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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:05.01.31)

第108巻 第11号/平成16年11月1日
Vol.108, No.11, November 2004


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第107回日本小児科学会学術集会
教育講演
造血細胞移植の新しい潮流
河 敬世 1325
小児難治てんかんにおける外科治療の適応
大塚 頌 子 1333
小児外科領域の内視鏡下手術
福澤 正洋 1342
小児の発育と耳鼻咽喉科疾患―小児はなぜ中耳炎を起こしやすいのか
山中 昇 1348
原  著
1. 3歳児健診よりみた乳幼児アレルギー疾患の疫学
楠 隆,他 1358
2. フェニルケトン尿症における脳波の検討
和泉 美奈,他 1366
3. 重症心身障害児(者)における麻疹予防接種の検討
栗原 まな,他 1372
4. 急性巣状細菌性腎炎における腎臓の大きさの超音波法による検討
秋場 伴晴,他 1379
5. Lowe症候群3例の長期経過
三野輪 淳,他 1384
6. テレビ・ビデオの長時間視聴が幼児の言語発達に及ぼす影響
加納 亜紀,他 1391
7. 周産期医療施設における養育困難家庭への支援と
介入の試みに関する現状と課題
本澤 志方,他 1398
8. 短期入院の後に亡くなった児の家族への
精神的サポートの検討(第1報)
西巻  滋,他 1404
9. Periodic Fever, Aphtous Stomatitis, Pharyngitis,
and Cervical Adenitis症候群の1例
大島 美保,他 1409
10. 小児期1型糖尿病におけるインスリンアスパルトの
おやつ直前投与の有用性
川村 智行,他 1413
11. 化学療法が奏効した先天性ランゲルハンス細胞性組織球症の1例
藤井 隆成,他 1417
12. クロロキンが著効した特発性間質性肺炎の6歳男児例
小久保雅代,他 1421
地方会抄録
(香川,佐賀,長崎)
1427
委員会報告
小児脳死の実態と診断についての全国医師アンケート結果
(2004年) 日本小児科学会小児脳死臓器移植基盤整備ワーキング委員会第三分科会
1434
タミフル★ドライシロップ3%の乳児への投与の
安全性に関する検討(中間報告) 日本小児科学会薬事委員会
1438
小児特発性血小板減少性紫斑病
―診断・治療・管理ガイドライン 日本小児血液学会ITP委員会
1439
雑報
1444
日本医学会だより No.32
1445
医薬品・医療用具等安全性情報 No.205,206
1447


【原著】
■題名
3歳児健診よりみた乳幼児アレルギー疾患の疫学
■著者
京都大学大学院医学研究科発生発達医学講座発達小児科学教室1),京都府医師会乳幼児保健委員会2)
楠   隆1)  西小森隆太1)  平家 俊男1)  辻  幸子2)
藤田 克寿2)  舘石 捷二2)  森  洋一2)  中畑 龍俊1)
■キーワード
アレルギー,疫学調査,3歳児健診
■要旨
 我国における最近の乳幼児アレルギー疾患の動向を把握する目的で,3歳児健診を受診した一般小児を対象としてアレルギー疾患疫学調査を実施し,以下の結果を得た.
 1)アトピー性皮膚炎(AD),喘息・喘鳴(BA/W),アレルギー性鼻炎(AR)の現症率・既往率は各々,3.0%・5.5%,12.8%・2.7%,10.3%・0.7%であり,AD以外は現症率が既往率より高く,3歳時点ではADは寛解に向かう一方でBA/W,ARの発症が増加する傾向が見られた.スギ花粉症が疑われる者は全体の1.6%であった.
 2)ADの既往者はそうでないものに比べ3歳時点でBA/Wを発症している頻度が1.7倍であった(21.4% vs 12.3%).
 3)春生まれの者はADの罹患率が低い傾向を示し,また秋生まれの者は有意にARの罹患率が低かった.
 4)出生順位によるアレルギー疾患罹患率への影響は認めなかった.
 5)保育園通園者はそうでない者に比べBA/W,ARの罹患率が有意に高く,また通園者のうちでも1歳未満から通園している者により高い傾向を示した.
 今後さらに対象者を増やして今回得られた傾向を確認するとともに,特に保育園通園児に対する環境整備や予防指導などの介入を検討すべきと思われた.


