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日本小児科学会雑誌 目次 |
第107巻 第4号/平成15年4月1日
Vol.107, No.4, April 2003
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【原著】 |
■題名 |
小児のインフルエンザに対するリン酸オセルタミビルの使用経験 |
■著者 |
国立療養所南愛媛病院小児科
伊藤 弘道 |
■キーワード |
リン酸オセルタミビル,インフルエンザ |
■要旨 |
2002年1月23日〜2月25日の午前まででインフルエンザと診断し,発熱期間を追跡できた計29例を対象として,臨床像,リン酸オセルタミビルによる発熱期間の短縮効果を検討した.「発熱」は38.0℃以上の体温と定義した.診断には鼻腔ぬぐい液を用い,迅速診断キットであるラピッドビューインフルエンザA/B(住友製薬バイオメディカル株式会社)を使用した.発熱より48時間以内の25例にリン酸オセルタミビルを4mg/kg/日分2で5日間処方した(最大量150mg/日).その発熱期間に及ぼす効果を調べるため,A群(発熱後24時間以内に内服),B群(発熱後24〜48時間に内服),C群(内服せず)の3群に分類して比較検討した.A群,B群,C群の全発熱期間はそれぞれ2.5±1.4日,2.6±0.9日,5.3±1.3日(平均±SD)であり,A群とC群,B群とC群の間に有意差を認めた.リン酸オセルタミビル内服は早期解熱に有効であった. |
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【原著】 |
■題名 |
経腸栄養剤使用中の重症心身障害児・者における血中・尿中ビオチン濃度及び尿中3-ヒドロキシイソ吉草酸排泄量 |
■著者 |
北海道療育園小児科
徳光 亜矢 |
三浦優利香 |
大野 和代 |
鈴木 直己 |
平元 東 |
楠 祐一 |
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■キーワード |
ビオチン,経腸栄養,重症心身障害児・者 |
■要旨 |
長期にわたり経腸栄養剤使用中の重症心身障害児・者のべ39名において,各製剤別に血中・尿中ビオチン濃度,血清ビオチニダーゼ活性及び尿中3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HIV)濃度をそれぞれ測定した.いくつかの食品型経腸栄養剤使用者では血中・尿中ビオチン濃度は低値を示し,さらにビオチン欠乏時に上昇する尿中3-HIV濃度がやや高い傾向にあり,潜在的なビオチン欠乏状態にあることが示唆された.ビオチンを添加した薬品型経腸栄養剤使用者では,ビオチン濃度は血中・尿中ともに高値を示した.しかし,ビオチンを添加していない薬品型経腸栄養剤使用者の中には,血中・尿中ビオチン濃度がやや低値を示した症例もあった.血清ビオチニダーゼ活性は全例で低下していなかった.臨床的なビオチン欠乏症状を呈した症例はいなかったが,重症心身障害児・者の長期経腸栄養剤使用時には,ビオチン欠乏に十分注意すべきであると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
ミダゾラム鎮静下での上部消化管内視鏡検査の安全性と苦痛度についての検討 |
■著者 |
昭和伊南総合病院小児科1),同 消化器科2),信州大学医学部小児科学教室3)
日高 奈緒1) |
中山 佳子1) |
堀内 朗2) |
滝 芳樹1) |
小宮山 淳3) |
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■キーワード |
ミダゾラム,上部消化管内視鏡検査,安全性,苦痛度 |
■要旨 |
小児に対してミダゾラム鎮静下で上部消化管内視鏡検査を施行し,その安全性と苦痛度について検討した.対象は消化器症状を呈した10歳から15歳までの16例(男児8例,女児8例)で,検査前から検査終了後まで連続的に脈拍数,収縮期血圧,末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定した.また,検査後に内視鏡検査に対する苦痛度についてのアンケート調査を行った.検査の所要時間は平均15分であり,全例で内視鏡観察が可能であった.内視鏡が食道および幽門輪に挿入される際に脈拍数,収縮期血圧ともに検査前に比べ有意に上昇したが,SpO2値は検査中有意な変動を示さなかった.アンケート調査では,回答を得た患児の86%が「必要があれば再び検査を受けてもよい」という回答であった.少なくとも10歳以上の就学児においては,ミダゾラムでの鎮静下で上部消化管内視鏡検査は安全かつ少ない苦痛で行うことが可能であると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
第1次硝子体過形成遺残を合併したヒアルロン酸代謝異常の1例 |
■著者 |
長岡赤十字病院小児科
今村 勝 |
鳥越 克己 |
沼田 修 |
山崎 肇 |
長谷川 聡 |
小川 洋平 |
内山亜里美 |
羽二生尚訓 |
長井 咲子 |
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■キーワード |
小児,ヒアルロン酸代謝異常,皮膚皺襞,第1次硝子体過形成遺残 |
■要旨 |
経過に伴い軽快する全身の皮膚の著明な皺襞と第1次硝子体過形成遺残を合併したヒアルロン酸代謝異常の幼児の1例を報告した.
