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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:03.01.21)

第106巻 第12号/平成14年12月1日
Vol.106, No.12, December 2002


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第105回日本小児科学会学術集会
シンポジウム 小児科領域における最先端医療―再生医療の最近の進歩
ヒト造血幹細胞の体外増幅とその臨床応用
平家 俊男,他 1729
中枢神経系の再生医学 金子慎二郎,他 1736
骨髄幹細胞を用いた再生医療の進歩―心筋,腎臓の再生を中心に
右田 真 1744
血液疾患に対する遺伝子治療
小澤 敬也 1747
分野別シンポジウム 脳性麻痺の病態・評価・管理
脳性麻痺のMR所見と症候 横地 健治 1753
周生期脳障害の可塑性 前垣 義弘 1759
脳波と閃光刺激視覚誘発電位との組み合わせによる脳室周囲白質軟化症の早期診断
奥村 彰久,他 1766
分野別シンポジウム 新生児医療の医療効率
座長発言 藤村 正哲 1771
経済効率からみたNICUの適正配置 楠田 聡 1773
新生児医療におけるコンピューターシステムと医療効率
田村 正徳 1777
新生児医療の医療効率 河野 達夫 1783
小児救急とNICUを併せもつことの医療効果
住田  裕 1788
新生児医療の保健的側面 中村  敬 1792
分野別シンポジウム 小児不整脈の予後
座長発言
浅井 利夫 馬場 礼三 吉永 正夫 1799
胎児頻拍性不整脈の出生後経過
前野 泰樹,他 1801
小児期WPW症候群の長期予後について
岩本 真理,他 1807
特発性心室頻拍の予後 安田東始哲,他 1812
頻拍性不整脈に対する高周波カテーテルアブレーション
谷口 和夫 1817
分野別シンポジウム 免疫不全の遺伝子診断
座長まとめ
近藤 直実  原 寿郎 1822
重症複合免疫不全症―新たな責任遺伝子Artemis
上松 一永,他 1824
インターフェロン(IFN)-γ経路の異常による免疫不全症
楠原 浩一 1829
Ataxia-telangiectasiaの病因遺伝子と遺伝子診断
金子 英雄,他 1835
WASP遺伝子変異とreversion
和田 泰三 1844
分野別シンポジウム 腸管出血性大腸菌と溶血性尿毒症症候群
座長発言
都築 一夫 谷澤 隆邦 1849
腸管感染症における大腸菌O157の位置付け―腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E. coli,EHEC)の特徴
太田 美智男 1851
腸管出血性大腸菌感染症の診断と届出(3類感染症)の問題点
松本 一年 1855
腸管出血性大腸菌と溶血性尿毒症症候群の疫学
里村 憲一 1859
溶血性尿毒症症候群の発生機序と病態生理
大谷 方子,他 1865
下痢をともなう溶血性尿毒症症候群における合併症の検討
高橋 和浩,他 1870
原 著
1.新潟県における麻診ワクチン接種率と患者数動向からの麻疹制御対策への研究
坂井 貴胤,他 1876
2.市中病院小児科における小児心療科の現状と課題
小柳 憲司 1881
3.早産児における臍帯血カルニチンプロフィールの検討
村田美由紀,他 1887
4.川崎病患者数に関する検討―栃木県における小児慢性特定疾患認定情報と川崎病全国調査を用いて
渡辺 晃紀,他 1892
5.選択的1gG2欠乏症の2症例
藤井 裕士,他 1896
6.非血縁者間臍帯血移植後,WAS蛋白発現解析により混合キメラを追跡中のWiskott-Aldrich症候群の1例
小林 千恵,他 1901
7.脊髄髄膜瘤を合併したX連鎖血小板減少症の1例
小松 博史,他 1905
8.NICUから退院した13トリソミーの3例
熊谷  健,他 1909
9.顆粒球除去療法が奏効した劇症型潰瘍性大腸炎の1小児例
森 佳奈子,他 1914
短  報
プランルカストによる薬剤誘発性ミオパチーが疑われた症例
前田 太郎 1919
宮村 能子,他 1680
地方会抄録 (中部日本,佐賀) (1921)
編集委員会への手紙 (1932)
第2回日本小児科学会公開フォーラム「子どもの死を考えるin Kobe」 (1933)
「こどもの健康週間」作文コンクール・日本小児科学会会長賞受賞作品 (1934)
お知らせ (1935) 雑  報 (1937)
日本医学会だより No. 28 (1938) 医薬品・医療用具等安全性情報 No. 182 (1939)
総 索 引 投稿規定(和文,欧文)


