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日本小児科学会雑誌 目次 |
第106巻 第11号/平成14年11月1日
Vol.106, No.11, November 2002
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【原著】 |
■題名 |
Growth Potential法と日本人標準Bayley-Pinneau法を用いた低身長児の予測最終身長の検討 |
■著者 |
国立小児病院内分泌代謝科1),
国立小児病院小児医療研究センター内分泌代謝研究部2),
東邦大学大森病院第一小児科3)
田中 敏章1)2) |
横内かおり1) |
前坂 明子1) |
長石 純一1) |
池間 尚子1) |
堀川 玲子1) |
佐藤 直子2) |
勝又 規行2) |
佐藤 真理2)3) |
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■キーワード |
低身長,最終身長,Growth potential法,日本人標準Bayley-Pinneau法 |
■要旨 |
最終身長に達した内分泌学的に異常のないいわゆる非内分泌性低身長小児に対して,retrospectiveにGrowth potential法(GP法)と日本人標準Bayley-Pinneau法(BP法)を用いてその有用性を検討した.対象は,国立小児病院内分泌代謝科で無治療で最終身長まで経過観察された成長ホルモン分泌能が正常な低身長小児23名(男子12名,女子11名).最終身長の予測は,GP法で骨年齢が予測の因子として用いられる男子骨年齢11.5歳以降,女子骨年齢9.5歳以降で行った.
GP法による予測誤差の平均は,男子では1.3±3.2cm,女子では−1.0±2.9cmで,男子は予測誤差0cmと比較して有意差はなかったが,女子では有意差(p<0.05)が認められた.しかし,男子では骨年齢11歳,12歳台では過大評価し,13歳台で過小評価する傾向が見られ,女子では骨年齢11歳台で過小評価する傾向が見られた.男子においては,骨年齢13歳以降では91%が,女子においても骨年齢11歳以上では74%が±3cm以内の誤差で最終身長を予測でき,臨床上も有用と考えられた.
BP法による予測誤差の平均は,男子では3.4±3.5cm,女子では2.4±3.7cmで,男女とも最終身長を過大評価する傾向が明かであった.
成長障害の臨床で用いるには,GP法の方が有用であると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
川崎病冠動脈障害の描出における3次元Magnetic Resonance Coronary Angiographyの有用性 |
■著者 |
東京逓信病院小児科,同放射線科**,現在:北原脳神経外科病院*
稲葉利佳子 |
鈴木 淳子 |
佐藤 克彦* |
小野 正恵 |
保科 清 |
古山 民夫** |
武村 濃** |
是永 建雄** |
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■キーワード |
川崎病,冠動脈障害,MRCA(Magnetic Resonance Coronary Angiography) |
■要旨 |
川崎病冠動脈病変のX線冠動脈造影検査(XCAG)を非侵襲的なMagnetic Resonance Coronary Angiography(MRCA)で代用しえるか否かを検討した.対象は川崎病既往の30例で内訳は,発症後6カ月以内の9例,遠隔期経過観察が19例,成人期のスクリーニングの2例である.使用装置はSIEMENS社製MAGNETOM Symphony 1.5T,3D法で撮像し,得られた所見をXCAG(14例),および心エコー所見(30例)と比較検討した.MRCAで冠動脈瘤は全17カ所(100%),拡大は5カ所中4カ所(80%),狭窄はXCAG影上の7カ所とMRCA上で新しい出現を認めた1カ所を加え,8カ所,ACバイパスグラフトも2本(100%)描出され,いずれもXCAGや心エコー所見と一致した.MRCAは川崎病急性期直後の瘤形成有無の確認,狭窄性病変進行の経過観察,成人期の病変のスクリーニングに有用であると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
川崎病に対する免疫グロブリン400mg/kg/日5日間投与不応例の症例対照研究 |
■著者 |
東京慈恵会医科大学小児科1),自治医科大学公衆衛生学2),埼玉県立大学3)
上原 里程1)2) |
浦島 崇1) |
浦島 充佳1) |
藤原 優子1) |
勝沼 俊雄1) |
衛藤 義勝1) |
中村 好一2) |
柳川 洋3) |
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■キーワード |
川崎病,免疫グロブリン,冠動脈障害,症例対照研究 |
■要旨 |
目的:川崎病に対する免疫グロブリン400mg/kg/日5日間投与不応例の早期予測因子の同定を目的とした.
