gakkaizashi

 


日本小児科学会雑誌 目次

(登録:04.08.05)

第108巻 第7号/平成16年7月1日
Vol.108, No.7, July 2004


バックナンバーはこちら


タイトルをクリックすると要旨をご覧になれます。

総  説
1. 小児白血病の成因
石井 榮一 949
2. 小児の慢性咳嗽の診断と治療
望月 博之,森川 昭廣 956
原  著
1. 抗RSウイルス抗体Palivizumabの臨床使用初年度の効果と問題点
高橋 尚人,他 965
2. 小児および成人麻疹患者の臨床像の比較検討
藤巻 英彦,他 971
3. 迅速診断法で診断した溶連菌性膿痂疹35人の検討
─溶連菌性膿痂疹とアトピー性皮膚炎との関連について
植村幹二郎,他 975
4. Chlamydia pneumoniae抗体価の上昇を認めた円形肺炎の1例
鈴木 大介,他 979
5. チアノーゼを残したまま成人期に達した先天性心疾患症例の検討
坂崎 尚徳 983
6. 神経性食欲不振症様症状を呈した男児例の検討
江上美矢子,他 988
7. 小児難治てんかんに対する新プロトコールリポステロイド療法
宮本 雄策,他 993
8. Dib血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患の1例
市川 知則,他
997
小児医療
地方大学附属病院における小児救急医療体制の問題点
末延 聡一,他 1001
地方会抄録
(栃木,京都)
1006
雑報
1014
お知らせ
1016
医薬品・医療用具等安全性情報 No.202
1018


【原著】
■題名
抗RSウイルス抗体Palivizumabの臨床使用初年度の効果と問題点
■著者
自治医科大学小児科1),福島県立医科大学総合周産期センター2)

高橋 尚人1)  氏家 二郎2)  矢田ゆかり1)
本間 洋子1)  桃井真里子1)
■キーワード
RSウイルス,Palivizumab,抗RSウイルス抗体,効果,問題点
■要旨
 本邦でも2002年の秋から早産児および慢性肺疾患合併の児に対し,RSウイルス感染による重症下気道疾患発症抑制の目的で,抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体palivizumabの臨床使用が可能になった.今回,その臨床使用初年度の有効性と問題点を把握する目的で全国アンケート調査を行った.回収率47.9%で,3,906名の乳幼児に薬剤が投与されていた.特に在胎週数の若い早産児には積極的に投与されたと推測される.投与開始月は10月と11月で87%を占め,投与終了月は2/3にのぼる症例が3月であった.投与を受けた児のRSウイルス感染による再入院率は,各層毎において海外の報告と同様1〜2%程度で,ほぼ予想通りの有効性を示したと考えられる.問題点として,病院関係者に薬剤の特殊性が理解されていなかったこと,新たな業務負担になっていたこと,高価な薬剤ながら外来包括化により保険請求できないこと,家族に一時立替え払いが生じたこと,保健所などへの周知がなされていなかったことなどが挙げられた.次年度も投与を継続する施設が88%にのぼっており,今後,費用対効果を含め,palivizumabのより良い使用法について検討されるべきと考えられた.


【原著】
■題名
小児および成人麻疹患者の臨床像の比較検討
■著者
稲沢市民病院小児科1),埼玉県立小児医療センター未熟児新生児科2)
藤巻 英彦1)  柳瀬陽一郎1)  城所 博之2)
■キーワード
麻疹,C‐reactive protein,肝障害,secondary vaccine failure
■要旨
 2001年度,稲沢市周辺において小児と共に成人の麻疹患者が多数発生した.小児患者との臨床的検討を行い,成人麻疹の特徴を示し将来の対策を考えた.全患者183名(小児群119名,成人群64名)の内,入院患者123名(小児群78名,成人群45名)の血液検査,有熱期間を検討した.成人群では有意に血小板数が低く,ALT・CRPは高く,有熱期間が長かった.また成人群全64名の内,ワクチン接種歴が判明した25名中,血液検査の未施行や臨床経過が不明なため検討不能な8名を除いた17名をワクチン接種の有無(未接種10名,既接種7名)に分け検討した結果,ワクチン未接種者の方がCRPや有熱期間に有意差を認めなかったものの,AST・ALTが有意に上昇していた.以上から,)秧召殆躊気垢襪半児と比べ成人が,また成人内では未接種者の方に肝障害を強く認めること,既接種者の成人でも麻疹に感染する機会が十分にあることが示された.また成人の既接種者が未接種者と比べ肝障害以外の検査結果や有熱期間に差が無かったことは,幼少期のワクチン接種によって産生された抗体がどの程度維持されたか疑問であり,今後はさらなる成人患者の増加が懸念される.現行の接種方式では麻疹の拡大を阻止できない可能性がある.


