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日本小児科学会雑誌 目次 |
第109巻 第3号/平成17年3月1日
Vol.109, No.3, March 2005
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【原著】 |
■題名 |
気管支喘息児における運動誘発喘息と日常生活での問題点 |
■著者 |
独立行政法人国立病院機構東埼玉病院1),済生会川口総合病院2),川口市立医療センター3),
高木病院4),土屋小児病院5),埼玉医科大学6),越谷市立病院7),さいたま赤十字病院8)
杉本日出雄1) 大山 昇一2) 目澤 憲一3) 高木 学4)
土屋 喬義5) 大鹿 栄樹6) 木下 恵司7) 安田 正8) |
■キーワード |
気管支喘息,運動誘発喘息,喘息児の余暇活動,患者教育
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■要旨 |
埼玉県全域の小児科医の協力のもと,外来治療中の喘息を持った小・中学生の運動誘発喘息に関する頻度,運動に対する戸惑い,子どもの余暇活動や家族が不安に思っていることがらについてアンケート調査を行った.その結果,運動誘発喘息を予防するためのきめ細かい指導を行い,運動をともに参加できるように援助していくことが,より良い友人関係や家族関係の構築,しいては喘息児のQOLの向上に繋がると考えられた.さらに家族が協力しあえるような環境作りについても診療の場で話し合いを深めていく必要があると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
大学での成人麻疹集団感染と緊急ワクチン接種による流行阻止
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■著者 |
金沢市元町福祉保健センター1),石川中央保健福祉センター2),石川県小児科医会「石川はしかゼロ作戦委員会」3),
札幌鉄道病院小児科4),金沢大学医学部保健学科5)
越田 理恵1) 川島ひろ子2) 中村 英夫3) 渡部 礼二3)
西田 直巳3) 成田 光生4) 谷内江昭宏5) |
■キーワード |
成人麻疹,集団感染,予防接種,vaccine failure,感染症モニタリングシステム |
■要旨 |
石川県麻疹迅速把握事業のモニタリングシステムにより,大学での成人麻疹集団感染が早期に把握され,保健所は大学側へ感染拡大阻止のため助言・啓発を行った.大学側は,明らかな麻疹罹患者以外の学生,教職員6,368名に麻疹ワクチン緊急集団接種を行った.
今回のアウトブレイクでの罹患学生は65名で,このうち疫学調査結果48名,血清検査結果35名,ウイルス分離結果19名が得られた.疫学調査を行った48名のうち予防接種歴ありは32名であった.
疫学調査を行った48名に,血清学的検査結果のみが判明している6名を加えた計54名について,感染形態を検討した結果,未罹患未接種16名(29.6%),vaccine failure(以下VF)35名(64.8%),再感染疑い2名(3.7%),不明1名と推定された.また35名のVFうち,secondary vaccine failure(以下SVF)と推測されたのは20名であった.ウイルス分離を試みた19名のうち,6名が陽性で,分離されたウイルスの遺伝子型は全てH1型であった.臨床的に修飾麻疹と考えられた7人はいずれもワクチン歴のある学生であった.
石川県独自の麻疹迅速把握事業,更に県内小児科医を中心にしたメーリングリストの情報等の地域における感染症流行予測のモニタリングシステムが有効に機能し,大学への早期介入により感染拡大阻止対策がタイムリーに行われた事例であった.