症例は健康な両親から出生した第1子で,出生時より皮膚の皺襞を著明に認め,生後2週目に両側第1次硝子体過形成遺残と診断された.血清ヒアルロン酸値の上昇を認め,皮膚生検で真皮にヒアルロン酸の沈着を認めた.経過とともに皮膚の皺襞は減少し,血清ヒアルロン酸値も低下した.検査所見,臨床経過よりヒアルロン酸代謝異常と診断した.
ヒアルロン酸は胎児期に最も多く存在し,構造及び機能的な分化とともに減少するが,著者らの症例では出生後もヒアルロン酸の過形成を認めた.ヒアルロン酸代謝異常の原因は明らかになっていないが,著者らの症例では何らかの原因によりヒアルロン酸の過形成が起こり,胎児期のヒアルロン酸の減少が遅れたために発症したものと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
血球貪食症候群を合併したAnaplastic large cell lymphomaの1例 |
■著者 |
富山医科薬科大学医学部小児科1),新湊市民病院小児科2)
伊藤 靖典1) |
中林 玄一1) |
野村 恵子1) |
金兼 弘和1) |
岡部 美恵2) |
宮脇 利男1) |
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■キーワード |
血球貪食症候群(Hemophagocytic syndrome;HPS),Anaplastic large cell lymphoma(ALCL),IFN-γ,NPM/ALK融合遺伝子 |
■要旨 |
血球貪食症候群(Hemophagocytic syndrome:HPS)を合併したAnaplastic large cell lymphoma(ALCL)の4歳男児例を経験した.入院時に発熱,肝腫大,右頸部腫脹を認めた.血液検査で汎血球減少,肝機能異常,フェリチン,可溶性IL2レセプター,尿中β2ミクログロブリンの異常高値を認め,骨髄所見で血球貪食像を多数認めた.リンパ節生検の結果,CD30ならびp80陽性であり,HPSを合併したALCLと診断した.RT-PCR法を用いてALCLでしばしば認められるNPM/ALK遺伝子を調べたところ,リンパ節で陽性であったが骨髄では陰性であった.また,リンパ節においてIFN-γのmRNAの発現を認めた.このことからHPSは腫瘍細胞もしくは周囲のリンパ組織より産生されたIFN-γが血液を介しHPSを発症させたことが示唆された.患児は化学療法によりHPSも改善し,寛解に入った. |
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【原著】 |
■題名 |
母体胎児間輸血により発見された胎盤内絨毛癌の1例 |
■著者 |
社会福祉法人石井記念愛染園愛染橋病院小児科1),
大阪府立母子保健総合医療センター検査科2)
兼清 貴久1) 川本 豊1) 中山 雅弘2) 桑江 優子2) |
■キーワード |
胎盤内絨毛癌,母体胎児間輸血,新生児貧血 |
■要旨 |
我々は胎盤内絨毛癌によると思われる母体胎児間輸血の例を経験した.患児は在胎39週2日,2,826g,胎児仮死のため緊急帝王切開にて出生した女児である.生直後より著明な皮膚色蒼白,肝腫大,腹水を認め,当院へ新生児搬送となった.児は赤血球輸血にて全身状態は改善したが,精査の過程で胎盤内絨毛癌が発見された.胎盤内絨毛癌による母体胎児間輸血は,我々の調べた限り14例の報告がある.自験例では胎盤内にのみ絨毛癌細胞は限局し母児ともに転移を認めていないが,母体胎児間輸血は胎盤内絨毛癌の徴候である可能性がある.新生児に原因不明の貧血を認めた場合,絨毛癌も鑑別診断に入れhCG-β測定,胎盤病理検査をする必要がある. |
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【原著】 |
