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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:04.11.16)

第108巻 第10号/平成16年10月1日
Vol.108, No.10, October 2004


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第107回日本小児科学会学術集会
会頭講演
小児骨疾患の診断と治療の新しい展開
清野 佳紀 1185
会頭講演
急性肺障害における肺サーファクタントの不活化
横田 俊 平 1192
特別演題
小児用医薬品の承認審査
土田 尚 1201
原  著
1. 乳児早期の鶏卵アレルギーにおけるスクラッチテストの 遅発型反応の有用性について
楠目 和代 1205
2. 小児のネフローゼ症候群におけるシクロスポリン腎症発生危険因子に 関する検討
藤永周一郎,他 1211
3. 不妊治療を受けた両親における子への意識調査
立川 史美,他 1217
4. SLE様症状を呈したIgE抗体非依存性牛乳アレルギーの1例
小尾真喜子,他 1222
5. 先天性サイトメガロウイルス感染症の1例
和泉  啓,他 1226
6. 10歳を迎えた18トリソミー症候群の1女児例
梶原 眞人,他 1230
小児医療
富山県における小児救急医療の現状と問題点
三浦 正義,他 1234
地方会抄録
(福島,東京,鹿児島,山陰,島根,滋賀,千葉,甲信,鳥取,山口,富山)
1241
編集委員会への手紙
1279
日本小児科学会欧文誌編集委員会からのお知らせ
1280
小児科連絡協議会における少子化対策への提言
1281
第4回日本小児医学教育研究会ワークショップ記録─日米の小児科専門医教育の現状と将来
1285
日本小児科学会分科会活動状況
1317
日本小児科学会理事会議事要録
1318
お知らせ
1323
雑報
1324


【原著】
■題名
乳児早期の鶏卵アレルギーにおけるスクラッチテストの遅発型反応の有用性について
■著者
NTT西日本松山病院小児科
楠 目 和 代
■キーワード
アトピー性皮膚炎,鶏卵アレルギー,スクラッチテスト,遅発型反応,RAST
■要旨
 生後3カ月のアトピー性皮膚炎児46例を1歳まで観察し,3カ月時の卵白スクラッチテスト(即時型反応;IR,遅発型反応;LPR),3,6,9から12カ月の卵白RAST,1歳前の鶏卵負荷試験の結果を検討した.
 卵白RASTスコアはIR陽性群においてIR陰性群より3カ月時に有意に高く,LPR陽性群においてLPR陰性群より3カ月および6カ月時に有意に高かった.
 1歳前の鶏卵負荷テストの結果は,3,6カ月時の卵白RASTでスコア1以上を,9から12カ月の卵白RASTでスコア2以上を陽性とした場合に,卵白RASTの結果と有意に一致した.鶏卵負荷時の即時型全身反応陽性群では全身反応陰性群より,3カ月時のIR陽性率,LPR陽性率が有意に高かった.
 1歳前の鶏卵負荷テストにおける陽性反応の予測には卵白RASTが,全身反応の予測には3カ月時のIR,LPRが有用と考えられた.特に,3カ月時のLPRは,RASTに先行して陽性化し,1歳時の全身反応の予測にIRより鋭敏で,乳児の鶏卵アレルギーの診断に有用と思われた.