方法:性,年齢,受診医療施設および入院年月日をマッチングさせた症例対照研究を実施した.第30病日の時点で冠動脈障害を有していた例をケース,同時点で冠動脈障害を認めなかった例をコントロールと定義した.免疫グロブリン投与24時間前から投与後3日までの最高体温と,投与前,投与中および投与後の白血球数,好中球分画,血色素量,ヘマトクリット,血小板数,血清アルブミン,AST,ALT,LDH,HDLコレステロールおよびCRPについて両群で比較した.
結果:12組のケースとコントロールのペアが得られた.ケースの冠動脈障害の程度は,拡張42%,瘤(中等度)50%,瘤(巨大)8%であった.平均最高体温は,免疫グロブリン投与4日目から投与後2日にかけて,統計学的有意差は認めないもののケースで高い傾向にあった.血液検査項目では,免疫グロブリン投与後において白血球数,血清アルブミン,HDLコレステロールおよびCRPに両群で有意差を認めたが,投与前および投与中はいずれの項目も有意な差を認めなかった.
結論:免疫グロブリン400mg/kg/日5日間投与では,投与4日目以降に解熱の程度がよくないことは,冠動脈障害を残す危険因子となる可能性があった.しかし,日常検査の血液検査項目には,不応例に対するより早期の予測因子となりうる項目を見出せなかった. |
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【原著】 |
■題名 |
Respiratory syncytial virusによる乳幼児下気道感染症の臨床的検討 |
■著者 |
うえむら小児科内科クリニック1),
神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻環境応答医学講座環境医学教育研究分野2)
植村幹二郎1) 西尾 久英2) |
■キーワード |
Respiratory syncytial virus,気管支喘息,下気道感染,反復感染 |
■要旨 |
Respiratory syncytial virus(RSV)は急性細気管支炎の原因となる事が知られているが,プライマリーケアの現場におけるRSV感染症患者への対応はいまだ確立していない.我々は,RSV感染症患者の実態を把握する目的で,1998〜2001年の冬季3シーズンに受診した乳幼児下気道感染症患者1,351例について患者鼻汁中のRSVをEIA法で検索した.陽性を示した668例をRSVによる下気道感染症と診断し,解析を行った.本症の患者数は12,1月にピークを示した.患者の40%に喘鳴を認め,そのうち約半数は喘息発作であった.気管支喘息児は年長になってもRSVによる下気道症状を呈することが多く,肺炎の罹患頻度も高かった.気管支喘息児にとってRSV感染症は管理上重要な疾患である. |
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【原著】 |
■題名 |
重症新生児仮死に対する選択的頭部冷却療法施行時における呼吸,循環動態の変化 |
■著者 |
聖隷浜松病院総合周産期母子医療センター新生児科,同 小児科*,
共立水戸病院小児科**
岩島 覚 |
犬飼 和久 |
大木 茂 |
西尾 公男 |
濱島 崇 |
安田 和志 |
杉浦 弘 |
河野 親彦* |
田中 敏博** |
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■キーワード |
頭部冷却療法,重症新生児仮死,合併症,呼吸,循環動態 |
■要旨 |
重症新生児仮死10例に対し選択的頭部冷却療法を施行し,冷却前,冷却中,復温後における各種パラメーターの変動について検討した.方法は鼻咽頭温を脳温の指標とし,鼻咽頭温を34〜35℃,直腸温を36℃に設定し平均59.9±6.7(38.5〜97.8時間)時間冷却後,24時間毎に0.5℃復温した.目標鼻咽頭温には冷却開始後135分で達した.冷却療法前後における血圧の変動は認めず心拍数は冷却開始後2時間で低下した.1例において施行前胎便吸引症候群,遷延性肺高血圧症の合併を認めたがNO吸入療法等にて経過良好であった.冷却療法施行前後における心収縮能の低下,尿量の減少は認めなかった.重症新生児仮死における選択的頭部冷却療法は,厳重なモニター管理下において安全に施行できる療法だと思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
