行し動脈管結紮術を施行した.血清風疹ウイルス抗体価はEIA-IgM 9.84 IU/mlにてCRSと診断した.母親は妊娠中,風疹の症状は見られず,不顕性感染であった.母親は14歳時に風疹ワクチンの接種歴があるが,抗体獲得が得られなかったか,その後の抗体価低下により妊娠中の不顕性感染に至ったものと考えられる.CRS発症予防には,思春期以後の風疹ワクチン追加接種が必要と思われた.
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【短報】
■題名
R270X変異を認め早期にRett症候群と診断された1例
■著者
東京女子医科大学小児科1),愛媛大学衛生学2) 宇杉 朋子1) 中野 和俊1) 斎藤 加代子1) 大塚 映子1) 武藤 順子1) 勝盛 宏1) 林 北見1) 大澤 真木子1) 近藤 郁子2)
■キーワード
Rett症候群, 遺伝子診断, R270X変異, 早期診断
■要旨
Rett症候群は,遺伝子変異が同定可能となったことにより遺伝子変異と臨床経過の相関を検討することが可能となった.症例は1歳7カ月女児.周生期に異常はなかったが,6カ月から精神運動発達が遅滞.11カ月で獲得したずり這いが1歳2カ月で不能となり,1歳2カ月より右手で口をたたき,1歳5カ月より両手をあわせて口へ入れる行動が出現.遺伝子解析ではメチルCpG結合タンパク2[methyl-CpG-binding protein 2(MECP2)]遺伝子にR270Xのナンセンス変異を示した.R270X変異は歩行を獲得できない症例が多い点で本症例と合致していた.遺伝子診断は早期の確定診断および療育・合併症の予測の一助となると思われた.
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【短報】
■題名
抗てんかん薬多剤内服中の小児に発症したdrug-induced hypersensitivity syndromeの1例
■著者
東京都立清瀬小児病院総合小児科1),神経科2),呼吸器科3) 金堀 瑞穂1) 後藤 知英2) 伊藤 真樹3) 三山 佐保子1)2)
■キーワード
難治性てんかん, drug-induced hypersensitivity syndrome, フェノバルビタールナトリウム, drug-induced lymphocyte stimulation test
■要旨
結節性硬化症,難治性てんかんでバルプロ酸ナトリウムとクロラゼブ酸二カリウムを内服中の4歳女児.フェノバルビタールナトリウム(PB)追加開始後25日目に発熱,発疹,末梢血好酸球増多,肝機能障害が出現した.PBによるdrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)と考えPBを中止したが,症状が増悪したためすべての抗てんかん薬を中止しステロイド剤を投与したところ症状は改善した.Drug-induced lymphocyte stimulation testはPBのみ陽性を示し,PBによるDIHSと診断した.DIHSにおいては原因薬剤中止後も症状の増悪がみられることがあるため,複数の抗てんかん薬を併用中の患者のDIHSでは原因薬剤の推定が困難となりうる.重篤な臓器障害を合併するDIHSではすべての抗てんかん薬を中止することを考慮すべきであり,また薬剤中止後のけいれんの管理が重要である.
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【小児医療】
■題名
地域の内科小児科標榜医も参加する小児夜間救急事業の試み
■著者
大川地区小児夜間救急運営委員会 宮崎 雅仁 今井 正 大林 浩二 北村 明子 坂口 善市 田中 輝英
■キーワード
小児救急, 小児科専門医, 内科小児科標榜医, 少子化進行地域
■要旨
香川県大川地区(さぬき市および東かがわ市)では平成15年4月より急病患児の初期および2次救急医療の窓口として,地域の基幹病院であるさぬき市民病院内に大川地区小児夜間急病診察室を開設した.診療は毎日・午後7時30分から11時30分まで行い,担当医は香川大学小児科の協力の下,地域の公立病院・開業小児科専門医(小児科医)および内科小児科標榜医が輪番で担当している.開設2年間(平成15年4月〜平成17年3月)の利用総患児数は6,025名(1日平均8.2名)であり,そのうち52名(0.9%)が救急車搬送による受診であり,103名(1.7%)が入院を必要とした.1日平均患児数の月別最高は平成17年3月の12.6名,最低は平成16年9月の5.4名であった.受診時間は午後9時までに64%,午後10時までの準夜帯に84%が受診し,年齢別検討では,3歳未満児が49%,6歳未満の就学前小児が78%を占めた.一方,担当医グループ別の1日あたりの患児数は,香川大学小児科医8.48名,公立病院小児科医8.94名,開業小児科医8.10名,内科小児科標榜医7.69名であり,各グループ間で統計学的有意差は認めなかった.地域の内科小児科標榜医も参加する小児夜間救急事業は,少子化進行地域の小児救急システムの構築に有用な手段と考えられた.
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