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【原著】 |
■題名 |
ハイリスク児のRSウイルス下気道感染症に対するパリビズマブの予防効果 |
■著者 |
旭川医科大学付属病院周産母子センター1),旭川医科大学小児科2)
林 時仲1) 岡本 年男2) 中村 英記2)
長屋 建2) 竹田津原野1) 藤枝 憲二1)2) |
■キーワード |
RSウイルス,パリビズマブ,早産児,慢性肺疾患,予防効果 |
■要旨 |
わが国においても早産児及び気管支肺異形成症等の慢性肺疾患を有する児に対して抗RSウイルスヒト化モノクロナー抗体(パリビズマブ)の投与が可能となった.そこで平成14年度のRSウイルス流行シーズンの旭川医科大学附属病院における本剤の予防効果を検討した.当院NICUを退院しパリビズマブの適応基準を満たす早産低出生体重児47名を,適応基準を満たすものの臨床投与開始前であったために投与されなかった25名(非投与群)とパリビズマブを投与した22名(投与群)に分けて比較検討した.平均在胎期間,平均出生体重,NICU入院中の酸素投与,NICU入院中の人工呼吸管理,慢性肺疾患の有無には差を認めなかったものの,投与群の方が下気道感染症による入院率が低く(36.0% vs 9.1%,p<0.05),RSウイルス下気道感染症による入院率が低く(28.0% vs 4.5%,p<0.05),呼吸器症状を主訴とする外来受診率が低かった(64.0% vs 9.1%,p<0.0001).以上の結果からパリビズマブは有効であったと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
我が国の小児HBウイルス感染症の現状と予防対策の実態調査 |
■著者 |
藤沢こどもクリニック1),久留米大学医学部小児科2)
藤澤 卓爾1) 牛島 高介2) 大和 靖彦2) 中嶋 英輔2)
前田 公史2) 熊谷 優美2) 木村 昭彦2) |
■キーワード |
B型肝炎,キャリア,母子感染,父子感染,予防対策
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■要旨 |
我が国のB型肝炎ウイルス(HBV)母子感染防止事業が開始された1985年以降の小児HBV感染症の現状と予防対策の実態を知るために,日本小児肝臓研究会(A)会員76名と日本外来小児科学会(B)会員1,563名を対象としてアンケート調査を行った.回答はA会員45名,B会員622名より得た.
1995年以降,HBV母子感染防止処置を実施する開業医が広がっているものの,逆に医師1人の経験例数は少なく,感染防止対策に経験豊富な医師が相対的に少なくなっていることが示唆された.父子感染予防処置の実施率は低率(A会員31%,B会員19%)であった.15歳未満B型肝炎,キャリア例は,161名の会員(A会員25名55.6%,B会員136名21.9%)から416例(A会員96例,B会員320例)集積された.これらの症例の感染経路を最近5年間でみると母子感染67.4%,父子感染10.5%,他の家族内感染4.2%,不明13.7%,その他4.2%であった.母子感染の原因では,胎内感染45.8%,プロトコール通り接種されなかった不適切な感染防止処置33.3%,ワクチンの無/低反応4.2%であった.
現行HBV母子感染防止対策における不適切な感染防止処置例の存在,父子感染予防対策,HBワクチンの定期接種の是非などが議論すべき課題である. |
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【原著】 |
■題名 |
扁平頭底症と環軸関節脱臼による機械的刺激が原因と考えられた脊髄空洞症の幼児例 |
■著者 |
熊本中央病院小児科
古瀬 昭夫 牛嶋 正 |
■キーワード |
脊髄空洞症,扁平頭底症,環軸関節脱臼,頭蓋頸椎移行部奇形 |
■要旨 |
多呼吸,腎機能障害を呈した児の経過観察中に,歩行開始遅延を主訴とし,2歳時に脊髄空洞症と診断した男児例を報告した.脊髄空洞症の原因として,扁平頭底症と環軸関節脱臼による機械的刺激が考えられた.治療は環椎後弓切除術と後頭骨と第2,3頸椎間の自家骨による固定術ならびにフィラデルフィア装具装着を行い,その後理学療法にて機能回復をみている.
