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日本小児科学会雑誌 目次 |
第107巻 第6号/平成15年7月1日
Vol.107, No.7, July 2003
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【原著】 |
■題名 |
新生児マス・スクリーニング実施後にみられた先天性副腎過形成症死亡例の調査 |
■著者 |
日本小児内分泌学会マス・スクリーニング委員会
小川 英伸 藤枝 憲二 立花 克彦 猪股 弘明
岡田 泰助 木下 英一 楠田 聡 税所 純敬
田島 敏広 田中 敏章 西 美和 |
■キーワード |
先天性副腎過形成症,21-水酸化酵素欠損症,新生児マス・スクリーニング,急性副腎不全 |
■要旨 |
新生児マス・スクリーニングにて発見・加療されたにもかかわらず,その後死亡に至った先天性副腎過形成症(21-水酸化酵素欠損症)例について日本小児内分泌学会会員を対象にアンケート調査を行った.10例の死亡が認められ,いずれにおいても急性副腎不全が死亡に関与していた可能性があると考えられた.うち4例が腸管感染症罹患時であった.本症は生命に危険を及ぼす疾患であること,またストレス時の服薬増量指導の徹底と,急性副腎不全及びその疑いがある場合の速やかな副腎皮質ホルモン剤の非経口的投与の必要性を患者,家族,医師とも再認識する必要がある. |
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【原著】 |
■題名 |
最終身長予測式を用いた成長ホルモン治療効果の評価 |
■著者 |
関西医科大学小児科1),大阪医科大学小児科2),大阪府立母子保健総合医療センター3),大阪市立大学小児科4),
大阪市立総合医療センター小児内科5),市立松原病院小児科6),関西医科大学洛西ニュータウン病院小児科7),
大阪市立住吉市民病院小児科8),東邦大学小児科9)
東野 博彦1) 高谷 竜三2) 位田 忍3)
稲田 浩4) 藤田敬之助5) 玉田 育子6)
藤原 亨7) 大笹 幸伸8) 佐藤 真理9) |
■キーワード |
成長ホルモン,低身長,最終身長,Growth Potential法,日本人標準Bayley-Pinneau法 |
■要旨 |
目的:成長ホルモンの治療効果を治療中に判定する.方法:成長ホルモン治療を行った低身長児(43名)について,目標身長(MPH)と最終身長(FH)との差を比較した.著効群(7名,FH MPH>3cm),有効群(24名,−3cm<FH−MPH<3cm),無効群(13名FH−MPH<−3cm)の3群に分類し,治療開始前と治療後との骨年齢相当身長SDスコアと最終身長予測式(日本人標準Bayley-Pinneau法(BP法)・Growth Potential法)との経年的変化を観察した.結果:3法それぞれで著効群は治療後1年目から有意な改善があった.有効群は骨年齢相当身長SDスコアとGrowth Potential法で2年目以降に有意な改善がみられた.無効群では1,2年目には若干の改善傾向がみられたが3年目から低下傾向にあった.3群の差はGrowth Potential法で最も顕著であった.結論:成長ホルモン治療開始後に骨年齢相当身長SDスコアと最終身長予測式とを経年的に観察することは身長予後の判定に有効であった.治療開始後1年目で予測身長の改善する症例は身長予後が良く,治療開始後3年たっても身長予後の改善しない症例は治療無効である.後者は治療の中止あるいは変更を考慮すべきと思われる. |
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【原著】 |
■題名 |
3カ月未満に発症した川崎病の臨床像に関する検討 |
■著者 |
聖マリア病院小児科1),久留米大学小児科2)
姫野和家子1) 赤木 禎治2) 石井 正浩2) 前野 泰樹2) 浦部 大策1) 大部 敬三1) 加藤 裕久2) 松石豊次郎2) |
■キーワード |
川崎病,乳児,γグロブリン,冠動脈,乳児早期例 |
■要旨 |
