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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:05.10.19)
第109巻 第9号/平成17年9月1日
Vol.109, No.9, September 2005
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総 説 |
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白神 誠 1089 |
第108回日本小児科学会学術集会 |
会頭講演 |
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原田 研介 1096 |
原 著 |
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玉置 尚司,他 1102 |
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西久保 敏也,他 1106 |
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伊藤 剛,他 1113 |
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今井 孝成,他 1117 |
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森西 洋一,他 1123 |
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鳥居 明子,他 1127 |
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外山 大輔,他 1132 |
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松本 日出男,他 1136 |
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1141 |
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1152 |
第1回Asian Society for Pediatric Research学会議
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1156 |
小児科学会会員ホームページの認証方法変更のお知らせ
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1157 |
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1158 |
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1165 |
小児医学研究振興財団設立準備室 |
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1166 |
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1172 |
【総説】
■題名
小児用医薬品の開発と薬価算定基準
■著者
日本大学薬学部薬事管理学研究室 白神 誠
■キーワード
小児用医薬品, 薬価, 薬価算定ルール, 適応外使用, 加算, 大西班研究報告
■要旨
わが国で小児用医薬品の開発が進まない理由のひとつとして,その薬価が低いことが指摘されている.薬価算定ルールに照らした場合,小児用医薬品の薬価算定の対照となる医薬品が古いために薬価が低く,これに連動して小児用医薬品の薬価も低くなってしまっている.そこで,少しでも小児用医薬品の開発にインセンティブを与えるために,小児用医薬品の薬価算定について,(1)小児用医薬品の開発,小児の適応の追加はすべて新薬として扱い,再審査までの間の販売独占を認めること,(2)小児の適応が追加された場合には,わずかでもよいから薬価を引き上げること,(3)小児用医薬品に対する新しい加算を設けること,を提案する.これらの提案が受け入れられるかどうかは,単にその医薬品の上市により生ずる医療費の増加を見るだけでなく,その医薬品がもたらすベネフィットをも踏まえた医療経済分析を行った上で判断されるべきであろう.また,「社会貢献」を製薬企業に期待するのであれば小児用医薬品を開発した企業を国や学会が何らかの形で顕彰することも考えるべきである.中医協では来年の薬価改定に向けての薬価制度見直しの中で小児用医薬品の薬価算定の問題が検討項目の一つとして取り上げられている.医療現場からの根拠に基づく支援が期待される.
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【原著】
■題名
医学部学生の麻疹抗体保有状況とその問題点
■著者
東京慈恵会医科大学第三病院小児科1),国立感染症研究所ウィルス第3部2),東京慈恵会医科大学小児科3) 玉置 尚司1) 田村 英一郎1) 小林 正久1) 伊東 建1) 矢野 一郎1) 加藤 陽子1) 伊藤 文之1) 斎藤 義弘2) 衞藤 義勝3)
■キーワード
麻疹, secondary vaccine failure, 院内感染対策
■要旨
近年,麻疹ワクチン接種後,ワクチン接種によって獲得された抗体価が減弱し,麻疹に罹患するsecondary vaccine failure(SVF)の症例が増加している.医療従事者の麻疹予防は院内感染対策のなかでも最重要課題の一つである.東京慈恵会医科大学医学部医学科では臨床実習を開始する前に麻疹,風疹,水痘,ムンプスについてEIA法でIgG抗体測定を行っている.その結果,麻疹抗体価は1.1〜4.0%の学生が陰性あるいは偽陽性(4.0未満)でワクチン接種の対象であった.陽性とはいえ極めて低い抗体価(4.0以上8.0未満)しか持たない学生が10.0〜11.8%いた.これらの極めて低い抗体価しか持たない学生のうち3名が初期臨床研修1年目にSVFによる修飾麻疹を発症した.同大学第三病院ではその当面の対策として初期臨床研修開始時にウィルス特異IgG抗体価を再検し,8.0未満の者にはワクチン接種を行っている.
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【原著】
■題名
CDCガイドラインを参考にしたMRSA院内感染予防対策の検討
■著者
奈良県立奈良病院新生児集中治療室1),同 小児科2),創愛クリニック小児科3) 西久保 敏也1) 桑原 勲1)3) 辰巳 公平1) 釜本 智之1) 坂東 由香1) 石原 卓2) 中野 智巳2) 石川 直子2) 西野 正人2)
■キーワード
MRSA, NICU, CDCガイドライン, 擦式消毒用アルコール製剤
■要旨
米国疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインを参考にしたNICUにおけるMRSA院内感染予防対策の効果について後方視的に検討した.