【原著】
■題名
フェニルケトン尿症における脳波の検討
■著者
駿河台日本大学病院小児科
和泉 美奈  山崎 弘貴  大和田 操
■キーワード
フェニルケトン尿症,脳波
■要旨
 フェニルケトン尿症(PKU),高フェニルアラニン血症(HPA)に伴う神経学的異常と血中フェニルアラニン(Phe)維持濃度の関係を評価する目的で脳波を検討した.対象はマススクリーニング(MS)で発見されたPKUとHPA21例(I群7〜23歳)とMS以前に発症したPKU6例(II群23〜31歳)で,II群の1例を除き全例で食事療法を継続している.異なる年齢で施行した脳波を後方視的に評価した.脳波所見では基礎波の徐波化,広汎性のα波をI群5/18例,II群3/4例に認めた.突発性異常波はI群では認めず,II群で全例に認めた.I群はさらに脳波異常のあるA’群,ないA群に分け,II群で食事療法を継続中の5例をB群とし3群で各年齢別の年間平均血中Phe値を検討した.A’群とB群では,A群に比較し乳幼児前期,学童期以降で明らかにPhe高値であった(p<0.01,0.05).長期間の血中Phe高値が脳波異常に関与していると考えられた.


【原著】
■題名
重症心身障害児(者)における麻疹予防接種の検討
■著者
神奈川県総合リハビリテーションセンター小児科1),東京慈恵会医科大学小児科2),
国立感染症研究所ウイルス製剤部3)
栗原 まな1)  中江陽一郎1)  小萩沢利孝1)
衞藤 義勝2)  岡田 晴恵3)  田代 眞人3)
■キーワード
重症心身障害,麻疹,予防接種,免疫能
■要旨
 麻疹は重症心身障害(重障)児(者)に対し予防接種を施行したい疾患の筆頭であるが,麻疹ワクチンは一過性に免疫能を抑制するため安全面への検討が必要である.今回は,当科で経過観察中の1〜20歳の重障児(者)113例における麻疹自然罹患歴・予防接種歴・予防接種後副反応を調査した.麻疹自然罹患例は14例(12.4%),予防接種済みの例は78例(69.0%)であり,予防接種による重篤な副反応はみられなかった.次に3〜60歳の122例に対し麻疹EIA抗体価を測定した.抗体価陰性は15例であった.3歳以上で麻疹抗体価陰性例の内インフォームドコンセントが得られた8例(1〜39歳)と,1〜2歳で臨床的に麻疹に罹患していない5例に麻疹予防接種を行い,接種前・接種後約1週・接種後約1カ月のサブセット別リンパ球数と麻疹抗体価を測定した.15歳以下の6例中2例,16歳以上の7例中6例は接種前のリンパ球数は低値を示した.ワクチン接種7日後のリンパ球数の低下は6例,上昇は2例に認めた.全例において麻疹抗体価の上昇は良好であった.


【原著】
■題名
急性巣状細菌性腎炎における腎臓の大きさの超音波法による検討
■著者
山形市立病院済生館小児科

秋場 伴晴  池田 博行  金井 雅代
笹  真一  鳥谷部美弥  坂本美千代
■キーワード
急性巣状細菌性腎炎,超音波法,腎臓の大きさ,腎臓の左右差
■要旨
 急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN)の小児20例を対象に,超音波法で腎臓の縦径と横径を計測し,AFBNにおける診断的有用性について検討した.男11例,女9例で,年齢は2カ月から14歳2カ月,中央値2歳11カ月であった.AFBNの診断は造影computed tomographyで腎臓に低吸収域を認めたものとした.正常対照群として123例の小児を用いたが,左右腎臓の縦径,横径のいずれもが身長と有意の正の直線関係を示した.そこで,AFBNにおける腎臓の径は,身長を変数とした相関式から予測される正常値に対する百分率で表した.腎臓の左右差は縦径,横径のいずれにおいても身長の大小にかかわりなく一定であった.これらの指標をAFBNに適応したところ,患側の腎臓の縦径,横径のいずれか,あるいは両者が正常よりも大きかったのは20例中16例であった.残り4例のうち1例は上部尿路感染症をくり返していた症例で,患側の腎臓は正常よりも小さく萎縮していた.ほかの3例は患側の腎臓の大きさは正常であった.一方,左右差は20例中17例で,縦径,横径のいずれか,あるいは両者で正常を上回っていた.これらをまとめると,腎臓の大きさや左右差で何らかの異常を呈したのは20例中19例であった.以上から,腎臓の大きさの異常や有意な左右差は,AFBNの存在を強く示唆する所見である.


