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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:05.06.23)

第109巻 第5号/平成17年5月1日
Vol.109, No.5, May 2005


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総  説
1. 赤血球造血と疾患
伊藤 悦朗,土岐 力 605
2. 小児好中球減少症
小林 正夫 614
3. 小児開業医で経験したoccult bacteremia23例の臨床的検討
西村 龍夫,他 623
第107回日本小児科学会学術集会
教育公演
アトピー性皮膚炎のEBMと行動医学的アプローチ
大谷 幸弘 630
原  著
1. 学童期におけるシックハウス症候群実態解明の試み
富川 盛光,他 638
2. 純型肺動脈閉鎖に対するカテーテル治療戦略
―Definitive repairの予知因子とそれに基づくガイドワイヤーの保持方法―
星野 健司,他 644
3. 小児期ステロイド感受性ネフローゼ症候群における発症・再発の季節性
里村 憲一,他 650
4. MEFV遺伝子変異を認めた家族性地中海熱の1例
佐藤さくら,他 654
5. 抗うつ剤が著効した肢端紅痛症の1例
長澤 哲郎,他 658
6. プロピルチオウラシル治療中にANCA関連血管炎を呈したバセドウ病の1例
神野 和彦,他 662
7. 当院で経験した小児レプトスピラ症7例の検討
喜瀬 智郎,他 667
8. 反復性けいれんを伴った急性脳症の3例の経時的MRI所見
石井ちぐさ,他 672
9. 長期生存し,遺伝子解析を行った低フォスファターゼ症胎児型の1男児例
笹本 優佳,他 678
短  報
1. 経時的第三脳室計測による水頭症治療効果の評価
石原 健一,他 683
小児医療
1. 小児科医メーリングリストの専門医間コミュニケーションツールとしての有用性
井上 隆輔,他 686
地方会抄録(沖縄,鹿児島)
691
雑報
698
日本医学会だより No. 33
700
医薬品・医療機器等安全性情報 No. 212
701


【原著】
■題名
学童期におけるシックハウス症候群実態解明の試み
■著者
独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科2)
富川 盛光1)  勝沼 俊雄2)  柴田  淳2)  衞藤 義勝2)
■キーワード
sick house syndrome(SHS),疫学調査,SHS罹患率調査,揮発性有機化合物
(volatile organic compounds:VOCs),アレルギー
■要旨
 シックハウス症候群は,屋内環境要因(化学汚染物質と生物汚染物質)による不定愁訴を主とした異常反応症候群で,マスコミにより広く報道されているが,その実態はいまだ明らかといえない.今回われわれは,一般小児母集団における同症候群の実態に関する疫学調査を行った.東京都港区内の公立小中学校29校(7,014人)と新潟県中魚沼郡津南町の全公立小中学校10校(1,142人)の生徒を対象とした.厚生労働省「シックハウス症候群に関する疫学的研究」班で作成された質問紙を用いてアンケート調査を行った.港区における同症候群疑い例は1.7%であり,津南町では0.8%であった.港区は津南町に比べ,疑い例の割合は有意に高かった(P<0.05).両地区共,有訴者におけるアレルギー疾患有病率は70〜95%と高率であった.港区と津南町において有訴率の差がでたことは,住宅の形態,築年数・リフォーム年数の差によると考えられた.原因物質の発生源として,壁・床・建材・塗料・家具等の関与が疑われた.本研究は小児における本邦初のシックハウス症候群の大規模な実態調査といえ,本邦の同症候群有訴率は0.8%〜1.7%と考えられた.


