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日本小児科学会雑誌 目次 |
第107巻 第6号/平成15年6月1日
Vol.107, No.6, June 2003
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【原著】 |
■題名 |
単純性肥満児における黒色表皮腫とインスリン抵抗性,アデイポサイトカインとの関連 |
■著者 |
東京女子医科大学附属第二病院小児科1),東京女子医科大学放射線科核医学部2)
岩間 彩香1) 伊藤けい子1) 池崎 綾子1) 三浦 直子1)松岡 尚史1) 近藤 千里2) 杉原 茂孝1) |
■キーワード |
肥満,黒色表皮腫,インスリン抵抗性,2型糖尿病,レプチン,PAI-1 |
■要旨 |
黒色表皮腫(AN)は肥満児の項部や腋窩に認められ,2型糖尿病のリスクファクターといわれている.今回,単純性肥満児38人のANと体格指数,インスリン抵抗性,アデイポサイトカインであるレプチン,PAI-1の関係を検討した.その結果,AN陽性者の方が肥満度,腹囲,インスリン抵抗性の指標としての空腹時インスリン値,HOMA-Rが有意に大きいという関係を認めた.ANと体脂肪率とは関係しなかった.また,PAI-1 40ng/ml以上,レプチン30.0ng/ml以上と,非常な高値を示す症例では全てANを呈していた.PAI-1は線溶系に抑制的に働くことから動脈硬化のリスクファクターと言われている.単純性肥満児を診ていく上で,とくにANを伴う場合は,2型糖尿病や冠動脈疾患について注意深いフォローが必要であることが示唆された. |
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【原著】 |
■題名 |
未熟児のRSウイルス感染に関する前方視的臨床疫学調査 |
■著者 |
川崎市立川崎病院小児科1),東京女子医科大学母子総合医療センター新生児部門2)
大阪府立母子保健総合医療センター新生児科3)
武内 可尚1) 仁志田博司2) 藤村 正哲3) |
■キーワード |
RSウイルス,未熟児,RSV抗原検査,慢性肺疾患児 |
■要旨 |
未熟児で生まれ基礎に気管支肺異形成を持つ乳児や複雑な心奇型による心不全児が,RSウイルス(RSV)感染で致命的となりうることは,一部ではよく知られている.この程多施設が参加し,1997年11月から1998年4月にわたり,その実態を調査した.調査対象219例中,RSV感染が疑われ抗原検査した97例のうち,34例(35%)にRSV感染が確認された.全調査症例の9.1%(219例中20例)がRSV感染により入院した.またRSV感染の発病リスクは3カ月未満児が有意にlow riskであること,受動喫煙や兄弟に通園児童の多いことがhigh risk因子となる可能性がある事がわかった.米国では,RSVワクチンの開発が試みられ30年になるが,未だに実用化には至っていない.一方で画期的な抗RSVヒト化モノクローナル抗体の製造に成功し,ハイリスク乳児に受動免疫による予防法でRSVシーズンを乗り切る戦略が認可された.インフルエンザ同様に毎年必ず襲来するRSVであるが,インフルエンザのようなワクチンや特異的な治療薬のないRSV感染症に対し,わが国でも一日も早い対策が待たれる. |
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【原著】 |
■題名 |
均衡型転座保因者夫婦における染色体不均衡児出産のリスクの検討 |
■著者 |
岡山大学大学院医歯学総合研究科小児医科学
山下 純英 |
■キーワード |
均衡型転座保因者,染色体不均衡児,%HAL,経験的再発率 |
■要旨 |
過去21年間に経験した,均衡型転座保因者夫婦55症例の転座切断点と染色体不均衡児出産のリスクについて検討した.常染色体相互転座の保因者夫婦における出生前診断では,38妊娠中22妊娠(31.6%)と高率に不均衡型転座を認めた.ロバートソン転座では,9妊娠中1妊娠も認めなかった.観察された再発率は11.7%と従来の報告と同様の値であった.染色体不均衡児の診断既往の有無と,percentage of haploid autosome length(%HAL)に有意差は認めなかった.Stengel-Rutkowskiらの経験的再発率は,染色体不均衡児の生児を得るリスクを高い群,低い群に判別でき,遺伝カウンセリングにおいて,次子の再発率の推定に有用と考えられた.転座保因者においては,特に前児異常の既往のある症例では,各々の症例に応じた遺伝カウンセリングと,出生前診断および胎児超音波検査などによる注意深い妊娠中のフォローが必要である. |