[対象]2000年12月1日から2002年4月30日までの17カ月間に当院NICUに入院した患者122名(在胎週数34.5±4.5週,出生体重1,992±845 g)と感染対策を変更した2002年5月1日から2003年9月30日までの17カ月間に入院した患者127名(在胎週数34.5±4.5週,出生体重2,077±795 g).
[方法]改定は,ガイドラインに沿った変更として(1)擦式消毒用アルコール製剤の導入,(2)プラスチック手袋の再導入,(3)マスクとガウンの使用法の変更である.またガイドラインでは勧告されていない,あるいは未解決事項の変更として,(4)オゾン水を用いた手洗い,(5)気管内吸引方法,(6)閉鎖式輸液回路の導入なども変更した.培養検査は,改定前は鼻汁,咽頭,便と気管内挿管患児における気管内吸引物の培養検査を,改定後は,咽頭を臍部に変更した培養検査を2週間毎に施行した.なお入院時には,血液と胃液の培養検査も行った.
[結果]改定前のMRSA総保菌者,入院時保菌者および入院後の保菌者はそれぞれ46名,7名,39名であったが,改定後は17名*,3名および14名*に有意に減少した(*p<0.05).入院後の保菌までの日数も,改定前の17±20日が,改定後は,30±45日に延長した.
[結語]CDCガイドラインを参考にした感染予防対策に変更後,MRSA保菌者は有意に減少した.今後も感染対策の意識付けの継続と適時の見直しが必要と考えられる.
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【原著】
■題名
CDCガイドラインに準拠した当院小児科における院内感染予防対策の試み
■著者
豊橋市民病院小児科 伊藤 剛 鈴木 賀巳 野村 孝泰 村田 水紀 牧野 泰子 山田 拓司 竹中 学 竹内 幸 安田 和志 幸脇 正典 藤田 直也 柴田 麻千子 小山 典久
■キーワード
院内感染予防, CDCガイドライン, 標準予防策, 感染経路別予防策
■要旨
近年,院内感染に対する社会的関心が高まっている.急性,および慢性疾患患者を同一病棟に抱える当小児科病棟では院内感染対策は家族の安心と患者の安全を守るため,早急に対応すべき問題として予てからの懸案であった.1996年,米国CDCの“病院における隔離予防策のガイドライン”が改訂されたのを期に,同予防策の導入を考えたが,個室やマンパワーの限られた当科ではガイドラインをそのまま当てはめることは出来ず,個室扱いする感染症を限定したり,標準予防策や感染経路別予防策を一部改作するなどして,当科の事情に合わせた感染予防策を作成し,2000年から試行を開始した.その結果,冬季の胃腸炎ウイルスやRSウイルスなどの院内感染が激減し,冬季の平均在院日数が8.2日から5.1日に減ったことなど様々な効果が得られたので報告する.
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【原著】
■題名
学校給食における食物アレルギーの実態
■著者
昭和大学医学部小児科 今井 孝成 板橋 家頭夫
■キーワード
食物アレルギー, 学校給食, 有病率, 疫学調査
■要旨
目的 食物アレルギー児のうちで,6歳までに耐性を獲得できなかった場合や,6歳以降に発症した場合は,学校給食において除去食療法が必要となる.しかしこれまで学校給食における食物アレルギーの実態が調査された事はほとんどない.今回我々は,学校給食における食物アレルギーの現状を把握し,今後の対策の指針とする事を目的に全国調査を行った.
方法 社団法人全国学校栄養士協議会に協力を得て,同会に所属する全学校栄養士を対象に,アンケート調査を調理場単位に郵送法で行った.
結果 全国10,190施設の調理場,8,035,306人の児童・生徒を調査対象とした.食物アレルギーの申請は105,621件で,申請率は小中学生とも1.3%であった.申請率を行政区分別に見ると,北海道の頻度が他の地域に比べ高かった.原因食品は乳製品,鶏卵で全体の50.5%を占め,乳製品,鶏卵を含む主要6食品(甲殻類,ソバ,果物類,魚類)を併せると,80.0%を占めた.
結論 我が国の学校給食における食物アレルギーの現状が判明した.食物アレルギー申請率は1.3%であり,多くの児童・生徒が学校給食において食物アレルギーの対策を望んでいる.原因となる食品は限られており,先ずこれら主要食品を標的に学校給食対策を始めることが得策であろう.
