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日本小児科学会雑誌 目次 |
第107巻 第8号/平成15年8月1日
Vol.107, No.8, August 2003
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【原著】 |
■題名 |
低身長小児の乳幼児期の発育と成長ホルモン分泌不全診断のための成長学的な診療指針 |
■著者 |
成育医療ネットワーク,国立成育医療センター1),国立栃木病院2),国立京都病院3),国立善通寺病院4),国立療養所香川小児病院5),国立長崎医療センター6),国立療養所岩木病院7),国立療養所新潟病院8),国立療養所長良病院9),国立金沢病院10),国立福山病院11),国立別府病院12),国立療養所福岡東病院13),国立病院呉医療センター14),国立三重中央病院15),国立岡山医療センター16),国立療養所西札幌病院17),国立弘前病院18),国立西埼玉中央病院19),国立松本病院20),国立療養所三重病院21),国立大阪病院22),国立佐賀病院23),国立療養所山陽病院24),国立岩国病院25)
田中 敏章1) 石井 徹2) 秋山 祐一3) 辻 正子4) 西庄かおる5) 田中 茂樹6) 黒沼忠由樹7) 早川 広史8) 河野 芳功9) 田丸 陽一10) 石田 喬士11) 肘井 孝之12)水野 勇司13) 田中 丈夫14) 田中 滋己15) 古城眞秀子16)星井 桜子17) 工藤恵美子18) 山本 智章19) 野呂瀬 昇20)増田 英成21) 尾崎 由和22) 高桝 俊光23) 安永 徹24)守分 正25) |
■キーワード |
成長ホルモン分泌不全性低身長症,低身長,胎内発育不全性低身長症,非内分泌性低身長 |
■要旨 |
6歳時に効率よくGHDの診断をするための成長学的な診療指針を,低身長児の乳幼児の発育を解析して後方視的に検討した.成育医療ネットワークの医療施設の小児科外来で治療または経過観察している小児で,6歳時の身長が−2 SD以下の低身長小児188名(GHD 59名,非GHD低身長129名:男子151名,女子37名)の出生時より小学校入学時までの成長記録を解析した.
6歳時低身長児は,出生時より標準より有意に低く,1歳時にはすでに−2 SD前後までの成長障害をきたしており,乳児期の重要性を示唆した.GHDと非GHDの身長SDSの変化は,0歳から3歳までは差がないが(GHD −1.19SD,非GHD −1.09SD),3歳から6歳までは,GHD群が有意に身長SDSの低下が大きかった(それぞれ−0.78 SD,−0.37 SD,p<0.001).6歳頃に効率よくGHDをスクリーニングする成長学的な基準としては,非IUGR児においては3歳から6歳までの身長SDSの変化のカットオフを−0.4 SDとしたとき,GHD診断の感度は77.1%,specificityは52.3%であった.IUGR児に於いては身長SDSの変化においては,GHDと非GHDに差が無かった.