骨折を含む重篤なくる病所見を呈した超低出生体重児双胎例 |
■著者 |
千葉県こども病院新生児未熟児科1),昭和大学小児科2)
水野 克己1) |
大戸 秀恭1) |
藤巻孝一郎1) |
山岡 明子1) |
澤田まどか1) |
斎川 紀子2) |
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■キーワード |
未熟児代謝性骨疾患,ビタミンD代謝異常,超低出生体重児 |
■要旨 |
超低出生体重児では胎内でのカルシウム(Ca),リン(P)の蓄積量が不足した状態で出生し,出生後もCa,Pの摂取量は不十分である.血清中のCa,P濃度を維持するため,骨からCa,Pが動員され未熟児代謝性骨疾患が出現する.私達が経験した児は在胎26週,出生体重650g,736gの双胎で,他院にて未熟児代謝性骨疾患と診断され1α(OH)D3を投与されていた.転院時(日齢117)には,血清アルカリフォスファターゼ,副甲状腺ホルモンは著明な高値を,平均骨密度は低値で両児とも骨折の既往を認めた.Ca,Pを補充し,1α(OH)D3も0.5〜0.55μg/kg/日まで増量し骨所見は改善した.経過と検査所見からCa,P欠乏による未熟児代謝性骨疾患は否定的であった.超低出生体重児でもビタミンD代謝異常を合併している可能性もあり,尿中P排泄,血清アルカリフォスファターゼ値,骨密度に注意する必要性が示唆された. |
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【原著】 |
■題名 |
耳下腺炎に合併した環軸椎回旋位亜脱臼の1例 |
■著者 |
京都第一赤十字病院小児科
小谷 牧 |
小松 博史 |
西村 陽 |
和田 紀子 |
房岡 徹 |
生田 治康 |
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■キーワード |
環軸椎回旋位亜脱臼,耳下腺炎,後天性斜頚,Grisel症候群 |
■要旨 |
耳下腺炎に合併した環軸椎回旋位亜脱臼の5歳女児例を報告した.徐々に増悪する有痛性斜頸を呈し,頸を左へ傾けて顔を右に向けた,いわゆるcock robin positionをとっていた.薄切,骨条件の頸部CTで歯突起環椎側塊間距離の左右非対称を認め,3D-CTでは環椎側塊のoverrideの所見を認めた他,立体的把握に有用であった.安静,鎮痛剤のみで軽快した.本症は小児期に多く,外傷のほか,耳鼻咽頭領域の炎症に続発するため,小児科医の本症に対する認識が大切である. |
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【原著】 |
■題名 |
アデノウイルスの混合感染が考えられた結核性胸膜炎の10歳女児例 |
■著者 |
斗南病院小児科1),札幌医科大学医学部小児科2)
黒岩 由紀1) |
鈴木 将史1) |
田中 藤樹1) |
鎌崎 穂高1) |
毋坪 智行1) |
堤 裕幸2) |
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■キーワード |
結核性胸膜炎,アデノウイルス,混合感染,小児 |
■要旨 |
アデノウイルスの混合感染が考えられた結核性胸膜炎の1例を経験した.症例は10歳の女児で,発熱,咳嗽,胸痛を主訴に当科紹介入院となった.入院時,咽頭アデノウイルス抗原陽性,胸水中アデノウイルスDNAが陽性であり,さらに胸水培養にて結核菌が検出された.初回入院時,塩酸ミノサイクリンの投与を行い肺炎,胸水貯留は軽快傾向を示したが,結核性胸膜炎の診断後,イソニアジド,リファンピシンの2剤併用による治療を開始し6カ月間の内服にて胸部X線写真の改善を確認した.結核の感染時期,経路は不明であるが,アデノウイルス感染が発症増悪因子になった可能性が考えられた.抗結核薬無投与で症状,X線所見が改善したことは,結核性胸膜炎が自然軽快したことが考えられるが,アデノウイルス感染が病変の主体であった可能性もある. |
