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日本小児科学会雑誌 目次 |
第108巻 第4号/平成16年4月1日
Vol.108, No.4, April 2004
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【原著】 |
■題名 |
中学校での麻疹集団発生における疫学調査と対策 |
■著者 |
国立感染症研究所実地疫学専門家養成コースFETP1),感染症情報センター2),
茨城県竜ヶ崎保健所3),関西医科大学小児科学教室4)
森 伸生1)4) 多屋 馨子2) 砂川 富正2)
谷口 清州2) 石田久美子3) 岡部 信彦2) |
■キーワード |
麻疹,麻疹ワクチン,感受性者,接種率,ワクチン効果 |
■要旨 |
2002年4月にA中学校(生徒数375人)で発生した麻疹の集団発生に対し,感染経路の把握と感受性者の推定を目的とした調査を行った.全校生徒を対象に臨床症状,麻疹ワクチン接種歴,麻疹既往歴についてアンケートを用いて情報を収集した.2002年4〜5月に麻疹と臨床診断されたA中学校の生徒を症例と定義した.373人の生徒からアンケートを回収し,症例は21人であった.そのうちの17人がワクチン未接種であった.初発例(1年生)は全校生徒が参加する4月9日の入学式に出席し,11日に発熱と発疹を認め診断された.同月17日から22日に17人が,5月1日から3日に3人が発症した.入学式での感染拡大が示唆された.流行前の学校全体のワクチン接種率は84.8%で,多くの者が1〜3歳時に接種を受け,ワクチンの効果は98.5%であった.4月26日に麻疹未発症の麻疹ワクチン未接種者11人にワクチン接種が行われ,集団発生は終息した.麻疹の発生時には早期に感受性者に対しワクチン接種を行う事と学校での集団発生を防ぐには未接種者を減少させ,接種率を向上させる事が必要である. |
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【原著】 |
■題名 |
小児科外来におけるoccult bacteremiaの前方視的調査 |
■著者 |
にしむら小児科1),よしだ小児科クリニック2),ふかざわ小児科3),
くさかり小児科4),芳賀小児クリニック5),耳原総合病院小児科6)
西村 龍夫1) 吉田 均2) 深澤 満3)
草刈 章4) 芳賀 惠一5) 武内 一6) |
■キーワード |
occult bacteremia,肺炎球菌,抗菌薬,白血球数 |
■要旨 |
Occult bacteremiaは米国の外来診療で重視されている疾患であるが,日本でのまとまった報告はない.わが国での実態を明らかにするため,プライマリーケアに関わる6施設(小児科診療所5施設,病院小児科1施設)が参加しoccult bacteremiaの前方視的調査を行った.3〜36カ月で発熱後24時間以内に来院し,最高体温が39℃以上の小児105例を対象とした.発熱のフォーカスが不明であった症例は71例で,このうちの4例(5.6%)がoccult bacteremiaと診断された.起炎菌は全例で肺炎球菌が検出され,PRSP 1例,PISP 2例,PSSP 1例であった.occult bacteremia症例に特異的な症状は無かったが,検査所見では全例で白血球数の15,000/μl以上の増加がみられた.4症例とも抗菌薬投与により合併症も無く治癒した.
フォーカスが不明な発熱児で,わが国の外来診療でも米国の報告と同様の頻度でoccult bacteremiaがみられた. |
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【原著】 |
■題名 |
青少年期における運動実施頻度の二極化について |
■著者 |
岡山大学教育学部1),大阪厚生年金病院2)
加賀 勝1) 高橋 香代1) 清野 佳紀2) |
■キーワード |
青少年,運動実施頻度,二極化,体力・運動能力調査報告書 |
■要旨 |
本研究の目的は,児童・生徒の運動実施頻度について経年変化を明らかにし,運動実施頻度の二極化について具体的資料を得ることである.
調査方法は,1970〜2000年の「体力・運動能力調査報告書」を用い,10年毎にデータを収集した.結果は,以下のとおりであった.
[1]小学生では,1970〜2000年の長期にわたり運動実施頻度は減少を続けていた.
[2]中学生では,男子の運動実施頻度は増加しているが,2000年の2・3年生女子に運動実施頻度の高い生徒と低い生徒がともに多い二極化現象が確認された.
[3]高校生では,2000年に男女とも全学年で運動実施頻度の二極化現象が明らかとなった.
