 |
日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:06.01.23)
第110巻 第1号/平成18年1月1日
Vol.110, No.1, January 2006
バックナンバーはこちら
|
 |
|
|
|
衞藤 義勝 巻頭 |
総 説 |
|
杉原 茂孝 1 |
第108回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
|
江上 由里子 9 |
原 著 |
|
高山 直秀,他 14 |
|
成相 昭吉,他 17 |
|
島田 康子,他 22 |
|
濱本 邦洋,他 27 |
|
吉成 聡,他 33 |
|
依田 弥奈子,他 38 |
|
森西 洋一,他 42 |
|
工藤 雅庸,他 46 |
|
佐々木 吉明,他 52 |
短 報 |
|
野末 裕紀,他 56 |
地方会抄録(高知,富山,栃木,青森,東京,熊本,鹿児島)
|
|
59 |
|
78 |
|
82 |
小児医療改革・救急プロジェクトホームページについて
|
|
85 |
小児胃食道逆流症診断治療指針作成ワーキンググループ報告 |
|
86 |
雑報 |
|
95 |
【原著】
■題名
結核予防法改正前の全国BCGワクチン累積接種率
■著者
東京都立駒込病院小児科1),崎山小児科2),国立感染症研究所感染症情報センター3),日本こども家庭総合研究所4) 高山 直秀1) 崎山 弘2) 岡部 信彦3) 平山 宗宏4)
■キーワード
結核予防法, 結核予防法改正, BCG, 累積接種率
■要旨
2005年度よりBCGワクチンの接種対象年齢が「生後6カ月に達するまで」に引き下げられた.この改正はBCGワクチン接種率に少なからぬ影響を与えると予測されているが,法改正に伴う接種率の変化を知るためには,改正前のBCGワクチン接種率を把握しておく必要がある.これまでBCGワクチンの全国累積接種率は未調査であったので,全国から5,000人の3歳児を無作為抽出してBCGワクチン全国累積接種率を調査した.調査票の回収率は78.4%であったが,記載が不完全なものを除外し3,755名分を集計した.生後3カ月での累積接種率は14.4±1.1%,生後5カ月では52.2±1.6%,11カ月では87.1±1.1%,23カ月では96.0±0.6%,35カ月では97.4±0.5%であり,生後3〜5カ月の3カ月間にBCG接種を受けた乳児は全体の51.8%であった.接種期間「生後4歳まで」の制度下でのBCG累積接種率は良好であったことが判明した.しかし,「生後6カ月に達するまで」に短縮された接種期間で,厳密にこのまま実施されれば,多数の接種漏れ者の発生が危惧される.乳児健診の際にBCGワクチン接種を行うことにより接種率の向上が期待できるものの,乳児期早期に高い接種率を達成・維持するためには新たな取り組みとさらなる努力が必要であろう.
|
|
【原著】
■題名
小児急性扁桃咽頭炎における原因菌の検討
■著者
横浜南共済病院小児科 成相 昭吉 小林 慈典
■キーワード
小児, 急性扁桃咽頭炎, 咽頭培養, 原因菌, A群β溶連菌
■要旨
小児急性扁桃咽頭炎の原因菌について,咽頭培養分離成績をもとに検討した.
2001年6月から2004年8月までの間に,小児科外来において急性扁桃咽頭炎と診断し咽頭培養を行った836例(平均年齢5.6歳)のうち,一般細菌分離例は346例(41.4%)(同6.2歳)であった.分離菌ではA群β溶連菌(GAS)が最も多く(50.6%),メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)(29.2%),β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン感受性インフルエンザ菌(BLNAS)(9.0%)が続き,これらが88.8%を占めた.
GAS分離例は2歳以降多くなり,特に4歳から7歳に多く認めた.これは,伝播・浸透しやすいGASが,生理的に増大した口蓋扁桃に集団保育のなかで付着する頻度が増すことが要因と考えられた.また,月別では1カ月に平均4.5例のGAS分離例を認めたが,8月と9月は1例/月と減少した.