■題名 |
流動パラフィンによる外因性リポイド肺炎の乳児例 |
■著者 |
昭和大学藤が丘病院小児科1),同 病理科2)
池田 裕一1) |
山本 将平1) |
有田 陽子1) |
京田 学是1) |
保崎 一郎1) |
廣田 保蔵1) |
磯山 恵一1) |
山田耕一郎1) |
増永 敦子2) |
光谷 俊幸2) |
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■キーワード |
リポイド肺炎,流動パラフィン,ガスクロマトグラフィー分析,血清KL-6,ステロイド |
■要旨 |
流動パラフィンの誤嚥による外因性リポイド肺炎の4カ月男児例を経験した.生後1カ月時に便秘が出現し流動パラフィンを投薬された.生後2カ月時より体重増加不良を認め,4カ月時に精査目的で入院した.入院時に低酸素血症,および胸部X線写真で右上下肺野にびまん性の浸潤影があり,胸部CT所見では両側上下肺野背側を中心に浸潤影を認めた.肺生検組織では肺胞壁の一部は破壊され,肺胞構造は大小種々で,内腔にはリポイドを貪食したマクロファージが充満していた.ガスクロマトグラフィー質量分析から流動パラフィンによる外因性リポイド肺炎と診断した.ステロイド剤の投与により高値が持続していた血清KL-6値は速やかに低下し,画像所見および低酸素血症の改善も認められた.流動パラフィンの使用はELP発症の潜在的な危険性があり,服用に抵抗する乳児への使用は避けるべきだと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
猫ひっかき病に末梢性顔面神経麻痺を合併した12歳男児例 |
■著者 |
琉球大学医学部小児科1),山口大学医学部保健学科2)
大城 聡1) |
比嘉 睦1) |
太田 孝男1) |
塚原 正人2) |
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■キーワード |
猫ひっかき病,末梢性顔面神経麻痺 |
■要旨 |
猫ひっかき病(cat scratch disease,以下CSD)に末梢性顔面神経麻痺を合併した12歳男児を報告した.患児は生来健康で,発熱を主訴に当科に入院した.ネコの飼育歴および有痛性の右鼠径リンパ節腫大を認め,またCSDに対する抗体価が有意に上昇していたことなどからCSDと診断した.CSDへの抗生剤による治療開始後4日目に,突然に右末梢性顔面神経不全麻痺が出現したので,ステロイド投与も併せて行った.発症4カ月後には顔面麻痺はほぼ消失していた.末梢性顔面神経麻痺の原因として,CSDも鑑別していく必要があると思われたので報告した. |
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【原著】 |
■題名 |
Helicobacter pylori除菌後に改善を認めた小児期発症の慢性特発性血小板減少性紫斑病の1例 |
■著者 |
札幌厚生病院小児科
今野武津子 高橋美智子 |
■キーワード |
小児期発症慢性特発性血小板減少性紫斑病,Helicobacter pylori,除菌療法 |
■要旨 |
6歳時より特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断され,その後14年間経過観察されていた男性に,Helicobacter pylori(H. pylori)による胃炎を認め,除菌療法を施行した.除菌後,著明な血小板増加が認められ,Platelet associated IgG(PAIgG)も著減した.慢性ITPの原因の一つとしてH. pylori感染の関与が示唆された. |
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