3歳から6歳までの身長SDSの低下が0.4 SD以上の非IUGRの低身長小児にGH分泌刺激試験を行うとGHDの約80%は効率よく診断できると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
小児におけるHelicobacter pylori非侵襲的検査法の検討 |
■著者 |
和歌山県立医科大学小児科1),和歌山労災病院小児科2),堺市衛生研究所3)
坊岡 美奈1) 奥田真珠美2) 宮代 英吉2)
奥田 修司1) 南 弘一1) 小林 昌和1)
小池 通夫1) 田中 智之3) 吉川 徳茂1) |
■キーワード |
尿中H. pylori IgG抗体,便中H. pylori抗原,13C尿素呼気試験 |
■要旨 |
小児におけるHelicobacter pylori(以下H. pylori)非侵襲的検査法を検討した.13C尿素呼気試験と便中H. pylori抗原検出法は検討し得た110名全員で結果が一致した.そこで,便中H. pylori抗原検出法をスタンダードにして尿中,血中抗体を測定し,感度,特異性について検討した.前者では,感度96.0%,特異性95.9%,一致率96.0%であった.一方,後者は,感度65.9%,特異性100%であった.小児におけるH. pylori感染診断では,本研究で明らかにした所見を含め,各種検査法の特徴をふまえて,個々の場合に,より適した検査法を選択することが重要である. |
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【原著】 |
■題名 |
小児の急性B型肝炎の検討 |
■著者 |
東京都立清瀬小児病院1),公立福生病院小児科2)
浅村 信二1) 磯畑 栄一1) 横山 哲夫1) 松山 健2) |
■キーワード |
急性B型肝炎,キャリア,水平感染,予防対策 |
■要旨 |
輸血のスクリーニングや母子感染の防止方法の確立により,我が国のB型肝炎のキャリアは減少したが,なお小児期に散発的な急性B型肝炎が存在する.過去13年間に遭遇した8例の小児の急性B型肝炎を検討した.生後6カ月から1歳8カ月までの4例を含む8例は全て一過性の感染で終わり,持続感染にはならなかった.2例は経過中HBs抗原が陰性,またHBs抗原が比較的早期に消失する例もあり,肝機能障害のスクリーニングにはHBs抗原ではなく,HBc抗体を用いるべきと思われた.乳幼児の4例は家族内にキャリアが存在して家族からの感染が,一方3例の学童期の症例は家族内にキャリアが存在せず家族以外からの水平感染が疑われ,乳児と学童では主たる感染経路が異なると考えられた.B型肝炎ウイルスのキャリアが家族内に存在する場合はe抗原の有無にかかわらず,その家族にワクチンの接種を早期にすることが重要である. |
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【原著】 |
■題名 |
新生児糖尿病3例の6番染色体と臨床経過の検討 |
■著者 |
新潟市民病院小児科1),新潟県立坂町病院小児科2),旭川医科大学小児科3)
阿部 裕樹1) 本間 丈成1) 岩渕 晴子1)
阿部 時也1) 今田 研生2) 蒔田 芳男3) |
■キーワード |
新生児糖尿病,永続型糖尿病,一過性糖尿病,6番染色体 |
■要旨 |
新生児糖尿病は永続型と一過性に分類され,永続型糖尿病の発症機序は不明であるが,一過性糖尿病の発症には6番染色体の関与が想定されている.今回我々は3例の新生児糖尿病症例について,臨床経過や6番染色体についての検討を行い,文献的考察を加えたので報告する.
永続型の1例には一過性糖尿病の責任領域の異常は認めなかったが,インスリン治療を離脱できた一過性の1例では,同領域に父由来遺伝子の重複を認めた.文献的にも永続型で6番染色体の関与が証明された例は無く,6番染色体の検討は発症時に病型を推測する上で重要な示唆を与えるものと考えられた.