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【原著】
■題名
超速効型インスリンによる治療中に肝グリコーゲンの蓄積が原因と考えられる肝障害を呈した1型糖尿病の1例
■著者
防衛医科大学校小児科1),自衛隊中央病院小児科2) 森西 洋一1) 茂木 陽1) 堀内 勝行1) 本間 健一1) 中川 紀子1) 石渡 隆寛1) 浅野 優1) 野々山 恵章1) 藤塚 聡2)
■キーワード
超速効型インスリン, 1型糖尿病, 肝機能異常, 肝腫大, 肝グリコーゲン
■要旨
我々は,超速効型を中心としたインスリン療法の強化中に,著明な肝機能異常と肝腫大を呈した1型糖尿病の1例を経験したので報告する.症例は,5歳時に1型糖尿病を発症した21歳の女性.血糖コントロールは極めて不良で,投与インスリンをQOL改善のため速効型から超速効型に,中間型から持続型に変更したところ,変更後5カ月で肝機能異常の増悪と肝腫大が認められ入院となった.入院後,インスリンの確実な投与により血糖値は速やかに改善した.しかし,肝機能異常と肝腫大はさらに増悪したため,インスリンを速効型および中間型に変更したところ徐々に改善した.腹部CT検査の画像所見から肝腫大および肝機能異常の原因は,肝グリコーゲンの蓄積と診断した.血糖コントロールが不良な状態において,作用時間が極めて短い超速効型インスリンが過剰に投与され,さらに糖毒性が急激に解除されたことが肝グリコーゲン蓄積を促進したと考えられるとともに,その診断には腹部CT検査が有用と考えられた.
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【原著】
■題名
来日後にデング出血熱を発症した4歳男児例
■著者
東海産業医療団中央病院小児科1),もしもしこどもクリニック2),国立感染症研究所ウイルス第1部3) 鳥居 明子1) 月舘 幸一1) 原田 勝代2) 高崎 智彦3)
■キーワード
輸入感染症, デング熱, デング出血熱, 出血傾向
■要旨
報告症例は日本人の父親,フィリピン人の母親を持つ4歳男児.児はフィリピンで出生したが今回父親と共に暮らす為初来日し,3日後に発熱と蕁麻疹が出現した.当院で入院治療を行ったが高熱は継続し,その後血小板数が減少し出血傾向が見られた.また白血球数もこれに合わせて減少傾向が見られた.加えて,頭痛や四肢痛の訴えもあった.入院時血液検査からは細菌感染の可能性も考えたが,その後の経過よりウイルス感染の関与を疑った.フィリピンでデング熱が流行しているという情報を得て,患者の血液を検査した結果,デングウイルス陽性であった.その後症状は徐々に改善し10日間の入院治療後に退院した.本症例においては,診療する側にデング熱に対する知識が乏しく,確定診断に日数を要した.デング熱は,流行地においては小児でしばしば見られる疾患であり,時に重症化することも報告されており,小児科診療を行う上で忘れてはならない輸入感染症のひとつであり,本邦での報告例はまだ極めて少ない為報告した.
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【原著】
■題名
発熱,貧血を繰り返した後腹膜腔消化管重複症の1乳児例
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科1),同 外科2),同 病院病理科3) 外山 大輔1) 磯山 恵一1) 西岡 貴弘1) 保崎 一郎1) 廣田 保蔵1) 山田 耕一郎1) 千葉 正博2) 光谷 俊幸3)
■キーワード
消化管重複症, 嚢腫状, 後腹膜腔, 発熱, 貧血
■要旨
消化管重複症は,消化器系に生じる稀な先天奇形疾患である.症例は9カ月,女児.主訴は貧血.生後6カ月頃から,発熱と貧血をくり返していた.画像診断により後腹膜腔に存在する腫瘤が発見されたが,出血部位の同定はできなかった.また,消化管出血は認められなかった.外科的切除の結果,後腹膜腔に存在する嚢腫状消化管重複症と診断された.後腹膜腔に発生する消化管重複症は極めて稀である.正常腸管との交通がない場合には後腹膜腔への出血も念頭に置くべきであると考えられた.
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【原著】
■題名
遅発型先天性横隔膜ヘルニアの4例
■著者
NTT東日本札幌病院小児科1),北海道立小児総合保健センター外科2) 松本 日出男1) 大柳 玲嬉1) 布施 茂登1) 森 俊彦1) 縫 明大2)
■キーワード
先天性横隔膜ヘルニア, Bochdalek孔, 遅発型, 嘔吐, 咳嗽
■要旨
最近2年間に4例の遅発型先天性横隔膜ヘルニアを経験した.4例のうち1例が男児,3例が女児であった.発症は生後4日,4カ月,10カ月,そして2歳3カ月と様々であったが初発症状は,頻回の嘔吐,咳嗽などであった.胸部X線,胸部CT,胃食道造影などにより診断され,すぐに手術が行われたが,術中所見より診断に至った例もあった.
腹部症状を含め,非特異的,多彩な症状を呈する新生児期以降の乳幼児,小児に対して,本症も念頭に置く必要性を痛感した.
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