【原著】
■題名
Lowe症候群3例の長期経過
■著者
駿河台日本大学病院小児科
三野輪 淳  大和田 操
■キーワード
Lowe症候群,長期経過,発育,尿細管機能,腎機能
■要旨
 Lowe症候群の3症例(男性2例,女性1例)における臨床経過を29〜31年に亘って追跡した.診断時,3例ともに本症に特徴的な眼症状,中枢神経症状および近位尿細管機能異常を認めたが,腎糸球体機能は正常であった.その後,10歳代後半になると糸球体障害が徐々に進行したが,30歳代になっても血清クレアチニン値は2〜3mg/dlに保たれている.一方,近位尿細管機能障害の進行度は再吸収を受ける物質の種類によってかなり異なっていたが,そのメカニズムについては明らかでない.3例の臨床的重症度にはかなりの差を認めたが,遺伝子変異との関連は見出せなかった.管理方法の進歩に従ってLowe症候群の長期生存例は今後増加すると考えられるが,その予後を改善するためには,個々の症例の情報を蓄積し,より良い管理方法を模索することが必要である.

【原著】
■題名
テレビ・ビデオの長時間視聴が幼児の言語発達に及ぼす影響
■著者
兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科1),岡山大学教育学部2),川崎医科大学小児科3)
加納 亜紀1)  高橋 香代2)  片岡 直樹3)
■キーワード
小児,テレビ,言語発達,長時間視聴,1歳6カ月児健康診査
■要旨
 1歳6カ月児健康診査対象児1,057名の養育者を対象(回収率73.4%)としてアンケート調査を行い,テレビ・ビデオ視聴時間と言語発達との関連を明らかにした.言語発達の評価は,「意味のある片言を2語以上言う(発言)」を基準とした.
 発語遅れの発生頻度は全体で4.3%(45/1,036例)であり,テレビ・ビデオ視聴が2時間未満で2.1%,2〜4時間で4.6%,4時間以上で9.6%と,視聴時間が長くなるほどに有意に高くなっていた.発語群と発語遅れ群の比較において,視聴時間の母平均の推定を行うと,95%の信頼区間で,発語群は上限2.1時間,発語遅れ群は下限2.2時間と,両群の視聴時間は約2時間を境界として差があることを認めた.
 発語に影響を及ぼす児の性別,月齢,養育環境,養育態度をマッチさせた症例対照試験で,症例群に有意に視聴時間が長い結果であった.また,2時間以上のテレビ・ビデオ視聴が有意に発語遅れの頻度を増していた.以上から,養育環境,養育態度に関わらず,2時間以上のテレビ・ビデオ視聴時間そのものが,1歳6カ月児の発語に影響を与えていることが明らかとなった.


【原著】
■題名
周産期医療施設における養育困難家庭への支援と
介入の試みに関する現状と課題
■著者
さいたま市立病院周産期母子医療センター小児科1),さいたま市立病院小児科2),獨協医科大学越谷病院小児科3)
本澤 志方1)3) 古庄 知己1)  森  和広1)  福家 智子1)
市川 知則1)  佐藤 清二2)  土屋 貴義3)  前山 克博1)
■キーワード
養育困難,虐待,養育放棄,乳児院,NICU
■要旨
 新生児治療病棟に入院した患者家族の中から,生活歴の聴取と家族との面談を通して,保護者と家庭環境に起因する養育困難家庭を発見し,関係行政機関と連携する試みを行った.平成13年10月から平成15年2月に同病棟へ入院中の患児355名336家族の内,双子2組を含む新生児7名(2.0%)5家族(1.5%)を養育困難可能性事例と判断し,関係機関に連絡した.養育困難理由は母の精神疾患2家族,高校生の母親1家族,養育能力の欠如1家族,生活困窮1家族であった.児童相談所等との協議によって,4家族6名は退院後に直接養育施設への入所が,また1家族1名は在宅での指導と監視が必要と判定された.入院中に養育施設の手配と家族の説得にあたった結果,要施設入所の4家族6名中3家族4名は乳児院へ入所したが,1家族2名は乳児院への入所を拒否した.後にこの家族は養育放棄と判定され,児らは児童相談所長の職権によって一時保護措置となった.保護者を説得し,施設入所等の療育支援や介入を開始するためには,入院期間を21〜81日延長する必要があった.新生児治療病棟における養育困難家庭のスクリーニングによって,養育介入を早期に開始する事が可能となるが,入院期間の短縮のためには,妊娠中から周産期施設と関係機関が連携し,家庭養育機能を評価する必要があると考えられる.