また,永続型糖尿病の1例においてインスリン分泌の回復が認められ,この症例の病態は一過性糖尿病で推定されている膵β細胞の増殖や成熟の遅れが関与している可能性があると考えられた.. |
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【原著】 |
■題名 |
無症状の母親からの水痘・帯状疱疹ウイルス垂直感染により多形紅斑を発症した新生児例 |
■著者 |
財団法人田附興風会北野病院小児科1),同 皮膚科2)
水本 洋1) 浅田 純子1) 上松あゆ美1) 羽田 敦子1) 笹橋真紀子2) 戸田 憲一2) 秦 大資1) |
■キーワード |
多形紅斑,不顕性感染,水痘帯状ヘルペスウイルス,垂直感染 |
■要旨 |
口腔粘膜および口周囲,手指足趾末端の浮腫性紅斑,びらん,水疱性病変を呈した新生児例において,その特徴的な皮膚症状と病理所見から,多形紅斑と診断した.入院時の血液検査で水痘―帯状ヘルペスウイルスIgM抗体価が有意に高値であり,水痘感染に続発したものと考えられたため,AcyclovirとVZV高力価グロブリンを投与し症状は軽快した.水痘―帯状疱疹ウイルス感染が原因と考えられる多形紅斑の報告は少なく,新生児期の発症例の報告はない.今回我々が経験した症例は,水痘既感染の母親の,妊娠に伴う不顕性のウイルス再活性化によって垂直感染を来たし,多形紅斑を発症したものと考えられる貴重な症例である. |
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【原著】 |
■題名 |
新生児ヘモクロマトーシスの1例 |
■著者 |
自治医科大学総合周産期母子医療センター新生児集中治療部1),自治医科大学附属病院病理診断部2)
矢田ゆかり1) 高橋 尚人1) 本間 洋子1)
高屋敷典生2) 桃井眞里子1) |
■キーワード |
新生児ヘモクロマトーシス,凝固能障害 |
■要旨 |
新生児ヘモクロマトーシスの1例を経験した.高度の子宮内発育遅延を合併し,出生直後から重症の肝機能障害に起因する黄疸,凝固能障害,浮腫を呈し,その後多臓器障害によって日齢7に死亡した.病理組織にて細網内皮系を除いた多臓器にわたる鉄沈着を認め,新生児ヘモクロマトーシスと診断した.
本疾患は非常に稀であり,また急速進行性の経過を辿るため診断は容易ではなく,診断のためには特徴的な肝機能障害と組織所見の確認が重要である.本疾患の予後は極めて不良であり,今後管理のために早期診断および治療方法の確立が望まれる. |
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【原著】 |
■題名 |
13歳まで生存する標準型13トリソミー症候群の女児例 |
■著者 |
大阪市立総合医療センター小児神経内科1),神戸市立中央市民病院小児科2)
豊川 三枝1) 富和 清隆1) 川脇 寿1) 池田 浩子2) |
■キーワード |
染色体異常,13トリソミー,Patau症候群,長期生存 |
■要旨 |
13トリソミー症候群は,生命予後が極めて不良で1歳以内に約90%が死亡する重度の染色体異常である.我々は,比較的重度の合併症を免れ,重症呼吸器感染症を繰り返しながらも,気管切開をおこない,普通小学校に通う標準型13トリソミー症候群の13歳女児例を経験した.医療,在宅支援,学校が連携し13歳の現在まで愛情豊かに育てられ,喜怒哀楽を表出できている.本例は,標準型13トリソミー症候群の中では文献上日本最年長である.
一般的には致死的であり積極的治療は行わないとする重度染色体異常に対する医療とケアは個々の検討によってなされるべきであると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
道化師様魚鱗癬の1姉妹例 |
■著者 |
京都府立医科大学周産期診療部小児科
大神 文 鄭 樹里 太田 智和 徳田 幸子
羽田 聡 長谷川 功 杉本 徹 |
■キーワード |
道化師様魚鱗癬,多剤耐性黄色ブドウ球菌,胎児診断,ビタミンA誘導体 |
■要旨 |
道化師様魚鱗癬は重症型先天性魚鱗癬のうちで最も重篤な疾患である.胎内で皮膚の異常は進行し,生後数週間以内に死亡するとされる.国内で長期生存の報告はない.今回我々は姉妹例を経験した.姉は在胎36週2日,正常経膣分娩.全身が厚い角質に覆われ,眼瞼と口唇の外反,鼻翼と耳介の低形成を伴った.抗生剤の投与と皮膚処置を行うも日齢14に左上肢壊死巣の切断を余儀なくされ日齢15にMRSAによる敗血症に陥り日齢18に死亡.妹は37週5日,正常経膣分娩.羊水診断は受けず.外見は姉とほぼ同じ.姉での反省点をふまえ,早期に四肢減張切開を行い,清潔操作を徹底した.感染徴候に対してもMRSAを疑い早期に塩酸バンコマイシンを投与し重症化を回避でき日齢55に生存退院.急性期における慎重な皮膚処置と,経皮感染に対する厳重な注意が生命予後の改善には必須である. |
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