乳児早期に発症する川崎病は,高率に冠動脈後遺症を合併することが知られているが,γグロブリン療法の導入によりその自然経過が改善している可能性がある.1995年から2001年までに,入院加療を行った生後3カ月未満に発症した川崎病12例を,後方視的に検討した.発症年齢は72±17生日であり,入院時から川崎病が疑われたのは3例のみであった.川崎病と診断が確定したのは4.8±1.7病日であった.γグロブリンは,解熱後の心エコーで川崎病と診断された1例を除く11例に使用した.初回γグロブリン不応例2例と初回γグロブリン投与後に全身状態の悪化を認めた2例に,メチルプレドニゾロンを使用した.冠動脈病変は,冠動脈瘤4例,一過性拡大2例の計6例(50%)に認めた.我々の経験した乳児早期川崎病は,比較的早期に診断され適切な治療が開始されているにもかかわらず,依然として冠動脈病変の発生頻度が高かった.今後新たな治療戦略の確立に検討を要すると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
極低出生体重児における新生児重症度スコアの有用性に関する検討 |
■著者 |
桐生厚生総合病院小児科,群馬大学小児科*
懸川 聡子 大木 康史 吉田 恭子 小池 秀樹
渡辺 美緒 田端 雅彦 桑島 信 竹内 東光
名古 靖* 森川 昭廣* |
■キーワード |
極低出生体重児,新生児集中治療室,新生児重症度スコア |
■要旨 |
欧米で作成された新生児重症度スコアであるScore for Neonatal Acute Physiology(SNAP)及びClinical Risk Index for Babies(CRIB)が本邦の新生児集中治療施設(NICU)に入院した極低出生体重児(VLBWI)においても適合性が良好であるかについて検討した.10.5年間に入院したVLBW児239名のうち,解析不適例を除外した217名について,SNAP,CRIBスコアを算出し,生存の予測能力を従来の指標である在胎週数,出生体重と比較した.今回の検討では23,24週の症例,500g未満の症例が少ないこともあってか,在胎週数,出生体重では死亡率が50%を越える領域はなかったが,SNAP,CRIBでそれぞれ20,9点を超えると過半数が死亡していた.また,receiver operating characteristic curveの下部の面積(AUC)は在胎週数,出生体重では,0.71,0.73であるのに対し,両スコアによるものは0.82で両スコアのAUCの方が高値であった.SNAP,CRIBは当院のNICUに入院したVLBWIで在胎週数や出生体重よりも生命予後を正確に予測した.両スコアは,欧米と同様に本邦においても,VLBWIの重症度の客観的評価や施設間・年代間の成績の比較に使用できる可能性があると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
複合型グリセロールキナーゼ欠損症の1例 |
■著者 |
静岡県立こども病院新生児科1),同 内分泌科2),同 腎臓内科3),沼津市立病院小児科4)
堀切千賀子1) 土井宏太郎1) 田村 直顕1) 五十嵐健康1) 臼倉 幸宏1) 加治 正行2) 和田 尚弘3) 稲垣 徹史3) 小林 雅史3) 宇佐美 等4) 梁 尚弘4) |
■キーワード |
グリセロールキナーゼ欠損症,代謝性アシドーシス,心不全 |
■要旨 |
日齢8に代謝性アシドーシスと心不全で発症した複合型グリセロールキナーゼ欠損症の1例を経験した.人工呼吸管理,持続血液濾過などの集中治療により救命した.尿中有機酸分析でグリセロールの異常高値を認め,末梢リンパ球のグリセロールキナーゼ活性は検出されなかった.ジストロフィン遺伝子,および副腎低形成に関与するDAX-1遺伝子の欠失を認めた.デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよび副腎低形成を合併した複合型グリセロールキナーゼ欠損症と診断した.本症はX染色体短腕21領域に存在する遺伝子の欠失によって起こる稀な疾患で,その初発症状は多彩で特異性に欠けるが本症例のように急激で重篤な発症をとる症例では,迅速な集中治療と的確な診断が望まれる. |