【原著】
■題名
短期入院の後に亡くなった児の家族への精神的サポートの検討(第1報)
■著者
横浜市立大学医学部小児科
西巻  滋  横田 俊平
■キーワード
乳幼児突然死症候群,インフルエンザ脳炎・脳症,グリーフケア,家族の会
■要旨
 目的:乳幼児突然死症候群(SIDS)やインフルエンザ関連脳炎・脳症,事故等で乳幼児が短時間で亡くなる場合の家族への精神的サポートの現状を把握する.
 方法:全国の100床以上の病床を有し小児科医が常駐する2,415の医療施設にアンケートを送り,1,070(44.3%)の施設からの回答を解析した.
 結果:医療施設の約26%で短期間の入院後に亡くなった児を経験していた.規模では300床以上の施設が約69%を占め,500床以上の施設も約36%であった.その症例の中でSIDSは約27%を占め一番多く,SIDSの約84%が300床以上の施設に,約55%が500床以上の施設に集中した.
 病状説明や死亡宣告に際し,小児科医の約43%は家族への精神的サポートを心掛けていなかった.逆に,小児科医の約53%が家族への精神的サポートを心掛けたが,自己評価では「やや不充分だった」「不充分だった」が約53%であり,一方,「充分に満足できた」「概ね満足できた」が約28%と少なかった.家族に充分な精神的サポートを提供するためには,主治医にその専門知識と家族に接する時間が必要であった.病状の説明や死亡宣告に際して,家族への精神的サポートをする専門職員が常勤している施設は7%のみであった.また専門職員のいない施設では,約83%がその配属の必要性を認識していた.
 亡くなってから約54%で家族からの連絡は途絶え,一方,約68%で病院からも連絡をしていなかった.その疾患の「家族の会」(例えば「SIDS家族の会」)等への紹介がなされたのは約11%であった.
 考察:医療施設における短期間の入院後に亡くなった児の家族への精神的サポートは満足できるものではない.グリーフケアには「家族の会」によるサポートも望ましく,医療施設との連携が大切である.


【原著】
■題名
Periodic Fever, Aphtous Stomatitis, Pharyngitis, and
Cervical Adenitis症候群の1例
■著者
札幌徳洲会病院小児科
大島 美保  岡  敏明  喜屋武 元
■キーワード
PFAPA症候群,周期性発熱,アフタ性口内炎,咽頭炎,頸部リンパ節炎
■要旨
 periodic fever,aphtous stomatitis,pharyngitis,and cervical adenitis(PFAPA)症候群は,周期的な発熱,アフタ性口内炎,咽頭炎,頸部リンパ節炎の頭文字に由来する乳幼児の周期性発熱の原因となる症候群である.他の周期性発熱症候群にくらべ予後良好な疾患で,多くは4〜8年で治癒するとされる.現在4歳の本症候群と思われる男児を経過観察中である.生後8カ月ころから主に1〜4週ごとに39〜40℃の発熱や口内炎,滲出性扁桃炎を繰り返している.発熱の間隔は平均21.7日で,発熱期間は平均4.4日,ibuprofen,cimetidine内服に効果はなく,発熱初期のprednisolone 1mg/kg/回内服で発熱期間や症状が軽症化した.発熱間欠期は健康で成長・発達,検査値に異常をみとめない.これまで日本での報告は1例にすぎないが,繰り返す発熱の原因疾患の1つとして考慮が必要である.