MSSAは全年齢で分離され,BLNASは1歳から6歳で分離例が多く,いずれも月別分離例数に季節性を認めなかった.
|
|
【原著】
■題名
呼吸器管理を要した乳児の細気管支炎に対する好中球エラスターゼ阻害薬の使用経験
■著者
防衛医科大学校小児科1),茨城大学教育学部教育保健講座2) 島田 康子1) 川村 陽一1) 小林 大介1) 窪 智宏1) 安國 真理1) 堀内 勝行1) 石渡 隆寛1) 浅野 優1) 竹下 誠一郎2) 野々山 恵章1)
■キーワード
RSウイルス感染症, 肺障害, 呼吸管理, シベレスタットナトリウム水和物, 乳児
■要旨
呼吸器管理を要したRSウイルスによる急性細気管支炎に対し,好中球エラスターゼ阻害剤であるシベレスタットナトリウム水和物を使用した3乳児例を経験した.症例はそれぞれ日齢28,30の男児と日齢60の女児で,人工呼吸器装着後にシベレスタットナトリウム水和物を4〜6日間投与した.その結果,投与後に呼吸器条件が悪化したり,合併症を認めた症例はなく,人工呼吸器から6〜8日間で離脱できた.近年RSウイルス感染症の病態に好中球およびエラスターゼの関与が指摘されており,特に重症と診断された細気管支炎の症例に対しては,病初期から積極的に好中球エラスターゼ阻害剤を投与することが有効であると思われた.
|
|
【原著】
■題名
川崎病におけるガンマグロブリン製剤の違いによる解熱時間とCRP改善度の比較
■著者
福岡大学医学部小児科 濱本 邦洋 城谷 吾郎 米倉 順孝 橋本 淳一 田中 美紀 山口 覚 満留 昭久
■キーワード
川崎病, ガンマグロブリン大量静注療法, 解熱時間, CRP改善度
■要旨
川崎病の急性期治療において,ガンマグロブリン静注(IVIG)療法を1 g/kg/dayで投与し,投与開始から解熱までの時間および投与前後でのCRP値の変化を検討した.使用したガンマグロブリンは乾燥スルホ化ガンマグロブリン製剤(S群)とpH4処理酸性ガンマグロブリン製剤(P群)の2製剤で,両者を比較検討した.
投与開始から解熱までの時間の検討対象は54例(S群25例,P群29例),CRP値低下の検討対象は26例(S群12例,P群14例)であった.全例において副作用の発現はなく,また冠状動脈瘤の形成も認められなかった.解熱時間はIVIG開始より解熱までの時間とした.CRPの改善度はIVIG投与前のCRP値を100として投与3日後のCRP値を換算しCRP換算値とした.
解熱時間はS群が12.4±5.3時間,P群が11.0±3.6時間で両群に有意差はなかった.
CRP換算値はS群41.6±20.6とP群22.9±10.5でP群の方が有意に低かった(P=0.01).
川崎病急性期の治療において,解熱時間については乾燥スルホ化製剤とpH4処理酸性製剤間で差はなかったが,CRP改善度はpH4処理酸性製剤の方が良かった.
|
|
【原著】
■題名
ヒト・ヘルペスウイルス6型脳炎・脳症の脳血流SPECT所見
■著者
埼玉県立小児医療センター神経科1),東京慈恵会医科大学小児科2),埼玉県立小児医療センター保健発達部3) 吉成 聡1)2) 浜野 晋一郎1) 伊東 建2) 田中 学1) 山下 進太郎1) 南谷 幹之3) 衞藤 義勝2)
■キーワード
ヒトヘルペスウイルス6, 脳血流, SPECT, 急性脳炎, 急性脳症
■要旨
Human herpesvirus 6(HHV-6)脳炎・脳症は稀な疾患ではなく報告例も多いが,その病態生理は依然として不明な点が多い.今回,病態解明のためHHV-6脳炎・脳症と診断した9例中5例に99mTc-ethylcysteinate dimer-single photon emission computed tomography(99mTc-ECD-SPECT),4例に123I-iodoamphetamine-single photon emission computed tomography(123I-IMP-SPECT)を行った.123I-IMP-SPECTでは定性的評価のほか,3例は関心領域を大脳皮質(前頭部,側頭部,後頭部),小脳,視床,尾状核に設定し,領域別脳血流量を定量的に求め10例の対照群と比較検討した.