【原著】
■題名
新潟県における麻疹ワクチン接種率と患者数動向からの麻疹制御対策への研究
■著者
新潟大学大学院医歯学総合研究科国際感染医学講座公衆衛生学分野1)
同 内部環境医学講座小児科学分野2)
坂井 貴胤1)2) 関  奈緒1) 斉藤 玲子1)
内山  聖2) 鈴木  宏1)
■キーワード
麻疹,麻疹ワクチン接種率,予防接種台帳
■要旨
 1978年に麻疹ワクチン定期接種が開始されたが,依然として麻疹の流行発生と中・高校生や成人の患者の増加がある.今回,1986年から2001年までの15年間の新潟県内におけるワクチン接種率と患者数の動向から麻疹制御対策を検討し,二つのことを明らかにした.第一は,新潟県では1989年以降満4歳児の接種率は90%を越えていたが,麻疹の発生は抑制されず,満2歳児の接種率が60%を越えた1995年以降1997年に1回の流行を認めるのみで患者発生は減少している.第二に患者発生制御には,年齢を考慮せず接種率を90%にするのではなく,特に満2歳児のワクチン接種率を60%以上にすることが重要である.
 次の目標として本邦の麻疹発生を0(elimination)にするには,1歳の誕生日後早期のワクチン接種推進と満2歳児での95%以上のワクチン接種率の獲得が必要と思われる.


【原著】
■題名
市中病院小児科における小児心療科の現状と課題
■著者
NTT西日本長崎病院小児科
小 柳 憲 司
■キーワード
心身医学,心療内科,小児心療科,心身症,児童精神科
■要旨
 1996年6月〜2001年3月までの約5年間,市中病院小児科で一般小児科の傍ら,小児心療科の専門治療を行った.症例数は540例で,対象疾患は,いわゆる心身症の他,不登校,神経症,問題行動,発達障害など,児童精神科領域まで多岐にわたっていた.心療科による治療の有用性が認められたのは全体の60%強だった.過食嘔吐などの自己破壊的行動や,不安,強迫症状が激しく,家族とも疲弊している場合には精神科への紹介が必要となるが,そのような症例は2〜3%程度で,かなりの部分が小児心療科の枠内での対応が可能だった.小児心療科の治療の中心は心身症であるが,それだけに留まらず,子どもの心の問題に幅広く対応することが求められている.しかし,現在は専門家の数が少なく,充分な対応ができない状態である.今後,専門家の育成が急務であるとともに,心の問題に対する小児科医全体の意識を高めることが必要であると考える.


【原著】
■題名
早産児における臍帯血カルニチンプロフィールの検討
■著者
京都府立医科大学小児科1),兵庫教育大学障害児教育2)
京都教育大学保健体育3),花ノ木医療福祉センター4)
村田美由紀1)2) 長谷川 功1) 中島 浩司1) 木崎 善郎1)
寺田 直人4) 井上 文夫1)3) 吉岡  博1) 杉本  徹1)
■キーワード
カルニチン,γ―ブチロベタイン,臍帯血清,早産児
■要旨
 早産児17例を対象に臍帯血清の遊離カルニチン(FC),アシルカルニチンおよびカルニチンの前駆物質のγ−ブチロベタイン(BB)を測定し,代謝の指標因子として遊離脂肪酸,ケトン体,インスリンおよび血糖と比較した.
 臍帯血清濃度の平均値±SD(μmol/l)はBBが2.41±2.04,FCが31.2±15.2,総アシルカルニチンが5.53±1.82であった.プロピオニルカルニチン(C3-AC),C4―アシルカルニチン(C4-AC),C5―アシルカルニチン(C5-AC)は在胎週数および出生体重と負の相関を認めた.BBは総カルニチン,FCおよびアセチルカルニチンと有意な正の相関を有した.インスリンはBBと正の相関を有し,血糖はC3-AC,C5-ACと有意な負の相関を有した.
 カルニチン関連物質は早産児の解糖系,脂肪酸酸化や蛋白異化の状態を反映しており,栄養治療の指標となると思われた.