【原著】
■題名
純型肺動脈閉鎖に対するカテーテル治療戦略
―Definitive repairの予知因子とそれに基づくガイドワイヤーの保持方法―
■著者
埼玉県立小児医療センター循環器科,東京慈恵会医科大学小児科*
星野 健司  小川  潔  衞藤 義勝*
■キーワード
純型肺動脈閉鎖,カテーテル治療,バルーン肺動脈弁形成術,治療戦略
■要旨
 【目的】純型肺動脈閉鎖(PPA)に対する経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV)がdefinitive repairとなる場合の予知因子とそれに基づくPTPVの手順(ガイドワイヤーの保持方法)を検討した.【対象・方法】1998年1月以後にPTPVを施行したPPAの患児13例を以下の3群に分類して,三尖弁輪径(TVD)・肺動脈弁輪径(PVD)・右室容積(RVV),PTPV後の動脈管(PDA)の開存について検討した.Group1:PTPVがdefinitive repairとなり,PTPV後48時間以内にPDAの血流が不要・Group2:PTPVがdefinitive repairとなるが,PTPV後48時間以上PDAの血流が必要・Group3:PTPVのみではdefinitive repairとならない.【結果】13例の分類はGroup1が6例,Group2が2例,Group3が5例であった.TVDz(Z-value)が−1以上の患児は全例Group 1,−2以下の患児は全例Group 3であった.PVDが70%以下の患児はGroup 2,3で重複していた.RVVが70%以上の患児は全例Group 1,50%以下の患児は全例Group 3であった.動脈管がPTPV後48時間以内に閉鎖した4例は,いずれも動脈管の蛇行・狭窄がある症例であった.【まとめ】TVDz≧−1.0かつRVV≧70%:PTPVはdefinitive repairと成り,ガイドワイヤーはPDAを通過させて保持することが可能.TVDzが−1.0〜−2.0又はRVVが50%〜70%:PTPVはdefinitive repairと成りえるが,PTPV後48時間以上PDAの維持が必要.動脈管に蛇行・狭窄がない場合のみ,ガイドワイヤーは動脈管を通過させて保持することが可能.TVDz≦−2.0かつRVV≦50%:PTPVはdefinitive repairとならず,外科手術の追加が必要.


【原著】
■題名
小児期ステロイド感受性ネフローゼ症候群における発症・再発の季節性
■著者
大阪小児腎研究会
里村 憲一  中島 滋郎  山本 勝輔  松本小百合
西垣 敏紀  島  雅昭  薮田 玲子  蘆野 伸彦
山本 威久  平田  良  阪田まり子  中川喜美子
有田 耕司  下辻 常介  大薗 恵一
■キーワード
ネフローゼ症候群,疫学,発症頻度,季節
■要旨
 大阪小児腎研究会に登録された,初発時1歳以上で15歳未満のステロイド感受性ネフローゼ症候群患者165例(男98例,女67例)を対象とし,発症および初めての再発時期の検討を行った.季節別の発症数は春(3〜5月);56例(33.9%),夏(6〜8月);42例(25.5%),秋(9〜11月);41例(24.8%),冬(12〜2月);26例(15.8%)で,季節別の発症頻度に有意差を認め(p=0.012),春は有意に頻度が高く(p=0.0143),冬は有意に頻度が低かった(p=0.0082).また,初めての再発にも季節差を認め(p=0.029),冬は有意に発症頻度が低かった(p=0.0096).
 今回の検討により,大阪およびその周辺地区のネフローゼ症候群(NS)の発症および再発には季節差が存在し,いずれも冬に頻度が低いことが明らかとなった.NSの発症要因にはアレルギーなどの発症・増悪に季節差がみとめられる要因が挙げられているが,今後,他地域の疫学データと比較することによりNSの発症要因が明らかにされる可能性があると思われる.


【原著】
■題名
MEFV遺伝子変異を認めた家族性地中海熱の1例
■著者
宮崎大学医学部小児科1),県立宮崎病院小児科2)
佐藤さくら1)  日高 文郎1)  布井 博幸1)
尾上 泰弘2)  西口 俊裕2)  浜田 恵亮2)
■キーワード
不明熱,家族性地中海熱,MEFV遺伝子,C5a
■要旨
 家族性地中海熱(Familial Mediterranean Fever:FMF)は本邦において稀な疾患であるが,コルヒチン治療が発熱発作及び2次性アミロイドーシスを予防できるため原因不明の発熱性疾患では本疾患を鑑別する必要がある.我々は14歳女児で,5カ月に渡る反復する発熱と高CRP血症のためMEFV遺伝子解析を行い,compound heterozygous mutation(E148Q,P369S)を認めFMFと診断した症例を経験した.これまで同変異に加えてR408Q変異を持った症例は小柴胡湯に効果的であったと報告されていたが,我々の症例では他のFMF症例と同様にコルヒチンがよく奏功したので,地中海熱でのジェノタイプとフェノタイプの関係について考察を加え報告する.