【原著】
■題名
小児のネフローゼ症候群におけるシクロスポリン腎症発生危険因子に関する検討
■著者
埼玉県立小児医療センター腎臓科1),順天堂大学浦安病院小児科2),日本大学医学部小児科3),順天堂大学医学部小児科4)
藤永周一郎1)  金子 一成2)  高田  大1)  宮村 正和1)
村上 仁彦3)  大友 義之1)  赤司 俊二1)  山城雄一郎4)
■キーワード
シクロスポリン,薬剤性腎障害,小児,ネフローゼ症候群
■要旨
 ステロイド依存性およびステロイド抵抗性のネフローゼ症候群(nephrotic syndrome:以下,NSと略)の小児22例にシクロスポリンA(Cyclosporine A:以下,CsAと略)を平均50.1カ月(6カ月から144カ月)の投与を行い,腎生検を行ったところ11例(50%)にCsAによる腎組織障害(以下,CsA腎症と略)を認めた.
 CsA腎症を認めた群(以下,CsAN[+]と略)は,認めなかった群(以下,CsAN[−]と略)に比較して有意にCsAの投与期間が長期(各群の中央値はそれぞれ28.1カ月および72.2カ月,p<0.01)であった.特に投与期間が3年以上の場合には,3年未満より有意にCsA腎症の合併が高率(3年以上:80% vs 3年未満:25%,p<0.05)であった.
 さらにCsAN[+]は,CsAN[−]と比較して有意にCsAの総投与量が多い(各群の中央値はそれぞれ9.3g/kgおよび3.7g/kg,p<0.01)ことも判明した.特に総投与量が5g/kg以上の場合には,5g/kg未満より有意にCsA腎症の合併が高率(5g/kg以上:80% vs 5g/kg未満:25%,p<0.05)であった.
 またCsAの投与開始年齢が4歳未満の小児においては,4歳以降に開始した小児に比較して平均トラフ濃度,投与期間,総投与量に差が認められないにも関わらずCsA腎症の出現頻度がより高率(4歳未満:71.4% vs 4歳以上:40%,p=0.18)であった.
 以上よりステロイド依存性NSにおいて低年齢からCsA治療を導入する場合,長期投与になりがちで総投与量も多くなることに加え,それ自体もCsA腎症の危険因子であることも示唆されるため適応を厳格にする必要があると思われた.


【原著】
■題名
不妊治療を受けた両親における子への意識調査
■著者
聖路加国際病院小児科
立川 史美  小澤 美和  草川  功  細谷 亮太
■キーワード
不妊治療,両親,育児不安,対児イメージ
■要旨
 体外受精児を持つ母親は,情緒面で母子相互作用に問題をおこしやすく,母子分離不安や過保護に陥りやすいと言われている.今回我々は,不妊治療後に子を授かった父母のわが子に対する不安やイメージ,愛着度等を調査した.
 調査対象は,不妊治療(人工受精21組,体外受精50組,ホルモン療法1組)を行って妊娠し,1995年から6年間に出生した児の両親72組を選んだ.また対照として,同時期に自然妊娠により出生に至った児の中から,母親の年齢,分娩方法,児の性別,初産であることをマッチングさせた174組を選んだ.上記両群にアンケート調査を実施し,回答を得たもののうち,前群に属するものを不妊治療群(父27名,母34名)とし,後群に属するものを対照群(父53名,母61名)とした.
 母親では,両群間に統計学的有意差はなかったが,父親では,不妊治療群で子への愛着が有意に低かった.さらに,社会的背景・周産期要因別に両群の比較検討を行ったところ,不妊治療群の父親において,「共働き」,「子育て支援がない」,「子の病気がある」場合に,育児不安が高く,「長時間勤務」,「子育て支援がある」,「挙児が第1子で1歳未満」の場合に,愛着が低かったなどに両群間の有意差が認められた.


【原著】
■題名
SLE様症状を呈したIgE抗体非依存性牛乳アレルギーの1例
■著者
SLE様症状を呈したIgE抗体非依存性牛乳アレルギーの1例
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科1),静岡市立清水病院小児科2)
小尾真喜子1)  齋藤  潤1)  吉田 隆實1)
島崎 紀子2)  上牧  務2)  木村 光明1)
■キーワード
ミルク,アレルギー,低補体血症,抗核抗体,SLE
■要旨
 SLE様症状を呈したIgE抗体非依存性牛乳アレルギーの1例を報告する.生後4カ月より咳嗽が続き,発熱,発疹を反復した.低補体血症を認め,抗核抗体と抗ds-DNA抗体が上昇していた.IgE-RASTは卵白,牛乳とも陰性だった.経過観察から絶飲食時に補体が上昇し,乳児用調製粉乳を経口摂取した時期に一致して補体が低下していることが判明し,牛乳アレルギーが疑われた.血清中に乳児用調製粉乳に対する沈降抗体が証明され,また牛乳蛋白に対するリンパ球増殖反応が亢進していた.ミルクをアミノ酸調製粉乳に変更してから,補体は正常化し,抗核抗体も徐々に低下した.以上の経過および検査所見からIII型およびIV型アレルギーが関与した牛乳アレルギーがSLE様症状の原因と考えられた.