9例全例で定性的に前頭部優位の血流低下を認めた.定量的評価を行った3例では,急性期は全例に大脳皮質3領域の血流低下を認め,特に前頭部の血流低下が顕著だった.後遺症を認めた2例は,急性期から他領域の血流低下も認めた.回復期では,後遺症を残した2例は急性期と同様にびまん性の血流低下を認めた.後遺症を残さなかった1例は,前頭部以外で血流値は正常化した.
前頭葉優位性の障害は,全例に共通した所見であり,HHV-6脳炎・脳症の特徴を示唆すると思われた.またSPECTの視覚的評価で限局性と思われる症例でも,定量的評価によりびまん性の血流低下が明らかとなることがあり,今後脳血流SPECTを行う際は,定量化を行うことが重要である.
|
|
【原著】
■題名
McLeod症候群を伴ったX連鎖慢性肉芽腫症の1例
■著者
市立函館病院小児科1),北海道大学大学院医学研究科小児科学講座2),手稲渓仁会病院小児センター3) 依田 弥奈子1) 吉田 佳代1) 大柳 尚彦1) 大崎 雅也1) 吉村 英敦1) 波多野 典一2) 有賀 正2) 崎山 幸雄3)
■キーワード
X連鎖慢性肉芽腫症, 遺伝子欠失, Kell式血液型, 有棘赤血球増多, 高クレアチンキナーゼ血症
■要旨
McLeod症候群を伴ったX連鎖慢性肉芽腫(X-CGD)症例を報告する.CGDとして経過観察されていた18歳男性に遺伝子解析を行い,Xp21.1のgp91phox(Nox2)を含む広範囲の欠失が示唆された.McLeod表現型の合併を考えて検索の結果,(1)Kell抗原の発現低下,(2)抗Kx抗体による凝集反応陰性,(3)有棘赤血球増多,(4)高クレアチンキナーゼ血症を認めることが明らかとなった.gp91phox遺伝子欠失に基づくMcLeod表現型検索から母親はMcLeod表現型の保因者,患者はMcLeod症候群の合併が証明された最初の報告と思われる.
|
|
【原著】
■題名
多様な呼吸器外症状を呈したマイコプラズマ感染症の1例
■著者
埼玉県立小児医療センター感染免疫アレルギー科1),防衛医科大学校小児科2) 森西 洋一1)2) 大石 勉1) 冠木 智之1) 城 宏輔1)
■キーワード
マイコプラズマ感染症, 結節性紅斑, 反応性関節炎
■要旨
呼吸器症状を呈さず,結節性紅斑や多発関節炎など多彩な肺外症状がみられたマイコプラズマ感染症の1例を経験したので報告する.症例は8歳女児.主訴は発熱,有痛性結節性紅斑で,発症の前後を通じて呼吸器症状は認められなかった.胸部聴診および胸部X線検査においても異常所見は認められなかったが,入院後マイコプラズマ抗体価がPA法で320倍と,有意な上昇を認めた.抗生剤投与と対症療法により,症状は消退と出現を繰り返しつつ徐々に改善した.治療中止後1週間で,多発性の関節痛が出現し,同抗体価がPA法で5,120倍,CF法で256倍と,著明に上昇した.自己免疫疾患は否定的で,マイコプラズマ感染に伴う反応性関節炎と考えられた.非ステロイド抗炎症剤のみでは効果がなく,ステロイド剤の内服が奏効した.本症例は,皮膚症状や関節症状など非特異的な症状が主体で亜急性の経過をとり,さらに,経過を通じて呼吸器症状が全く認められず,極めてまれなマイコプラズマ感染症と考えられた.本症例の診断や病態把握に継続的な血清学的検査が重要であった.