【原著】
■題名
川崎病患者数に関する検討―栃木県における小児慢性特定疾患認定情報と川崎病全国調査を用いて
■著者
栃木県保健福祉部健康増進課1),自治医科大学公衆衛生学2),埼玉県立大学3)
渡辺 晃紀1) 大木いずみ2) 尾島 俊之2)
中村 好一2) 柳川  洋3)
■キーワード
川崎病,全国調査,患者把握率
■要旨
 川崎病全国調査での患者の把握割合を検討することを目的として,栃木県内の1998年3月〜12月発症の川崎病患者について,第15回川崎病全国調査と小児慢性特定疾患治療研究事業の情報を照合した.対象期間内に117人の発症が把握された.その内訳は,両方で把握された者が83人(71%),全国調査のみで把握された者が12人(10%),小児慢性事業のみで把握された者が22人(19%)であった.これにより全国調査での栃木県内の患者の把握割合を81%(95/117)と推定した.全国調査で把握できない患者の理由として,調査に非協力の医療機関への受診が考えられた.また,小児慢性事業で把握できない患者の理由として,「川崎病による入院」という認定基準を満たさないことや,保護者の意思により申請しないことが考えられた.

【原著】
■題名
選択的IgG2欠乏症の2症例
■著者
マツダ(株)マツダ病院小児科
藤井 裕士  柏   弘  稲田 准三  元重 京子
■キーワード
選択的IgG2欠乏症,肺炎球菌特異IgG2抗体,インフルエンザ桿菌特異IgG2抗体
■要旨
 IgG2欠乏症は,1991年以降本邦でも報告が増加傾向にあるが,詳細な検討例は少ない.我々は幼少時より中耳炎・肺炎などを繰り返し易感染性を示した選択的IgG2欠乏症の2症例において血清IgGサブクラス値,肺炎球菌特異IgG2抗体及びインフルエンザ桿菌特異IgG2抗体を経時的に測定した.症例1は正常な血清IgG2値を示し,さらに肺炎球菌特異IgG2抗体とインフルエンザ桿菌特異IgG2抗体に解離が認められ抗肺炎球菌特異的IgG2抗体欠乏症と考えられた.一方,症例2のIgG2は30mg/dl以下で肺炎球菌特異IgG2抗体及びインフルエンザ桿菌特異IgG2抗体共に極めて低値でIgG2欠損症と考えられ,選択的IgG2欠乏症の病態の多様性が示唆された.3歳を過ぎ,血清IgG2及び肺炎球菌特異IgG2抗体の上昇と共に感染頻度が減少し,患児にみられた易感染性は一過性の病態であったと考えられる.


【原著】
■題名
非血縁者間臍帯血移植後,WAS蛋白発現解析により混合キメラを追跡中のWiskott-Aldrich症候群の1例
■著者
茨城県立こども病院小児科1),東邦大学第二小児科2),同第一小児科3)
筑波大学臨床医学系小児科4),土浦協同病院小児科5)
北海道大学大学院医学研究科遺伝子治療6)
小林 千恵1) 小池 和俊1) 渡邊 温子1)2) 徳山 美香1)3)
福島  敬1)4) 泉  維昌1) 田村 和喜1) 磯部 剛志1)
前田 浩利5) 土田 昌宏1) 有賀  正6) 崎山 幸雄6)
■キーワード
Wiskott-Aldrich syndrome,臍帯血移植,混合キメラ,flow cytometry
■要旨
 Wiskott-Aldrich症候群の1男児例に脾照射先行,TBI, Cyclophosphamide, ALGを前処置としてHLA-B一座不一致女児から非血縁者間臍帯血移植を行った.混合キメラの状態が19カ月続いており,骨髄細胞の異性間FISHではXY細胞が70%と患者優位であるが,末梢血の単球・リンパ球分画別の抗WASP(Wiskott-Aldrich syndrome protein)モノクローナル抗体を用いたFlow Cytometry分析では,リンパ球の90%以上,単球の50%前後がドナータイプである.移植後,血小板数は低値が続いているが徐々に増加傾向にあり,出血傾向や易感染性を認めていない.ドナーリンパ球優位の混合キメラの状態で,移植後のQOLは保たれている.