【原著】
■題名
迅速診断法で診断した溶連菌性膿痂疹35人の検討
―溶連菌性膿痂疹とアトピー性皮膚炎との関連について―
■著者
うえむら小児科内科クリニック1),
神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻環境応答医学講座環境医学教育研究分野2)
植村幹二郎1)  西尾 久英2)
■キーワード
溶連菌,迅速診断,膿痂疹,アトピー性皮膚炎
■要旨
 溶連菌性膿痂疹がアトピー性皮膚炎の増悪を来たすことはよく知られている.1996年から2003年の7年間に迅速診断法で診断した溶連菌性膿痂疹35人を経験した.28人(80%)が基礎にアトピー性皮膚炎があり,10人(29%)に溶連菌性膿痂疹の2〜6回の再感染をみた.家族内での感染例も多くみられた.次に,35人の患児における合計60回の感染のエピソードを検討した.溶連菌性膿痂疹は5月から9月の,我々の地方では非常に暑く多湿である季節によくみられ,病変は上下肢や頭部の露出部分に好発した.14例が発熱と咽頭発赤の両方を認め,咽頭¥外字(9158)桃の迅速診断は全て陽性であった.結論として,溶連菌性膿痂疹はアトピー性皮膚炎の児に罹患しやすく,溶連菌性膿痂疹の診断に迅速診断は有用であった.


【原著】
■題名
Chlamydia pneumoniae抗体価の上昇を認めた円形肺炎の1例
■著者
市立札幌病院小児科
鈴木 大介  鴨志田久子  古田 博文
内藤 広行  福島 直樹  富樫 武弘
■キーワード
円形肺炎,肺腫瘍,肺生検,C. pneumoniae感染症
■要旨
 円形肺炎は胸部レントゲン写真や胸部CTにて肺野に辺縁明瞭な腫瘤状陰影を呈することが特徴であり,その形態から腫瘍性病変との鑑別が必要である.今回我々は胸部レントゲン写真上肺野に円形陰影を孤立性に2カ所に認め,肺生検が他疾患との鑑別に有用であった11歳男児例を経験したので報告する.症状は乾性咳嗽のみであった.各種の腫瘍マーカーは陰性であった.入院後腫瘤は増大傾向を示したため肺生検を施行した.病理所見ではHE染色にて肺胞壁が肥厚しており形質細胞を主体とする細胞浸潤を伴っていた.急性期と回復期の血清にてC. pneumoniaeの抗体価の有意な上昇を認めた.以上の所見からC. pneumoniae感染による円形肺炎と診断した.


【原著】
■題名
チアノーゼを残したまま成人期に達した先天性心疾患症例の検討
■著者
兵庫県立尼崎病院心臓センター小児部
■キーワード
チアノーゼ性心疾患,成人期,姑息手術,経皮酸素飽和度,赤血球増多症
■要旨
 当院で18歳以降も経過観察されたチアノーゼ性心疾患症例27例を対象とし,生存および罹病状況を調べた.さらに,15歳時と最終受診時における経皮酸素飽和度(SpO2),心胸郭比(CTR),血液検査所見等を調べた.5例が心室細動や多臓器不全等により死亡した.最終受診年齢は平均25歳(19〜33歳),最終受診時のCTRは15歳時に比べ有意に大きく,心室性不整脈が増加し,Ability indexは9例で悪化した.18歳以降の合併症は,脳膿瘍,肺塞栓,腎機能障害等であった.生存例と死亡例の比較では,15歳時の赤血球数,血小板数の平均値と,最終受診時のSpO2,CTR,赤血球数等に有意差を認めた.小児期の慢性の低酸素状態が成人期の生命予後に影響を及ぼす可能性が示唆される.