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【原著】 |
■題名 |
Juvenile Dermatomyositisに合併した間質性肺炎にシクロホスファミドとシクロスポリンの併用が著効した1例 |
■著者 |
岡山大学大学院医歯学総合研究科小児医科学
浦上 知子 |
萬木 章 |
西内 律雄 |
雀部 誠 |
角 勇二 |
冨山 佳江 |
木口 久子 |
清野 佳紀 |
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■キーワード |
Juvenile Dermatomyositis,間質性肺炎,KL-6,シクロホスファミド,シクロスポリン |
■要旨 |
Juvenile Dermatomyositisに合併した間質性肺炎の1例を経験した.ステロイドパルスとシクロスポリンによる治療にもかかわらず気胸,縦隔気腫を繰り返し,急速な呼吸機能の低下が認められたためシクロホスファミド(Cyclophosphamide:以下CPA)パルス(500mg/m2/4weeks)を併用した.開始後速やかにKL-6の低下と呼吸機能の改善が認められ,CPAパルス6回終了後もさらに改善傾向を示し寛解を維持している.ステロイド抵抗性の間質性肺炎に対してシクロスポリンとCPAパルスの併用が有効であったと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
カルニチンパルミトイル転位酵素I欠損症の1女児例 |
■著者 |
東邦大学第1小児科1),京都府立医科大学小児科2),
国立療養所下志津病院小児科3),千葉県立こども病院代謝科4)
富永 晶子1) |
高月 晋一1) |
徳山 美香1) |
荒井 博子1) |
平山佳代子1) |
蜂矢百合子1) |
星野 恭子1) |
蜂矢 正彦1) |
佐藤 真理1) |
寺田 直人2) |
山本 重則3) |
高柳 正樹4) |
諸岡 啓一1) |
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■キーワード |
カルニチンパルミトイル転位酵素(carnitine palmitoyltransferase=CPT)I欠損症,脂肪酸酸化異常症,血清遊離脂肪酸,血中・尿中ケトン体 |
■要旨 |
ライ症候群様の症状で発症し,カルニチンパルミトイル転位酵素(carnitine palmitoyltransferase)I欠損症と診断した1歳8カ月の女児例を報告する.痙攣,意識障害を主訴に来院し,低血糖,高アンモニア血症,AST・ALTの増加よりライ症候群が疑われたが,肝生検では典型的な組織像は認められなかった.以後低血糖,意識障害を繰り返し,症状発現時に血清遊離脂肪酸は増加していたが,尿中ケトン体の増加がなかったことより,脂肪酸代謝異常が疑われた.飢餓試験およびmedium chain triglyceride(MCT)ミルク負荷の結果より,長鎖脂肪酸代謝異常と考え,最終的にCPT I活性の低下が確認され診断に至った.低血糖,意識障害を呈する症例では,脂肪酸酸化異常症が鑑別すべき疾患として挙げられ,血清遊離脂肪酸,血中・尿中ケトン体の測定が望まれる. |
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【原著】 |
■題名 |
機能的大脳半球切除術が有効であった難治性てんかんの1乳児例 |
■著者 |
愛媛県立今治病院小児科1),愛媛大学医学部附属病院小児科2)
福田 光成1)2) 森本 武彦2) 鈴木 由香2)
村上 至孝2) 貴田 嘉一2) |
■キーワード |
難治性てんかん,大脳皮質形成不全,てんかん外科,機能的半球切除術 |
■要旨 |
大脳皮質形成異常による難治性てんかんの9カ月男児例に機能的大脳半球切除術を行い,5年間経過を観察したところ,発作や発達面での改善が認められたので報告する.症例は1カ月男児.左側顔面と上肢を律動的に屈曲する複雑部分発作が頻発し,発作時脳波では右側頭頂部より群発するθ波に続く棘徐波複合が,非発作時では同部位に棘徐波が認められた.発作は全ての抗痙攣剤に抵抗し,容易に群発重積化し発達も停止した.頭部MRIにて右側頭頂〜側頭部の皮質形成異常が認められ,9カ月時に皮質焦点切除および機能的半球切除術を施行した.手術後は,日に十数回程度の短時間の部分発作が認められる程度になり,徐々に発達も改善した.乳幼児例でも外科治療可能な病変が認められ,薬物療法による予後が期待できない場合,発作の抑制と発作が発達に与える悪影響を考慮し,より早期の外科的治療が必要であると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
