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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:05.12.28)
第109巻 第11号/平成17年11月1日
Vol.109, No.11, November 2005
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総 説 |
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黒澤 健司 1311 |
2. |
小児救急医療体制充実化のためのトリアージ・システムの有用性の検討
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清水 直樹,他 1319 |
第108回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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鈴木 孝 1330 |
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前田 隆秀 1343 |
原 著 |
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高田 大,他 1356 |
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日暮 憲道,他 1361 |
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梶野 真弓,他 1364 |
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上野 誠,他 1369 |
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秋吉 健介,他 1373 |
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荻原 由佳里,他 1377 |
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1382 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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1398 |
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1400 |
イーライリリー海外フェローシップ研修報告 |
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氏家 武 1404 |
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1410 |
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1413 |
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1414 |
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1415 |
【原著】
■題名
小児の敗血症性多臓器不全に対するエンドトキシン吸着療法
■著者
東京慈恵会医科大学付属病院1),埼玉県立小児医療センター2),順天堂大学付属練馬病院3) 高田 大1) 藤永 周一郎2) 大友 義之3) 赤司 俊二2) 鍵本 聖一2) 関島 俊雄2) 衞藤 義勝1)
■キーワード
敗血症性ショック, 血液浄化療法, エンドトキシン吸着療法, サイトカイン, アナンダマイド
■要旨
エンドトキシンを吸着するポリミキシンB固相化カラム(PMX)を用いて直接血液吸着療法(DHP)を行った敗血症の6症例(平均年齢6.7歳)のpediatric logistic organ dysfunction score(PELOD score)/Catecholamine Index(CAI)/エンドトキシン値/血清サイトカイン値等を施行前後で比較検討した.6例中生存群3例・非生存群3例で,平均年齢はそれぞれ11.3/2.0歳であった.また4例にエンドトキシン血症が認められたが残りの2例は陰性であった.PMX-DHP施行前と施行12時間後との比較では,PELOD scoreは6例中4例で,CAIは2例で改善を認めた.PELOD scoreで改善を認めた4症例の血中炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6)値は施行後に著明な低下を認め,PMXの有用性との関係が示唆された.尚この4例中2例ではエンドトキシン血症を認めなかった.また改善した1例で血清アナンダマイド値(ANA)を測定したところPMX-DHP施行後に低下していた.このことより小児科領域においても,敗血症性ショックに対するPMX療法はエンドトキシン血症の有無に関わらず有用であり,その有効性は血中アナンダマイドの吸着及び炎症性サイトカインの上昇惹起因子の改善が関与していると推測された.
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【原著】
■題名
骨髄中でアポトーシス細胞の存在が推測された糖原病Ib型の1例
■著者
東京慈恵会医科大学附属柏病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科2) 日暮 憲道1) 和田 靖之1) 久保 政勝1) 衞藤 義勝2)
■キーワード
糖原病Ib型, 好中球減少症, アポトーシス, 骨髄所見, TUNEL染色
■要旨
糖原病Ib型はグルコース-6-リン酸トランスロカーゼ1の異常により発症し,糖原病Ia型と異なり,好中球減少/機能異常症を高率に合併する疾患である.本疾患に伴う好中球減少/機能異常症の詳細な発症機序は現在なお明らかになっていない.今回我々は著明な好中球減少が持続した糖原病Ib型の1女児例を経験した.本症例の骨髄像ではTUNEL染色陽性の核破砕を呈する細胞が認められ,骨髄中でのアポトーシスの存在が示唆された.本疾患に伴う好中球減少症の機序を考える上で興味深い症例であったため報告する.
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【原著】
■題名
Common pulmonary vein atresiaの臨床像
■著者
旭川厚生病院小児科 梶野 真弓 梶濱 あや 野原 史勝 椎葉 豪 中右 弘一 岡本 年男 小久保 雅代 高瀬 雅史 白井 勝 坂田 宏 沖 潤一 丸山 静男
■キーワード
Common pulmonary vein atresia, 共通肺静脈閉鎖, 低酸素血症, 肺リンパ管拡張症
■要旨
1995年からの10年間に当科に入院したcommon pulmonary vein atresia(CPVA)4例についてまとめた.全例出生時から胸部X線上気胸,縦隔気腫や胸水を合併し,著明な肺うっ血像を認めたが心拡大はなかった.また,100%酸素による人工呼吸管理下,内科的治療に全く反応しない進行性の重篤な低酸素血症,高炭酸ガス血症及びアシドーシスを認めた.心エコー上,3例で左房後方にcommon pulmonary vein(CPV)を認め,CPVからの左房及び体静脈への太い還流静脈を検出できずCPVAと診断,1例は剖検で診断した.予後は,全例が死亡.2例で共通肺静脈左房吻合術が行われた.吻合術は成功したが,2例とも術後も低酸素血症が改善せず死亡.1例は診断に至らず,また1例は早産極低出生体重児,13 trisomy,肺低形成を合併し低酸素血症のため死亡.剖検は未手術例2例と手術例1例の3例で行われた.3例ともCPVから体静脈系に通じる還流静脈を認めたが,還流部位が同定できないほど細いものであった.2例で肺に組織学的にびまん性のリンパ管拡張を認め,先天性肺リンパ管拡張症を合併していた.
