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日本小児科学会雑誌 目次 |
第108巻 第9号/平成16年9月1日
Vol.108, No.9, September 2004
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【原著】 |
■題名 |
食物アレルギー児に対する外来での耐性獲得の検討 |
■著者 |
公立南丹病院小児科1),京都府立医科大学小児科2)
青山三智子1)2) 細井 創1)2) 高屋 和志1)
山本 徹1) 杉本 徹2) |
■キーワード |
食物アレルギー,食物除去,制限解除,食物負荷試験 |
■要旨 |
2001年1月から2002年2月までに,当科アレルギー外来で食物負荷試験を施行した9例について,臨床経過と負荷試験の結果を検討した.対象は1歳以上の小児で特異IgE抗体検査,ヒスタミン遊離試験(HRT)を行い,その結果と病歴を参考に,負荷の適応と負荷食物を決定した.延べ20回の食物負荷試験のうち1回に即時型アレルギー反応を認めた.アレルギー反応を呈した症例は,同じ負荷食物で乳児期にアナフィラキシーを来たした既往があった.その他8症例では症状を認めなかった.アウトグローしている症例に対し必要以上に厳格な食物除去を強いることは避けるべきであり,食物アレルギー児の耐性獲得について経時的に確認することが必要である.
HRTは生体に近い反応を再現できると報告されており,病歴,特異IgE抗体検査,HRTを検討することで,より早期から安全に食物負荷試験を実施できると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
乳児RSウイルス細気管支炎症例に対するデキサメサゾン単回皮下注射の入院抑止効果
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■著者 |
横浜南共済病院小児科
成相 昭吉 石田 華 藤田秀次郎
菅井 和子 鏑木 陽一 池部 敏市
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■キーワード |
外来,RSウィルス細気管支炎,デキサメサゾン皮下注射,入院抑止効果,リスクマネージメント
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■要旨 |
咳と喘鳴,呼吸困難を認めたRSV細気管支炎症例に外来においてデキサメサゾン0.4mg/kg単回皮下注射を行い,その入院抑止効果について検討した.2002年10月から2003年4月までに鼻腔洗浄液抗原検索により診断した2歳未満RSV細気管支炎症例は60例(平均年齢8.0カ月),初診時入院とならなかった52例のうち親の同意を得て仮性クループの治療に準じデキサメサゾン皮下注射を行ったのは18例,非投与例は34例であった.デキサメサゾン投与は第3〜5病日であった.その後の入院率は非投与群58.8%に対し,投与群は16.7%で有意に低かった.外来においてRSV細気管支炎症例に病期の早い段階でデキサメサゾンを投与すると,その抗炎症効果により病状の進展が抑制され入院率の減少が期待できる可能性がある. |
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【原著】 |
■題名 |
RSウイルスによる乳幼児下気道感染症の検討 |
■著者 |
愛知県厚生連昭和病院小児科
辻 健史 西村 直子 武藤太一朗 菅田 健
河邉 慎司 後藤 研誠 尾崎 隆男
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■キーワード |
RSウイルス,下気道感染症,迅速診断,CF抗体 |
■要旨 |
RSウイルス(RSV)感染症は,乳幼児下気道感染症の最も重要な起因病原体であり,我が国における現在の流行状況と病状の把握を試みた.平成14年9月1日から平成15年8月31日までの1年間に,昭和病院小児科に入院した3歳未満の下気道感染症患児を対象として前方視的に調査を行った.全例に対し,入院時に迅速診断キットを用いてRSV抗原検出を行い,さらに入・退院時のペア血清を採取してRSVCF抗体を測定した.抗原検査陽性,抗体陽転または4倍以上の抗体価上昇のいずれかを示したものをRSV感染症と診断した.調査期間中に304例が下気道感染症で入院し,そのうち21.3%(66例)がRSV感染症であった.RSV感染症は12月をピークとし冬季に多く発生したが,例数は少ないものの8月をのぞく全ての月で認められた.RSV感染症は非RSV感染症と比べて,喉頭炎が少なかった.RSV感染症による喘鳴を伴う気管支炎は1歳未満に多かったが,加齢とともに肺炎の割合が増加した.RSV感染症において,1歳未満と1歳以上との間に抗原検出率および抗体反応に明白な違いを認めた.1歳以上のRSV感染症の診断には,ペア血清による抗体検査が必要と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
クループに対するデキサメサゾン経口療法の臨床研究 |
■著者 |
国立成育医療センター救急診療科1),同 総合診療部2)
清水 直樹1) 上村 克徳1) 北澤 克彦1)
阪井 裕一1) 高山ジョン一郎2)
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■キーワード |
クループ,デキサメサゾン,経口,小児救急,症例対照研究 |
■要旨 |
目的:クループに対するデキサメサゾン経口療法の有用性を検討する.