【原著】
■題名
神経性食欲不振症様症状を呈した男児例の検討
■著者
日本大学医学部小児科
■キーワード
摂食障害,神経性食欲不振症,男児,若年発症,脳腫瘍
■要旨
 1993年から10年間に食欲不振と体重減少を主訴に日本大学医学部附属板橋病院小児科および練馬光が丘病院小児科へ入院した男児9例の臨床的特徴を検討した.最終診断は,神経性食欲不振症2例,特定不能の摂食障害6例,脳腫瘍1例であった.発症年齢は11.4±1.8歳で,入院期間は神経性食欲不振症例で長期間を要した.発症から受診までの期間が長い症例では頭部CTで脳退縮がみられた.学業成績に関しては一定の傾向は見いだせなかった.家庭環境では問題をかかえていることが多く,食へのこだわり,やせ願望は神経性食欲不振症症例にみられた.血液・内分泌学検査では検査を行った症例の多くで異常値を認めた.
 脳腫瘍1例を除いた8例は全例予後良好で,再発例は現在までない.
 男児では神経性食欲不振症と診断される症例は少なく,食欲不振,体重減少など神経性食欲不振症様症状を疑う症例ではまず脳腫瘍などの器質的疾患を否定する必要があると考えられ,残りの多くは心因反応が関与していると考えられる.


【原 著】
■題名
小児難治てんかんに対する新プロトコールリポステロイド療法
■著者
聖マリアンナ医科大学小児科1),同 横浜市西部病院小児科2)

宮本 雄策1)  山本  仁1)  福田 美穂1)
村上 浩史1)  神山 紀子1)  小板橋 靖1)
栗原八千代2)  加藤 達夫2)
■キーワード
難治てんかん,West症候群,リポステロイド療法,副作用,新プロトコール
■要旨
 West症候群において,初発の1例とACTH療法後に再発した2例の難治性全般てんかんの計3例に対し,従来のプロトコールを改訂したリポステロイド(LS)療法を施行した.投与量及び回数は0.25mg/kg/doseのLSを,従来の計7回投与から計12回静脈内投与に増量した.効果は初発の1例では発作の消失及び脳波所見の著明な改善を認めた.再発の1例では発作の50%以上の減少及び脳波所見の改善がみられたが,再発のもう1例では発作及び発作波とも不変であった.投与中及び投与後に明らかな副作用はみられなかった.又,従来法に比べて効果判定が早く出来ると思われた.他に有効な方法がない例や,既存の療法で副作用が疑われる症例にLS療法は有用であり,投与回数を増加した新プロトコールにおいても安全に施行出来ると考えられた.


【原 著】
■題名
Dib血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患の1例
■著者
さいたま市立病院周産期母子医療センター小児科1),さいたま市立病院小児科2)
市川 知則1)  本間 英和1)  本澤 志方1)
福家 智子1)  草野  亨1)  森  和広1)
前山 克博1)  辻  敦敏1)  佐藤 清二2)
■キーワード
Diego式血液型,抗Dib抗体,新生児溶血性疾患,交換輸血
■要旨
 Dib血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患を経験した.母親の不規則抗体は出生前に検出されたが,抗体の同定は実施されなかった.生後8時間に血清総ビリルビン値13.0mg/dlを認め,当センターに緊急入院した.クームス試験は直接法および間接法ともに陽性で,血液型は母児共にB型RhD(+)CCDeeであった.同日中に,ABO,Rh同型の血球と血漿による交換輸血を施行し,γグロブリン投与と光線療法の併用により後障害なく軽快した.入院翌日,母親はDiego式血液型Dib(−),抗Dib抗体(+),児はDiego式血液型Dib(+)と判明した.抗Dib抗体のように希な抗体の同定は,本邦で汎用されているパネル赤血球では不可能であり,本症例のように抗体同定が不能であった症例に対しては,速やかに日赤血液センターでの精査を依頼する必要がある.妊婦の不規則抗体検査の意義に加え,希な血液型不適合に関する対応法の周知が求められる.


バックナンバーに戻る