幼児の痙性麻痺をみた場合に,キアリ奇形,頭蓋頸椎移行部奇形を合併した脊髄空洞症を考慮に入れておく必要があると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
複雑部分発作型有熱性けいれん重積後の脳血流シンチグラムで血流増加が観察された突発性発疹の乳児例 |
■著者 |
島根大学医学部小児科
堀江 昭好 木村 正彦 内山 温 瀬島 斉 山口 清次 |
■キーワード |
複雑部分発作,痙攣重積,突発性発疹,脳血流シンチグラム |
■要旨 |
HHV-6による複雑部分発作型のけいれん重積をきたした1歳女児を経験した.発作は全身性,両側対称性の間代性けいれんと,それに続く自動症が30分間続いた.けいれん回復後,神経学的後遺症は認められなかった.頭部MRI,脳波では異常を示さなかったが,けいれん4日後の脳血流シンチグラム(SPECT)で右側頭から頭頂部の大脳皮質,ならびに右基底核部の血流増加が観察された.けいれん重積に遭遇した場合,けいれん後早期にSPECT検査を行うことで局所の変化を捕らえられると考えられた. |
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【短報】 |
■題名 |
発熱後の血清ナトリウム濃度と熱性痙攣との関連 |
■著者 |
独立行政法人国立病院機構高知病院小児科1),高知県立安芸病院小児科2),
高知大学医学部小児思春期医学教室3)
武市 知己1) 稲井 憲人1) 小谷 治子1) 細川 卓利2)
矢野 哲也3) 遠藤 文香3) 脇口 宏3) |
■キーワード |
発熱,血清ナトリウム濃度,熱性痙攣,危険因子
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■要旨 |
発熱後の血清ナトリウム濃度(s-Na)と熱性痙攣の関連を検討した.非痙攣群では無熱群(138.84±2.34mEq/l,n=38)と発熱1〜2日の群(138.80±2.26mEq/l,n=31)ではs-Naに有意差はなく,発熱3〜4日の群(136.60±2.43mEq/l,n=30)と発熱5日以上の群(136.77±2.81mEq/l,n=31)は低値であった(p<0.05).熱性痙攣群では持続時間が10分未満でかつ反復しない短時間単発型の熱性痙攣群(135.55±2.20mEq/l,n=40),10分以上の持続又は反復する熱性痙攣群(135.56±2.65mEq/l,n=39)の両群ともにs-Naは低値を示し(p<0.05),熱性痙攣とs-Naの低下との関連が示唆された. |

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【小児医療】 |
■題名 |
今治市における子ども虐待への組織的対応の現状 |
■著者 |
今治市児童虐待防止連絡協議会1),愛媛県立今治病院小児科2),済生会今治病院小児科3),あおい小児科4),
渡邊小児科・麻酔科医院5),くす小児科6)
福田 光成1)2) 高橋龍太郎1)3) 青井 努1)4)
渡邊謙一郎1)2)5) 久壽 正人1)2)6) |
■キーワード |
子ども虐待,身体的虐待,ネグレクト,ハイリスク,組織的対応 |
■要旨 |
今治市児童虐待防止連絡協議会にて,平成12年度から4年間に報告および対応された事例を検討した.事例数は53家族の100人.身体的虐待16例,ネグレクト65例,心理的虐待9例,性的虐待1例および虐待への進展が濃厚に危惧されて対象となったハイリスクが9例であった.把握時の年齢は,1歳未満が12例,3歳以下は35例で全事例の約1/3を占めた.虐待の背景として,母親自身の問題が59例,経済的問題が37例に認められた.把握した最初の経路は,保健師,民生委員等の公的機関の職員が50例と半数を占め,保育所や教育機関が21例,医療機関は17例であった.連携した機関や職員は,保健師が86例と最も多く,児童相談所が55例,福祉事務所が52例であり,医療機関では小児科が35例,精神科が31例であった.転機は,家族への支援を行いつつの自宅でのモニターが最も多く76例であり,施設入所が19例であった.当市では事例が協議会に報告されると専門部会で検討され,決定された事項は各専門職に割り当てられ組織的な対応が行われる.組織的な連携により各専門職の負担軽減のみならず,事例がより早期に発見されるようになり,迅速な多方面からの情報収集や早期対応が可能になった.また保健師や民生委員等の地域に密着した公的職員の積極的な連携や,外来診療の工夫による継続的な小児科外来での事例のフォローが,自宅でのモニターや虐待の発生予防等の活動において有効であった. |

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