CPVAは,高度の肺静脈閉塞による肺うっ血の持続及び肺リンパ管拡張症による低酸素血症のため手術によっても救命困難であることが多い疾患である.
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【原著】
■題名
脳幹腫瘍寛解後に大腸腺腫症・大腸癌を発症したTurcot症候群の1例
■著者
鳥取大学医学部脳神経小児科1),鳥取県立中央病院小児科2) 上野 誠1) 岡 明1) 杉浦 千登勢1) 前垣 義弘1) 大野 耕策1) 大谷 恭一2)
■キーワード
Turcot症候群, 大腸腺腫症, 脳幹腫瘍, 母斑, 大腸癌
■要旨
脳幹腫瘍寛解後に大腸腺腫・大腸癌を発症した14歳男児例を経験した.脳腫瘍,大腸腺腫,大腸癌の合併から,Turcot症候群と診断された.4歳時に脳幹腫瘍を発症後,放射線療法・化学療法を行い3カ月後に腫瘍は著明に縮小し,その後は再発を認めなかった.8歳時に無熱性のけいれんを認め,てんかんと診断された.抗てんかん薬による治療を受けたが,強直発作と複雑部分発作を繰り返した.12歳時に下血をみとめ大腸内視鏡で大腸ポリープを認めた.ポリープは5個で悪性化を認め,内視鏡的切除と結腸部分切除を受けた.14歳時には結腸,S状結腸,下行結腸,横行結腸に多数の小ポリープを認め,全結腸切除術を受けた.病理組織学的には高分化型腺癌と管状腺腫であった.全身の皮膚には多数の母斑・カフェオレ斑が存在し,左前胸部には母斑の密集を認めた.頭部画像では,脳腫瘍の再発を認めなかった.Turcot症候群は小児期にはまれな疾患であるが,脳腫瘍をみた場合には常に考慮が必要である.
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【原著】
■題名
Caroli症候群における淡蒼球病変
■著者
大分大学医学部脳・神経機能統御講座小児科学 秋吉 健介 垣内 辰雄 末延 聡一 赤石 睦美 古城 昌展 泉 達郎
■キーワード
Caroli症候群, 門脈圧亢進症, 肝性脳症, 淡蒼球, 随意運動円滑性低下
■要旨
肝内に多発する嚢胞状胆管拡張,門脈圧亢進症,多発性嚢胞腎よりCaroli症候群と診断された16歳女児にMRI上淡蒼球病変と随意運動の円滑性低下を示唆する中枢性病変を見出した.幼児期に胆道感染を反復し,学童期より門脈圧亢進症,食道静脈瘤が出現した.脾摘術,左胃静脈切離術にて対応したが,数年後に下部消化管出血を反復した.患児は神経学的には無症状であったが,頭部MRIではT1強調画像にて,淡蒼球に両側対称性に高信号域を認めた.WISC IIIは,総IQ 102,言語性IQ 111,動作性IQ 92と解離を認め,積木,組み合わせ,記号の項目で平均以下を呈していた.血中アンモニア値は空腹時42 μmol/lと正常であったが,食後に83 μmol/lまで上昇した.マンガン値は1.6 μg/dlと正常範囲内であった.MRI病変の成因として,多発性肝内胆管拡張,門脈圧亢進症,門脈体循環短絡による潜在性肝性脳症を考えた.肝移植のみが一次的治療となりうるであろう.
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【原著】
■題名
Prader-Willi症候群でみられた睡眠時無呼吸に対してnasal CPAP治療が有効であった1例
■著者
城西医療財団城西病院健康センター1),信州大学医学部小児医学2),同 呼吸器感染症内科3) 荻原 由佳里1) 塩原 正明2) 木下 美智子1) 藤本 圭作3) 小池 健一2)
■キーワード
終夜睡眠ポリグラフィ, 低酸素血症, 肥満
■要旨
閉塞型睡眠時無呼吸低呼吸症候群(obstructive sleep apnea/hypopnea syndrome,OSAHS)の重症型である肥満肺胞低換気症候群を合併したPrader-Willi症候群(PWS)に対し,鼻マスク持続陽圧呼吸療法(nasal continuous positive airway pressure,nCPAP)を行い,その臨床的有用性について検討した.nCPAP装着前の終夜睡眠ポリグラフィ上,無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index/AHI)は31.8 events/hrで低呼吸が多かった.3% oxygen desaturation index(ODI)は45.7 events/hr,cumulative percentage time at SpO2 below 90%(CT90)は98.7%,nadir SpO2は65%,mean SpO2は79%であったことから,患者は重症の低酸素血症を伴うOSAHSと診断された.1年間のnCPAPによる治療後,再度終夜睡眠ポリグラフィによる評価をしたところ,口と鼻における気流は正常化した.AHIは2.4 events/hrで低換気の改善がみられた.また,低酸素血症および動脈血ガス所見で高炭酸ガス血症も改善していた.nCPAPはPWSにおけるOSAHSに対し有効な治療法と考えられた.
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