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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:04.09.08)

第108巻 第8号/平成16年8月1日
Vol.108, No.8, August 2004


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総  説
1. 漢方治療のすすめ
崎山 武志 1019
2. Duchenne型筋ジストロフィーを中心とした神経筋疾患の呼吸管理の現状
多田羅勝義 1027
原  著
1. 食物アレルギー児に対する外来での耐性獲得の検討
青山三智子,他 1034
2. 大動脈弁狭窄に対する経皮的バルーン大動脈弁形成術の短・中期予後
林  香織,他 1038
3. 川崎病年長例の検討―第16回全国調査より
阪上 尊彦,他 1043
4. 心タンポナーデにより発見されたイヌ回虫症の1例
鳴海 洋子,他 1047
5. ガンシクロビル投与後難聴が改善した先天性サイトメガロウイルス感染症の2例
伊藤 瑞恵、他 1051
短報
1. 小児のアディポネクチン値
門脇 弘子,他 1056
2. 長期抗生剤投与により低カルニチン血症を来たしたと考えられた1例
寺岡 通雄,他 1059
3. グルコース6リン酸脱水素酵素異常症Viangchan変異の母子例
野末 裕紀,他
1062
地方会抄録
(徳島、青森、京都、宮城、愛媛、福岡)
1065
編集委員会への手紙
1085
認定医にゅーす No.39 モデル問題集の改訂
1085
医薬品・医療用具等安全性情報 No.202
1018
日本小児科学会分科会一覧
1086
日本小児科学会分科会活動状況
1087
雑報
1093
医療品・医療用具等安全性情報 No.203
1094


【原著】
■題名
食物アレルギー児に対する外来での耐性獲得の検討
■著者
公立南丹病院小児科1),京都府立医科大学小児科2)
青山三智子1)2) 細井  創1)2) 高屋 和志1)
山本  徹1)  杉本  徹2)
■キーワード
食物アレルギー,食物除去,制限解除,食物負荷試験
■要旨
 2001年1月から2002年2月までに,当科アレルギー外来で食物負荷試験を施行した9例について,臨床経過と負荷試験の結果を検討した.対象は1歳以上の小児で特異IgE抗体検査,ヒスタミン遊離試験(HRT)を行い,その結果と病歴を参考に,負荷の適応と負荷食物を決定した.延べ20回の食物負荷試験のうち1回に即時型アレルギー反応を認めた.アレルギー反応を呈した症例は,同じ負荷食物で乳児期にアナフィラキシーを来たした既往があった.その他8症例では症状を認めなかった.アウトグローしている症例に対し必要以上に厳格な食物除去を強いることは避けるべきであり,食物アレルギー児の耐性獲得について経時的に確認することが必要である.
 HRTは生体に近い反応を再現できると報告されており,病歴,特異IgE抗体検査,HRTを検討することで,より早期から安全に食物負荷試験を実施できると考えられた.


【原著】
■題名
大動脈弁狭窄に対する経皮的バルーン大動脈弁形成術の短・中期予後
■著者
札幌医科大学小児科学講座
林  香織  富田  英  布施 茂登  畠山 欣也
久保 憲昭  高室 基樹  堀田 智仙  堤  裕幸
■キーワード
大動脈弁狭窄,経皮的バルーン大動脈弁形成術,先天性心疾患,インターベンション
■要旨
 1987年から1999年までに大動脈弁狭窄を有する症例に施行した経皮的バルーン大動脈弁形成術(Balloon aortic valvuloplasty:BAV)の短・中期予後について検討した.
 施行した12症例に対する19回のBAVのうち,解析に必要なデータがそろった12例17回について検討した.
 初回BAVが11回,再BAVが6回であった.初回BAVで圧較差は施行前69±13mmHgから施行後38±10mmHgに有意に低下した(ANOVA;F(10,69)=6.74,p<0.001).再BAVで圧較差は73±10 mmHgから46±18 mmHgに低下した.
 初回BAV後,再治療不要率は60カ月の前後で90%から30%に急降下した.再BAVでは70%の症例で96カ月間再治療不要であった.初回BAV後と再BAV後の再治療不要期間に差は認めなかった(p=0.4).BAV前後で大動脈弁逆流の出現又は増悪を6回(35%)で認めたが経過観察期間中の進行は認めなかった.
 以上より,初回BAVの効果は4年間持続し,再BAVにおいても同様に効果が持続すると考えられた.


【原著】
■題名
川崎病年長例の検討―第16回全国調査より
■著者
久留米大学医学部医学科1),久留米大学小児科2),自治医科大学公衆衛生学3),埼玉県立大学4)
阪上 尊彦1)  牟田 広実2)  石井 正浩2)  江上 公康2)
古井  潤2)  菅原 洋子2)  赤木 禎治2)  中村 好一3)
柳川  洋4)  松石豊次郎2)
■キーワード
川崎病,年長例,心血管障害
■要旨
 第16回川崎病全国調査成績を用いて,年長例(6歳以上)の心血管後遺症について調査した.6歳未満の症例と比較し,/巴琶類に差はみられなかった.⊇蘓任遅くなっており,再発例が多かった.ガンマグロブリン(GG)の投与された割合が少なく,治療開始が遅くなっていたが,GG投与法(総投与量および投与日数)については,有意差はなかった.た慣豐標絨箴匹粒箙腓詫意に高かった.年長例すなわち乳幼児期をすぎて発症することは心血管後遺症の危険因子と考えられた.