【原著】
■題名
抗うつ剤が著効した肢端紅痛症の1例
■著者
国立成育医療センター神経内科1),身体障害者療護施設 横浜らいず1)2)
長澤 哲郎1)  阿部 裕一1)  本田 真美1)
岡   明1)  二瓶 健次1)2)
■キーワード
肢端紅痛症,原発性,常染色体優性遺伝,抗うつ剤,セロトニン
■要旨
 肢端紅痛症の小児例を経験した.わずかの加熱にて四肢末端の発赤と激しい灼熱痛を訴え,日常生活が著しく阻害されていた.
 また,症状は軽いものの母親とそのいとこ(女性)にも肢端紅痛症と考えられる症状が見られており,家族歴から常染色体優性遺伝が推定された.
 通常の鎮痛剤は全く無効であり,三環系抗うつ剤である塩酸クロミプラミンが著効した.本症例でセロトニン再取り込み阻害作用の強い塩酸クロミプラミンが有効であったことから,肢端紅痛症におけるセロトニンの関与が示唆された.
 肢端紅痛症は,まれな疾患であるが症状が特徴的であるので,四肢末端の発赤・疼痛を見たときには念頭に置く必要がある.本症例で著効した塩酸クロミプラミンも治療薬のひとつとして検討すべきである.また,マレイン酸フルボキサミンとの組み合わせでより強い効果が見られたことは注目に値する.

【原著】
■題名
プロピルチオウラシル治療中にANCA関連血管炎を呈したバセドウ病の1例
■著者
広島鉄道病院小児科
神野 和彦  松浦 良二  安村 純子
■キーワード
プロピルチオウラシル,白血球減少,ANCA関連血管炎,MPO-ANCA,バセドウ病
■要旨
 12歳発症バセドウ病女児にプロピルチオウラシル(PTU)で治療中に頑固なかゆみを伴う皮疹を認め,15歳時に発熱,咽頭痛,白血球減少を認めたため,PTUを中止した.myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)高値と移動性の関節痛も認めた.PTU中止3カ月後には関節痛は徐々に改善してきた.しかし,湿疹は改善しないため,皮膚生検を施行し,leukocytoclastic vasculitisの所見を認め,PTUによるANCA関連血管炎と診断した.PTU治療中のANCA関連血管炎は腎炎を中心とした報告が多いが,今回の症例は検尿および腎機能に全く異常を認めなかった.本症の症状は多彩であり,今回の症例のように腎炎所見を欠く症例もあるため,PTU投与例の遷延する皮疹には注意すべきと思われる.


【原著】
■題名
当院で経験した小児レプトスピラ症7例の検討
■著者
沖縄県立北部病院小児科
喜瀬 智郎  大宜見 力  島袋  恵
佐々木尚美  伊佐 真之
■キーワード
レプトスピラ症,発熱,淡水や動物との接触歴
■要旨
 平成15年8月と9月の2カ月間に7例の小児レプトスピラ症を経験した.年齢は5歳から15歳で全例男児であった.全例に39度以上の発熱を認め,頭痛,嘔吐,下痢,悪寒が多くみられた.本症に特徴的な腓腹筋痛や眼球充血の出現頻度は低かったが,1例に髄膜炎を合併した.肝酵素の上昇は4例,軽度の腎機能障害が3例にみられたが,ワイル症候群に至った例はなかった.経静脈的に抗菌薬を使用した6例は,72時間以内に解熱した.成人と比較して小児では症状が軽症かつ非特異的であるが,髄膜炎の合併や小児死亡例の報告もみられ,抗菌薬での速やかな改善が期待できることから早期診断が必要である.本症の早期診断のためには,疫学情報に留意し,淡水や動物との接触歴を十分聴取することが重要となる.