|
|
【原著】
■題名
急速進行性腎炎症候群を呈した低形成腎/融合腎の1例
■著者
弘前大学医学部小児科1),岩手県立北上病院小児科2) 工藤 雅庸1) 田中 完1) 津川 浩二1) 中畑 徹1) 鈴木 康一2) 伊藤 悦朗1)
■キーワード
融合腎, 低形成腎, 急速進行性腎炎症候群, 半月体形成性腎炎, 慢性腎不全
■要旨
幼少時より腎機能障害を認め,急速進行性腎炎症候群罹患を契機に急激な腎機能低下,末期腎不全へと進行した矮小腎(低形成腎)/融合腎の6歳男児例を報告した.1歳時より左腎欠損と軽度腎機能障害が認められ,保存的に観察されていた.平成16年5月の血液検査では尿素窒素(BUN)31 mg/dL,クレアチニン(Cre)0.9 mg/dLであった.しかし,8月,上気道炎症状を契機に浮腫・乏尿,血尿・蛋白尿(潜血3+,蛋白3 g/日)が出現し,血液検査の悪化(BUN 75 mg/dL,Cre 5.0 mg/dL)も認められた.急速進行性腎炎症候群罹患による慢性腎不全の急性増悪として入院加療により尿所見は改善したが,血液検査上腎機能の回復はみられなかった(BUN 100 mg/dL,Cre 3.6 mg/dL).平成16年末に再び血清Creの上昇(7.1 mg/dL)が認められ,末期腎不全として平成17年2月(6歳時)に腹膜透析導入に至った.画像検査では矮小腎に融合腎が合併した特異な腎奇形が確認され,腎生検による病理組織像から疎な糸球体密度を呈する低形成腎に半月体形成性腎炎が発症した所見が得られた.
本症例は,矮小腎,低形成腎に融合腎を合併した稀な腎奇形のために幼少期より腎機能障害を示したと思われた.残存ネフロン数が少ない腎奇形を背景に,急速進行性腎炎症候群罹患を契機とした急激な腎機能増悪がみられ,短期間に末期腎不全へと進行したものと推察される.
|
|
【原著】
■題名
経皮経食道胃管挿入術を行った重症心身障害者の2例
■著者
美幌療育病院小児科 佐々木 吉明 丸山 静男
■キーワード
経皮経食道胃管挿入術, 重症心身障害者, 摂食障害, 嚥下障害, 経皮内視鏡的胃瘻造設術
■要旨
経皮経食道胃管挿入術(PTEG)は,X線透視と超音波を併用し頸部から食道瘻を造設する術式であり,経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)と同様に低侵襲な手技である.今回我々は2例の重症心身障害者(重障者)に対して,PTEGを施行し良好な結果を得た.2例とも経鼻チューブ留置による経腸栄養法を行っており,胃瘻造設を考慮されていた.しかし,胸部CTならびに上部消化管検査において,胃が胸腔内に変位しておりPEGの施行が困難と判断されていた.そのためPTEGを施行した.重障者では長期臥床に伴う躯幹の変形が強く,胃が胸腔内に挙上されPEG施行が困難な症例が存在する.その場合全身麻酔下での開腹胃瘻造設が施行されるが,重障者にとっては侵襲的である.そのため,PTEGは重障者の栄養管理において,有効な手技と考えられた.
|
|
【短報】
■題名
小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害と考えられた1男児例
■著者
筑波メディカルセンター病院小児科1),筑波大学小児科2) 野末 裕紀1) 田中 竜太2) 今井 博則1) 青木 健1) 市川 邦男1)
■キーワード
小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害, PANDAS, チック, 化膿性連鎖球菌
■要旨
症例は7歳男児.化膿性連鎖球菌感染6日後に,頭をふるチックが突然出現した.チックは程度の強いものであったが,抗菌薬投与とともに約2週間の経過で完全に消失した.以降,チックの再発はみられていない.近年,チックや強迫性障害と化膿性連鎖球菌感染の関連が注目されており,症状と経過から本症例は小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(Pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infections;PANDAS)と考えられた.化膿性連鎖球菌菌体と大脳基底核との共通抗原性が示唆されており,PANDASは化膿性連鎖球菌感染に伴う自己免疫機序が働いて発症するものと考えられている.日常診療でよく見かけるチックでは,化膿性連鎖球菌との関連を念頭に置くべきと考えられた.
|
|
|
バックナンバーに戻る |
|