【原著】
■題名
心タンポナーデにより発見されたイヌ回虫症の1例
■著者
青森労災病院小児科1),さしなみ小児クリニック2)
鳴海 洋子1)  大高 雅文1)  金城  学1)  差波  司2)
■キーワード
心タンポナーデ,イヌ回虫,幼虫移行症,好酸球増多
■要旨
 イヌ回虫は主にイヌを固有宿主とする寄生虫である.従ってヒトに感染した場合,幼虫のまま長期間生存して体内各臓器に移動する幼虫移行症を呈する.その臨床症状は多岐にわたり,侵入部位により肝機能障害,呼吸器,眼症状を呈する報告が多い.今回,われわれは心タンポナーデにより発見されたイヌ回虫症の13歳女児例を経験したので報告する.主訴は嘔気,心窩部痛.血液検査上,肝機能障害を認め,また心エコーおよびCTにて多量の心嚢液貯留,脈圧の減少を認め心タンポナーデと診断し,心嚢ドレナージを施行した.その後速やかに症状は消失したが,肝機能障害持続,次第に好酸球増加が顕著となった.各種ウイルス抗体価や骨髄像は正常であったが,ELISA検査にて血清および心嚢液の特異的イヌ回虫抗体の著しい高値を認めた.以上よりイヌ回虫感染と診断した.イヌ回虫感染によって循環器症状を呈した報告は少なく,今回の症例は興味深い1例と考えられた.


【原著】
■題名
ガンシクロビル投与後難聴が改善した先天性サイトメガロウイルス感染症の2例
■著者
弘前大学医学部附属病院小児科
伊藤 瑞恵  福山 優子  藤田 浩史  伊藤 悦朗
■キーワード
先天性サイトメガロウイルス感染症,ガンシクロビル,難聴
■要旨
 先天性症候性サイトメガロウイルス感染症は感音性難聴を合併し,かつその難聴は進行性といわれる.ガンシクロビルによる治療は,脈絡網膜炎,肝炎,凝固障害などの急性期症状に対して有効とされるが,聴力障害に関しては一定の見解は得られていない.今回我々は,2例の先天性症候性サイトメガロウイルス感染症に対し生後早期よりガンシクロビル投与を行い,血液検査データ,急性期症状の改善を認めた.さらに,生後1〜2カ月時に認めていた聴性脳幹反応の高度異常も,治療終了後著明に改善した.早期のガンシクロビル投与は聴力の改善にも有効であった可能性が高く,聴力検査をふまえた疾患の早期診断・治療が予後を改善する可能性があると思われた.

【短報】
■題名
小児のアディポネクチン値
■著者
朝日生命糖尿病研究所1),調布東山病院小児科2),日本医科大学小児科3),埼玉小児医療センター4)
門脇 弘子1)2) 大木由加志3)  望月  弘4)
■キーワード
アディポネクチン,糖尿病,肥満,インスリン抵抗性,脂肪萎縮性糖尿病
■要旨
 Adiponectin(以下,アディポネクチン)は,脂肪組織に特異的に発現する分泌蛋白の1つである.肥満,糖尿病,高脂血症,高血圧と関連があると言われている.今回,我々は正常小児のアディポネクチン平均値,小児2型糖尿病,小児肥満,さらに特殊な脂肪萎縮性糖尿病における血中アディポネクチン値を測定した.
 正常小児におけるアディポネクチン値を年齢と性差で分けた平均値をみると,9歳未満で高い傾向があり,特に女子の方が高く,9歳から20歳にかけて低くなる傾向がある.正常小児平均値は11.85μg/ml(n=193)であった.小児2型糖尿病と小児肥満では低値,さらに脂肪萎縮性糖尿病では,3.20μg/ml(n=8)で著明低値であった.
 アディポネクチンの血中レベルの低下はインスリン抵抗性を介して2型糖尿病や動脈硬化を増悪させる1).血中アディポネクチン値の測定は,生活習慣病発症の1つの遺伝素因として既に内科で発表があり,各発達段階における小児においても意義があると思われる.


【短報】
■題名
長期抗生剤投与により低カルニチン血症を来たしたと考えられた1例
■著者
日本鋼管福山病院小児科1),千葉大学大学院医学研究院小児病態学2),福井医科大学医学部看護学科3)
寺岡 通雄1)  和田 智顕1)  小倉 和郎1)
安原 伸吾1)  喜多村哲朗1)  村上 暢子1)
伊藤  滋1)  金澤 正樹2)  重松 陽介3)
■キーワード
カルニチン,ピボキシル基,低ケトン性低血糖症,脂肪酸代謝異常
■要旨
 ピボキシル基をもつ抗生剤を長期間投与したことによる,低カルニチン血症が要因となり,低血糖症をきたした1例を経験した.これらの抗生剤の長期投与には注意が必要であると考えられる.


【原 著】
■題名
グルコース6リン酸脱水素酵素異常症Viangchan変異の母子例
■著者
筑波メディカルセンター病院小児科1),筑波大学臨床医学系小児科2)
野末 裕紀1)  鴨田 知博2)  一色 伸子1)
青木  健1)  市川 邦男1)
■キーワード
グルコース6リン酸脱水素酵素異常症,溶血性貧血,ソラマメ,favism
■要旨
 ソラマメ摂取後に溶血発作(favism)をきたすG6PD異常症の日本人例の報告は少ない.症例は3歳男児,ソラマメ摂取2日後に急性溶血発作を生じた.高度の貧血のため呼吸障害を伴い緊急輸血された.輸血後の経過は順調で入院5日目に退院した.赤血球G6PD酵素活性は正常の10%以下でG6PD異常症と確定した.家族内で遺伝子解析を行った結果,患児と母親にG6PD Viangchan変異(871 G→A)が認められた.遺伝子解析は家族内の保因者を同定できるだけでなく,輸血後でも早期に診断が確定できるため有用であった.急性溶血発作の発症前にソラマメ摂取歴があり,両親のいずれかがG6PD異常症の頻度の高い地域からの外国人であれば,G6PD異常症を鑑別として念頭におくべきである.


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