【原著】
■題名
先天性サイトメガロウイルス感染症の1例
■著者
国立病院機構佐賀病院母子医療センター小児科1),長崎大学医学部小児科2),名古屋大学大学院医学研究科小児科学教室3)
和泉  啓1)2) 村田 紀子1)  光武 伸祐1)  山口 朋奈1)
横田 吾郎1)  江頭 昌典1)  高柳 俊光1)  管谷 直美3)
木村  宏3)  森内 浩幸2)
■キーワード
先天性サイトメガロウイルス感染症,ガンシクロビル,サイトメガロウイルスDNA定量
■要旨
 症例は在胎29週4日,出生体重1,516gの男児.胎児ジストレス,胎児水腫のため緊急帝王切開にて出生.生後より進行性の血小板減少と貧血,肝脾腫を認め,臍帯血サイトメガロウイルス(CMV)-IgM抗体陽性より先天性サイトメガロウイルス感染症と診断した.本症例に対し日齢32よりガンシクロビルを計6週間投与し,効果判定のためリアルタイムPCR法を用いて,尿及び血漿中のCMV-DNA量の経時的な定量を行った.その結果,投与開始後4週以降には血漿・尿ともにCMV-DNAは消失した.しかし貧血,血小板減少,肝脾腫は持続し,臨床症状の改善は得られなかった.最終的に児は肺炎から多臓器不全に陥り,日齢87に死亡した.本症例では,サイトメガロウイルス感染症以外の何らかの異なる病態が合併していた可能性も否定できないが,尿及び血漿のCMV-DNA量が必ずしも本症の病勢を反映しない可能性もあり,今後の症例の集積が必要と思われる.

【原著】
■題名
10歳を迎えた18トリソミー症候群の1女児例
■著者
大分県立病院新生児科1),大分県立病院小児科2)
梶原 眞人1)  手島 千鳥1)  宮脇 貴史1)  竹内 山水1)
園田 和孝1)  井上 和彦1)  飯田 浩一1)  玉井 友治2)
岩松 浩子2)  井上 敏郎2)
■キーワード
18トリソミー症候群,長期生存,知的障害,成長障害,モザイク
■要旨
 IQが38と中等度の知的障害はあるものの,歩行可能であり,成長障害も軽度で,順調に成長発達を続けている,18トリソミー症候群の10歳女児例を報告する.モザイクの可能性は否定できないが,末梢血リンパ球を用いたG-バンド法,FISH法,SKY法から,47,XX,+18と診断した.18トリソミー症候群の診断と両親への説明に当り,これまでのような悲観的な話だけではなく,個々の症例に合った,感性豊かな,柔軟性のある対応とサポートが求められる.


【小児医療】
■題名
富山県における小児救急医療の現状と問題点
■著者
富山市民病院小児科1),黒部市民病院小児科2),富山赤十字病院小児科3),厚生連高岡病院小児科4),
市立砺波総合病院小児科5),富山医科薬科大学小児科6)
三浦 正義1)  上勢敬一郎2)  村上 巧啓3)  琉罅\欺4)
住田  亮5)  足立 雄一6)  宮脇 利男6)
■キーワード
小児救急,地域医療,医療圏
■要旨
 小児救急医療の問題点が指摘されてから久しいが,未だに明確な解決策は示されていない.その理由のひとつとして,救急医療を支える設備ならびに人的な環境が地域毎に大きく異なっていることが挙げられる.今回,1地方県である富山県における現状を明らかにした上でその問題点を抽出するために,4医療圏毎にその状況を検討した.救急体制が整っている2医療圏では,初期救急医療機関が十分に機能しているとは言えず,輪番制を行っている二次救急医療施設に直接来院する患者数が年々増加し,特に夜間にその傾向が強かった.一方,救急体制が整備されていない2医療圏では,在宅当番医制など初期救急体制が殆ど機能しておらず,基幹病院に患者が集中する傾向が年々強まっていた.勤務医の労働条件は,全ての医療圏において過重であった.以上より,全体としては小児科医数の絶対的不足が問題となるが,解決策を模索する際には地域毎の実情に合わせた対応が必要と考えられた.


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