【原著】
■題名
小児期1型糖尿病におけるインスリンアスパルトのおやつ直前投与の有用性
■著者
大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学教室1),同 生活科学研究科長寿社会総合科学講座2),
寺田町子ども診療所3)
川村 智行1)  東出  崇1)  木村 佳代2)  稲田  浩1)
新平 鎮博2)  青野 繁雄3)  山野 恒一1)
■キーワード
超速効性インスリン,小児1型糖尿病,学童,おやつ前投与
■要旨
 当科外来通院中1型糖尿病患者のうち,昼前のインスリン注射を行っていない症例に対して,おやつ直前のインスリンアスパルト追加注射について血糖コントロールに対する影響をまとめたので報告する.
 対象は15歳以下の1型糖尿病患者(80名)のうち,昼食前のインスリン注射をしていない患者34名(男子11名,女子23名).年齢は3歳から14歳まで,平均年齢9.1±2.9歳,平均罹病期間は4.0±2.7年であった.
 方法:インスリンアスパルトを直前に注射後おやつを自由に食べるように指導した.
 結果:対象のうち11症例はおやつ前投与にレギュラーインスリンを注射していた.インスリンアスパルトに変更することでHbA1cは平均8.0±1.2%から6カ月後は7.4±1.1%に有意(P<0.05)に低下した.おやつ前インスリン投与をしていなかった9症例では,おやつ前のインスリンアスパルト投与により8.4±1.3%から6.9±1.1%に有意(P<0.05)に低下した.インスリンアスパルトが原因と見られる重症低血糖を起こしたものはなかった.追加打ちをしなかった14名の平均HbA1cは8.1±1.0%であった.
 結論:小児期1型糖尿病患者において,おやつ直前のインスリンアスパルト投与により血糖コントロールの悪化なくおやつが自由に食べられると推察する.


【原著】
■題名
化学療法が奏効した先天性ランゲルハンス細胞性組織球症の1例
■著者
昭和大学病院小児科1),総合高津中央病院小児科2)
藤井 隆成1)  今井 孝成1)  水野裕美子1)  阿部 祥英1)
子安ゆうこ1)  北林  耐1)  衣川 直子1)  星  義次2)
■キーワード
先天性ランゲルハンス細胞性組織球症,日本Langerhans細胞組織球症スタディーグループ(J-LSG)96プロトコール,multisystem/multi-sites型Langerhans Cell Histiocytosis
■要旨
 先天性のmultisystem/multi-sites(MM)型のLangerhans Cell Histiocytosis(LCH)で多剤化学療法が奏効した症例を経験したので報告した.症例は出生時より全身に水疱・血疱と紫斑があり,それらの皮膚所見は自然消退傾向を有していた.しかし,単純CT像で肺,肝,胸腺にも病変を認めたためJ-LSG-96プロトコールで多剤化学療法を施行し完全寛解が得られた.本症例では日齢早期に生検・画像によりMM型LCHの診断に至ることができ,治療が奏効した点で貴重な症例と思われた.先天性LCHのMM型における早期の画像診断および化学療法の重要性が示唆された.


【原著】
■題名
クロロキンが著効した特発性間質性肺炎の6歳男児例
■著者
旭川厚生病院小児科
小久保雅代  坂田  宏  佐藤  敬  梶野 真弓
白井  勝  石井 朋子  丸山 静男
■キーワード
特発性間質性肺炎,KL-6,SP-D,クロロキン,小児
■要旨
 特発性間質性肺炎を発症しステロイドパルス療法後,シクロスポリンとプレドニゾロンの併用を2カ月間行ったが改善せず呼吸不全が進行した6歳男児例を経験した.この症例に対しクロロキン10mg/kg/日分2の内服を開始後,乾性咳嗽が減少し酸素化は改善し1週間で酸素投与を中止できた.胸部X線・CT所見と呼吸機能は改善しステロイド内服を中止できた.経時的に測定した血液検査上のLDH,KL-6,SP-Dは症状の軽快に伴い低下し病勢マーカーとして有用であった.クロロキンは網膜症の副作用により1976年日本薬局方から削除された薬剤であるが,ステロイドや免疫抑制薬に難治性で肺移植しか手段がない場合も多い間質性肺炎に対して,小児の肺移植も困難な日本では限定した症例に対してクロロキンは有効な薬物療法の一つと考える.


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