母体への硫酸マグネシウム長期投与による骨減少症が疑われた超低出生体重児例 |
■著者 |
福井医科大学小児科
山田 直江 |
塚原 宏一 |
古畑 律代 |
鈴木 孝二 |
早川 和代 |
佐藤 周子 |
平岡 政弘 |
眞弓 光文 |
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■キーワード |
硫酸マグネシウム,骨減少症,超低出生体重児,高マグネシウム血症 |
■要旨 |
子宮収縮抑制剤である硫酸マグネシウムの母体投与による児の骨ミネラル代謝への影響を検討した報告は少ない.われわれは,硫酸マグネシウムを5週間投与されていた母体より出生した超低出生体重児で生直後に高マグネシウム血症,長管骨骨幹端部骨減少症を呈した男児例を経験したので,患児の臨床経過と生化学データについて文献的考察を加えて報告した.母体への硫酸マグネシウム長期投与に続発する骨ミネラル代謝異常については,今後,症例数を増やして詳細に解析する必要があると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
軟骨無形成症に合併する睡眠時無呼吸に対するアデノイド切除術および大後頭孔減圧術前後の呼吸モニタリング |
■著者 |
奈良県立医科大学小児科1),同 周産期医療センター新生児集中治療部2),同 脳神経外科3)
粕田 承吾1) |
田中 一郎1) |
高橋 幸博2) |
中 宏之1) |
山内 昌樹1) |
嶋 緑倫1) |
星田 徹3) |
秋田 進久3) |
内山 佳知3) |
吉岡 章1) |
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■キーワード |
軟骨無形成症,睡眠時無呼吸,睡眠時呼吸モニタリング,アデノイド切除術,大後頭孔減圧術 |
■要旨 |
重度の睡眠時無呼吸を呈する軟骨無形成症の3歳男児に対し,アデノイド切除術および大後頭孔減圧術の前後で睡眠時呼吸モニタリングによる無呼吸の詳細な検討を行った.アデノイド切除術前は頻回の睡眠時無呼吸発作を認めたが,大部分は閉塞性パターンであった.術後,一過性に改善傾向がみられたが,再び無呼吸発作は増悪した.依然として閉塞性無呼吸が大勢を占めていたが,一部に混合性や中枢性無呼吸が混在していた.引き続き行った大後頭孔減圧術後は睡眠時無呼吸が劇的に改善し,中枢性のみならず閉塞性無呼吸も著減した.このことから延髄頸髄移行部の圧迫が閉塞性無呼吸の一つの要因となっていたことが示唆された.軟骨無形成症で呼吸障害を呈する場合,閉塞性パターンの睡眠時無呼吸であっても延髄頸髄移行部の圧迫に起因する可能性があることを念頭に置く必要があると思われた. |
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【短報】 |
■題名 |
在胎32週以下で出生した乳児のインフルエンザワクチンに対する抗体反応 |
■著者 |
和歌山県立医科大学周産期部NICU1),岸和田徳洲会病院新生児科2),国保日高総合病院小児科3)
樋口 隆造1) |
平松知佐子2) |
辻 知見1) |
宮脇 正和1) |
熊谷 健2) |
奥谷 貴弘1) |
岩橋 誠司3) |
吉川 徳茂1) |
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■キーワード |
インフルエンザワクチン,早産児,極低出生体重児,HI抗体,乳児 |
■要旨 |
在胎32週以下で出生した乳児がインフルエンザHAワクチン接種後に40倍以上のHI抗体を獲得する割合は,Aソ連型76%,A香港型12%,B型12%であり,A香港型とB型で低かった.HI抗体が上昇せず10倍未満であったのは,Aソ連型8%,A香港型56%,B型52%とA香港型とB型で多く,A型が同じワクチン株であった1年前と比較するとA香港型で一般乳児より有意に多かった(56% vs. 30%,p=0.029). |
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