【原著】
■題名
反復性けいれんを伴った急性脳症の3例の経時的MRI所見
■著者
公立昭和病院小児科

石井ちぐさ  櫻井基一郎  大戸 秀恭
内田  寛  梅田  陽
■キーワード
MRI,拡散強調画像,急性脳症,反復性けいれん,小児
■要旨
 急性期に頭部MRI拡散強調画像(以下DWI)で皮質下に線状高信号を呈した3例の脳症児を経験した.2例はけいれん重積型脳症で,1例はマクロファージ活性化症候群に合併した脳症であった.3例とも反復性けいれんを呈し,ペントバルビタールの持続投与を要した.各症例とも早期(反復性けいれん出現から0〜2日)にDWIで皮質下に線状高信号域が認められ,その後皮質下の所見は消失したが,その周囲に萎縮をきたした.このDWIの所見は,早期に脳症の発現を知り,後の萎縮部を察知する上で有効であった.また,反復性けいれんをきたした,原疾患の異なる症例が同様の所見を呈しており,皮質下高信号と反復性けいれんとの関連性が示唆された.


【原著】
■題名
長期生存し,遺伝子解析を行った低フォスファターゼ症胎児型の1男児例
■著者
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院周産期センター新生児部門1),同 病理学部門2),聖マリアンナ医科大学小児科3),
しもやまこどもクリニック4),大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学小児発達医学5)

笹本 優佳1)  相京 美穂1)  宮本 雄策3)  亀田 佳哉1)
下山 丈紀4)  堀内  勁3)  品川 俊人2)  大薗 恵一5)
■キーワード
低フォスファターゼ症,組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNSALP)遺伝子,ビタミンB6
■要旨
 低フォスファターゼ症胎児型は生後早期に呼吸障害,痙攣重責,感染症などで死亡する予後不良な疾患である.今回私たちは痙攣がビタミンB6投与で管理でき,2歳すぎまでの長期生存をした胎児型の1男児例を経験し,組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNSALP)遺伝子解析を行ったので報告する.症例は在胎38週,2,795gで出生し,呼吸不全のため,当院NICU(新生児集中治療室)に入院した.家族歴に異常なかったが,検査所見から診断は容易であった.日齢14から痙攣発作増悪し,各種抗痙攣剤で管理できず,日齢75にビタミンB6大量療法を開始し,臨床症状,脳波所見ともに改善した.その後は数回の呼吸器感染症を生じるが抗生剤の投与で軽快した.しかし2歳過ぎに肺炎から肺出血を生じ永眠した.TNSALP遺伝子解析では2つの変異がみられ,塩基配列の第1,559番目の変異は日本人患者に多くみられるものであったが,第854番目のコドンの変異は過去に報告のない新規なものであった.


【短報】
■題名
経時的第三脳室計測による水頭症治療効果の評価
■著者
神奈川県立こども医療センター周産期医療部新生児未熟児科

石原 健一  松井  潔  猪谷 泰史
■キーワード
二分脊椎,脳室―腹腔シャント術,超音波検査,第三脳室,生体計測
■要旨
 二分脊椎の新生児において頭部エコーによる経時的第三脳室幅の測定を行い水頭症治療前後の評価を行った.胎児期の第三脳室幅は4.8mmで,日齢0の髄膜瘤修復術後3.8mmとなり,その後拡大し,最大4.9mmとなった.日齢11に脳室・腹腔シャントを行い,第三脳室幅が1.4mm,側脳室がスリット状になったため,シャント圧を調整した.第三脳室幅は2〜3mmで平衡状態となった.経時的第三脳室計測は有用と考えられた.


【小児医療】
■題名
小児科医メーリングリストの専門医間コミュニケーションツールとしての有用性
■著者
東北大学大学院医学系研究科医学情報学分野1),東北大学病院メディカルITセンター2)
井上 隆輔1)  古関 義人2)  大佐賀 敦2)  根東 義明1)
■キーワード
医療情報学,メーリングリスト,小児科学
■要旨
 専門医間コミュニケーションツールの有用性を検証するため,1996年4月より小児医療に携わる医師を会員として13のメーリングリスト群を運用している日本小児科医メールカンファランス(JPMLC)の,過去7年6カ月分の加入会員データと投稿内容を解析した.2003年10月現在の会員が2,082人で,さらに増加傾向が続いている.この会員数は,日本小児科学会会員の10%を超えるものと推測され,一方で退会者は,創設以来100人以下で,専門医間コミュニケーションツールとしてのメーリングリストの有用性,必要性を示している.投稿内容の解析からは,成書に載らないような経験的知識の交換を電子的に支援することができ,さらに,耳学問的に知識を蓄積し検索できることは,従来にはなかった新しい知識形態として期待される.


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