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【原著】 |
■題名 |
細菌性髄膜炎回復期に脳性塩類喪失症候群を併発したと考えられる1例 |
■著者 |
豊橋市民病院小児科1),名古屋市立大学小児科2)
竹内 幸1) 鈴木 賀巳1) 服部 哲夫1) 金原 有里1) 村田 浩章1) 長崎 理香1) 安藤 直樹2) 伊藤 剛1) 藤田 直也1) 柴田麻千子1) 白谷 尚之1) 小山 典久1) |
■キーワード |
髄膜炎,中枢性低ナトリウム血症,脳性塩類喪失症候群,抗利尿ホルモン不適切分泌症候群,脳性ナトリウム利尿ペプチド |
■要旨 |
急性中枢神経疾患に伴う低Na血症の病因として抗利尿ホルモン不適切分泌症候群はよく知られているが,その一方,Na利尿ペプチド,内因性ウアバイン様物質の過剰産生が原因と推定され,細胞外液量減少を伴うNa利尿を主病像とする脳性塩類喪失症候群の認知度は極めて低い.今回,著者らは,急性細菌性髄膜炎回復期に多尿を伴う低Na血症を呈した1歳男児を経験し,精査の結果,脳性塩類喪失症候群と診断した.その臨床像を報告するとともに本例から得られた情報と過去の知見を基に本症の成因に対する考察を試みた. |
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【原著】 |
■題名 |
インターフェロン療法により血清血管内皮増殖因子の低下と症状の改善を認めた全身性多発性血管腫の1例 |
■著者 |
自治医科大学小児科1),同 新生児集中治療部2)
後藤 珠子1) 高橋 尚人1)2) 本間 洋子1)2) 桃井真里子1) |
■キーワード |
新生児,血管腫,インターフェロン,血管内皮増殖因子 |
■要旨 |
ステロイド抵抗性の心不全を伴う先天性多発性血管腫の症例に対しインターフェロンαにて治療を行い,血管腫の縮小とともに,血清血管内皮増殖因子の低下を認めた.インターフェロンの血管増殖性疾患に対する治療効果機序に関して,まだ不明な点が多いが,血管内皮増殖因子産生抑制の関与が示唆された. |
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【原著】 |
■題名 |
ソマトスタチンアナログが奏効した外傷性膵炎後膵仮性嚢胞の1例 |
■著者 |
神戸市立中央市民病院小児科
前田 晴子 斉藤 潤 久保田 優 |
■キーワード |
ソマトスタチン,オクトレオチド,外傷性膵炎,膵仮性嚢胞 |
■要旨 |
小児期の急性膵炎の原因で最も頻度が高いものは腹部鈍的外傷である.我々は,腹部鈍的外傷後に急性膵炎を来し,その後複数の膵仮性嚢胞が形成され,従来の保存的治療では軽快せず,ソマトスタチンアナログの投与が著効した11歳女児例を経験した.本邦小児での使用報告例には,術後膵液漏や,白血病治療薬のL-アスパラギナーゼ投与による急性膵炎があるが,外傷性膵炎後膵仮性嚢胞においても,ソマトスタチンアナログ投与を考慮することが可能と思われた. |
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【短報】 |
■題名 |
小児麻疹患者における尿中Leukotriene E4値の検討 |
■著者 |
幌南病院小児科
高橋 豊 市川 瑞穂 縄手 満
鴨志田久子 鹿野 高明
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■キーワード |
麻疹,尿中leukotriene E4,呼吸器症状 |
■要旨 |
小児麻疹患者の尿中Leukotriene E4値を測定し,アレルギー疾患を有しない健常児と比較した.麻疹患者12例の急性期の尿中LTE4は474±228pg/mg. crと対照19例の190±67pg/mg. crに比して有意に高値を示した(p<0.005).また回復期尿を測定した3症例はいずれも急性期に比し減少傾向を示していた.肺炎の有無で差を認めず,末梢白血球数,血清CRP,血清LDHと有意の相関を認めなかった.以上の結果より麻疹急性期の病態にLTsが関与している可能性が示された. |
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