研究デザイン:後方視的症例対照研究.
施設:小児救急センター単一施設.
対象:2002年3月から2003年5月までの15カ月間に,当施設を受診したクループ83症例.
方法と結果:83症例中,デキサメサゾンの静脈内投与をした4症例は除外した.デキサメサゾン経口投与群31症例に対し,デキサメサゾン投与をしていないコントロール群は48症例であった.両群間の年齢差はなく,重症度は前者で高かった.重症度スコアにより軽症群と重症群とに層別した上で,デキサメサゾン経口療法の有無により入院率,再来率などの治療後転帰に差があるか否かをχ2検定で検討した.軽症群におけるp値は0.508であったが,重症群では0.036と統計学的有意差を認めた.
結論:小児救急センターにおけるクループに対するデキサメサゾン経口療法は,重症群において治療後転帰を改善させた.従来の本邦における管理方針では入院になっていた症例であっても,その一部は外来管理可能なことが示された.
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【原著】 |
■題名 |
無痛性甲状腺炎からバセドウ病に移行した1例 |
■著者 |
琉球大学小児科
渡久地鈴香 太田 孝男
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■キーワード |
甲状腺中毒症,バセドウ病,無痛性甲状腺炎 |
■要旨 |
甲状腺中毒症患者においてバセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別は治療方針の決定のため重要である.今回我々は無痛性甲状腺炎の病態を呈した後バセドウ病に移行した1女児例を経験したので報告する.症例は9歳女児,前医で“甲状腺機能亢進症”と診断されたが無治療で5カ月間経過観察されたのち,精査目的に当科紹介となる.当科初診時には,甲状腺機能低下を認め,超音波検査では甲状腺のびまん性腫大と,左葉内の低エコー領域を認めた.99mTcO4 −シンチグラムでは甲状腺の99mTcO4 −摂取率は軽度増加していた.抗サイログロブリン抗体,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体,甲状腺刺激抗体はいずれも高値であった.無治療でさらに経過観察したところ約3カ月後に再び甲状腺中毒症を呈し,123I摂取率は74.5%(24時間値)と高値であった.thiamazole(MMI)による治療を開始し,約2カ月で甲状腺機能は正常化した. |
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【原著】 |
■題名 |
5818delG遺伝子変異を認めたMYH9異常症の1例 |
■著者 |
松下記念病院小児科1),京都府立医科大学小児科2),名古屋大学医学部附属病院血液内科3),
国立名古屋病院臨床研究センター止血血栓研究部4)
横井健太郎1)吉原 隆夫1)中瀬 葉子2)
中井 倫子1)今村 俊彦1)石田 宏之1)
粕淵 康郎1)松下 正3)国島 伸治4)
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■キーワード |
MYH9異常症,May-Hegglin anomaly,血小板減少,巨大血小板,D★hle小体類似封入体 |
■要旨 |
症例はアレルギー検査の際,偶然血小板減少に気付かれた1歳の男児.末梢血塗沫標本で巨大血小板と顆粒球細胞質内にD★hle小体類似封入体を認めた.nonmuscle myosin heavy chain IIAをコードするMYH9遺伝子の解析で5818delGの変異を認めた.近年,May-Hegglin anomalyをはじめとする巨大血小板性血小板減少症は共通して MYH9 遺伝子の変異を認め,MYH9 異常症(MYH9 disorder)と包括して呼ばれるようになってきており,本症例もMYH9異常症として報告する. |
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