以上から,小学校期では運動機会の増加と運動に親しむ態度を育むこと,負傷・骨折頻度が多い中学校期ではその予防に留意して運動指導を行うとともに,女子の不活動に注意を向けること,身体的な充実期にある高校期に,運動実施頻度を高めることが重要であると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
Food protein-induced enterocolitis syndromeと考えられた低出生体重児の1例 |
■著者 |
熊本市民病院新生児医療センター1),熊本大学大学院医学薬学研究部小児発達学2)
川瀬 昭彦1) 近藤 裕一1) 松本 知明2) |
■キーワード |
食物アレルギー,Food protein-induced enterocolitis syndrome,低出生体重児 |
■要旨 |
1986年PowellはIgEを介さない食物アレルギーの一種として,Food protein-induced enterocolitis syndrome(以下FPIES)を報告した.以後海外では文献が散見されるが,本邦では報告がない.今回FPIESと考えられた低出生体重児の1例を経験したので報告する.症例は在胎34週1日,2,202gにて出生の男児.生後19時間より低出生体重児用調整粉乳で哺乳開始されたが,間もなく粘血便が頻回となる.日齢3に体重減少著明なため,当院新生児医療センターへ紹介入院.入院時体重1,828g.著明な脱水,代謝性アシドーシスを認めた.感染症,腸回転異常症を否定し,ミルクアレルギーを疑った.各種低抗原ミルクを投与するがその度に嘔吐,血便が出現した.日齢43に,もらい母乳の投与開始.日齢64アミノ酸混合乳の併用開始.日齢94にアミノ酸混合乳のみで退院となった.退院後調整粉乳,大豆粉乳負荷試験で診断基準に合致しFPIESと診断した.近年新生児期のミルクアレルギーの報告が散見されるが,その一部には本疾患も含まれる可能性がある. |
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【原著】 |
■題名 |
SLC25A13遺伝子変異を認めた新生児肝内胆汁うっ滞症の兄妹例 |
■著者 |
和歌山県立医科大学小児科1),国保日高総合病院小児科2),
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科分子病態生化学3)
島 友子1) 南 弘一1) 柳川 敏彦1)
吉川 徳茂1) 奥田 修司2) 小林 圭子3) |
■キーワード |
新生児肝内胆汁うっ滞症,SLC25A13遺伝子,成人発症II型シトルリン血症 |
■要旨 |
新生児肝内胆汁うっ滞症において成人発症II型シトルリン血症の原因遺伝子であるSLC25A13(Citrin遺伝子)に変異を認めた兄妹例を経験した.入院時(兄は生後4カ月,妹は生後2カ月)の血漿アミノ酸分析ではメチオニン,チロシン,スレオニン,シトルリン,アルギニンが特異的に上昇しており,シトルリンの上昇が顕著であった.兄の肝臓の組織学的な特徴は,胆汁うっ滞像と脂肪変性であった.兄妹の肝機能障害は生後1年までに改善し,アミノ酸分析所見も正常化して経過しているが,今後それらの変化や成人発症II型シトルリン血症との関連性について注意深い経過観察が必要である. |
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【原著】 |
■題名 |
小児における大動脈内バルーンパンピング法の経験 |
■著者 |
岡崎市民病院小児科1),豊川市民病院小児科2)
長井 典子1) 永田 佳恵1) 河井 悟1)
瀧本 洋一1) 早川 文雄1) 小倉 良介2) |
■キーワード |
大動脈内バルーンパンピング法,経皮的補助循環,急性左心不全,劇症型心筋炎 |
■要旨 |
大動脈内バルーンパンピング法(IABP:intraaortic balloon pumping)は成人の急性循環不全に対する補助循環として,確固たる地位を占めているが,小児での使用報告は少ない.今回我々は,3例の急性循環不全の小児例に対し,うち2例は経皮的補助人工心肺(PCPS:percutaneous cardiopulmonary support)と併用で,1例はIABP単独での使用経験を得た.年長児では,IABPは重症な左心不全例において非常に有効であった. |
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【短報】 |
■題名 |
リン酸オセルタミビル使用後にクームス陽性溶血性貧血を発症した2歳女児例 |
■著者 |
医真会八尾総合病院小児科
八木 由奈 八木 康裕 提島 英雄 宮田 雄祐 |
■キーワード |
リン酸オセルタミビル,溶血性貧血,小児 |
■要旨 |
インフルエンザ感染症疑いに,リン酸オセルタミビル(商品名タミフル★)が投与され,翌日より溶血性貧血を発症した2歳女児例を報告する.入院時(第3病日)の赤血球数315×104/μl,ヘモグロビン9.2g/dlであったが,第4病日には赤血球数159×104/μl,ヘモグロビン4.7g/dlまで低下.入院中,計540μlの輸血を要した.入院時直接抗グロブリン試験(直接クームス試験)は広範囲(+),抗IgG抗体(−),抗補体(2+).間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)は陰性であった.リン酸オセルタミビルに対するリンパ球幼弱化試験(DLST)は陽性であった.溶血の原因として,リン酸オセルタミビルの関与が疑われた.リン酸オセルタミビルに関連した急性の溶血性貧血は過去に報告がなく,小児に本剤を投与する時には,急性の溶血性貧血の合併に注意を払う必要があると思われた. |

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【短報】 |
■題名 |
休日夜間急病診療所における小児科分離診療開始後の検討 |
■著者 |
豊橋市医師会
安井 洋二 鈴木 敏弘 冨田 安信 川北 章 |
■キーワード |
小児一次救急,内科・小児科分離診療,開業小児科医 |
■要旨 |
豊橋市では小児1次救急を充実するため,平成12年4月より準夜帯の内科との分離診療を開始した.深夜帯以外は小児科医が常駐し,小児を小児科医が診る確立は40から80%以上へと上昇した.この診療体制になり,小児科受診者は年間9,402から13,933人へと増加した.また,受診した保護者の意識調査アンケートを行った.結果は最近の傾向通り小児は小児科医の診療を希望し,重症と感じている場合には病院指向があることがわかった. |

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