【原著】
■題名
脊髄髄膜瘤を合併したX連鎖血小板減少症の1例
■著者
京都第一赤十字病院小児科1),東北大学加齢医学研究所発達病態研究分野2)
東京医科歯科大学医学部小児科3)
小松 博史1) 光藤 伸人1) 辻井  久1) 垣田 静代1)
生田 治康1) 川井  伸2) 今井 耕輔3) 野々山恵章3)
■キーワード
Wiskott-Aldrich症候群,X-linked thrombocytopenia, Wiskott-Aldrich syndrome protein遺伝子,脊髄髄膜瘤,血小板サイズ
■要旨
 脊髄髄膜瘤を合併し,生下時から3年以上経過観察しえたX-linked thrombocytopeniaの1例を報告した.血小板数は20,000/μl前後と持続的に低く,平均血小板容積は,6.3 flと小さかった.Wiskott-Aldrich syndrome protein(WASP)遺伝子にはsplicing異常が存在し,抗WASPモノクローナル抗体(5A5)を用いたフローサイトメトリーでは,WASPの発現は弱かった.Exon 7を認識する抗WASPポリクローナル抗体(Ab503)を用いたWestern blottingでは,WASP蛋白は正常と同等の濃度で認められ,免疫不全の合併の可能性は低いと考えられた.脊髄髄膜瘤根治術・シャント術には血小板輸注にて対応し得た.先天性血小板減少のうちサイズの減少を伴うものは,WASP遺伝子異常症に限定され,血小板サイズの測定・フローサイトメトリーは診断に有用である.WASP遺伝子と二分脊椎症の発症要因の両者に変異や影響を与えるような何らかの因子が胎内で作用した可能性は否定できない.
 サイズの低下を伴う先天性の血小板減少を主症状とするX-linked thrombocytopenia(XLT)は,最近Wiskott-Aldrich症候群(WAS)と同様Wiskott-Aldrich syndrome protein(WASP)遺伝子異常が原因であることが明らかになった1).今回我々は,脊髄髄膜瘤を合併し,脊髄髄膜瘤根治術・脳室腹腔シャント術(V-Pシャント術)を行い,その後3年以上経過観察しえたXLTの1例を経験したので報告する.


【原著】
■題名
NICUから退院した13トリソミーの3例
■著者
和歌山県立医科大学周産期部NICU1),同 救急集中治療部2)
熊谷  健1) 樋口 隆造1) 辻  知見1) 宮脇 正和1)
奥谷 貴弘1) 吉川 徳茂1) 北野 尚美2)
■キーワード
13 trisomy,NICU,緩和ケア
■要旨
 患児が両親と分離するNICUの特殊な環境に一旦入院すると,13トリソミーなどの致死的疾患は,その重症度から家族の受容が困難になることがある.
 我々は2000年3月から2001年4月の間に13トリソミーを3例経験し,3例とも「児にとっての最善の利益」についてNICU医療者と両親が話し合い,両親の元に帰ることを選択した.その過程でNICU入院中でも両親が患児を家族の一員として育てること,予後不良疾患の児を持つ家族の気持ちの揺れを受容することに努めた.
 またNICUに入院した予後不良疾患児を家庭で育てるには,NICUと地域医療機関・保健所との連係が必要なのは無論であるが,今後は地域で有効な在宅援助が受けられる社会基盤を整備することも必要である.


【原著】
■題名
顆粒球除去療法が奏効した劇症型潰瘍性大腸炎の1小児例
■著者
松下記念病院小児科
森 佳奈子 千代延友裕 石田 宏之
西村 康孝 吉原 隆夫 粕淵 康郎
■キーワード
潰瘍性大腸炎,顆粒球除去療法
■要旨
 我々は全大腸炎型の潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis;UC)を中等症で発症し,ステロイドの強力静注療法を2週間施行したが改善せず,臨床的に劇症へと進行した12歳男児を経験した.この症例に対し顆粒球除去療法(Granulocytapheresis;GCAP)を2クール施行し治療効果を得たので報告する.
 患児は劇症のUCと判断し第1クール目は5週間で計6回のGCAPを施行した.臨床的には2回目のGCAP終了時に改善を認めたが第1クール終了後の内視鏡検査で改善所見を得られなかったため,第2クール計5回を追加施行した.第2クール終了後は臨床的,内視鏡的にも改善を認めステロイドの漸減も可能となった.この間GCAPによる副作用の出現はなく現在も再発を認めていない.GCAPは小児のUCにおいても安全に施行でき,有効であると考えられた.


【短報】
■題名
プランルカストによる薬剤誘発性ミオパチーが疑われた症例
■著者
宍粟総合病院小児科
前 田 太 郎
■キーワード
プランルカスト,ロイコトリエン拮抗薬,薬剤誘発性ミオパチー
■要旨
 症例は15歳,女.気管支喘息にてプランルカストを4年間服用していた.平成14年5月初旬よりこむらがえりが頻発するようになり,CK 423IU/lと上昇を認めたため,プランルカストの投与を一時中止した.CK 150IU/lと低下し,自覚症状も消失したのでプランルカストの再投与を試みたところ,症状再燃し,CK 1,740IU/lと再上昇した.薬剤の中止と,安静のみで症状は2日程度で速やかに軽快した.後日施行したリンパ球刺激試験で陽性結果を得,本症例はプランルカストによる薬剤誘発性ミオパチーと診断した.





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