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【原著】 |
■題名 |
軽微蛋白尿と沈渣中の尿細管上皮を契機に発見された特発性尿細管性蛋白尿症の1女児例 |
■著者 |
弘前大学医学部小児科1),さしなみ小児科クリニック2),
国立療養所岩木病院小児科3),東京大学医学部小児科4)
鈴木 康一1) |
中畑 徹1) |
田中 完1) |
差波 司2) |
和賀 忍3) |
関根 孝司4) |
五十嵐 隆4) |
伊藤 悦朗1) |
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■キーワード |
特発性尿細管性蛋白尿症,尿細管上皮,尿β2―ミクログロブリン,CLCN 5,3歳児検尿 |
■要旨 |
3歳児検尿で軽度蛋白尿と尿沈渣中の尿細管上皮を指摘されたことから診断に至った特発性尿細管性蛋白尿症(ILMWP)の4歳女児例を報告した.当科受診時,早朝尿で尿蛋白62mg/dl,尿中β2 microglobulin(β2MG)85,520μg/lと高値で高カルシウム尿症(Ca/Cre 0.49)を認めた.腎生検では糸球体は微小変化,間質は著変を認めなかったが尿細管上皮の脱落所見を認めた.蛍光抗体法,電顕では有意な所見はなかった.家族歴では同胞はなく,母親の尿中β2MGは正常範囲内であったが,父親は4,155μg/lと高値であった.クロライドチャンネルN5(CLCN5)の遺伝子変異検索では検索した範囲での変異点は確認されなかったが,臨床的にはILMWPと診断された.
本症例は典型例とは異なる低年齢女児であり,診断には3歳児検尿での尿沈渣中の尿細管上皮の存在が早期診断の契機となっていた. |
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【原著】 |
■題名 |
反復性髄膜炎を主訴とした経蝶形骨洞髄膜瘤の乳児例 |
■著者 |
琉球大学付属病院周産母子センター1),沖縄赤十字病院小児科2),
那覇市立病院小児科3),琉球大学医学部小児科学講座4)
安里 義秀1) |
祖慶 良克2) |
屋良 朝雄3) |
勝連 啓介4) |
太田 孝男4) |
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■キーワード |
頭蓋底髄膜瘤,反復性髄膜炎,3次元CT |
■要旨 |
私たちは頭蓋底髄膜瘤を原因とする反復性髄膜炎の11カ月女児例を経験した.頭蓋底髄膜瘤は唇裂口蓋裂,離眼症などの外見上の異常や視神経・眼底の異常,脳梁欠損などの中枢神経系の異常などの合併が報告されている.しかしながら,私たちの経験した症例では上記の合併症は認められず,反復性髄膜炎の原因検索の過程で行われたMRI,3次元X線CT(3D-CT),脳漕シンチグラフィーなどの画像診断によって経蝶形骨洞髄膜瘤と診断された.繰り返す髄膜炎の原因として頭蓋底髄膜瘤も考慮する必要があると思われた. |
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【短報】 |
■題名 |
特発性CD4陽性細胞減少症の兄弟例 |
■著者 |
大阪府立母子保健総合医療センター第三小児内科
宮村 能子 |
八木 啓子 |
浜田 聡 |
佐藤恵実子 |
稲垣 二郎 |
安井 昌博 |
岡村 隆行 |
坂田 尚己 |
井上 雅美 |
河 敬世 |
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■キーワード |
特発性CD4陽性細胞減少症,CD4陽性細胞,同種造血幹細胞移植 |
■要旨 |
特発性CD4陽性細胞減少症(idiopathic CD4 T+lymphocytopenia:ICL)の小児兄弟例を経験した.本疾患は,薬剤やHIV感染症等の明らかな原因を認めず,慢性的にCD4陽性細胞が減少し,これに起因した免疫不全が主症状となるまれな疾患である.これまでに42例の成人例が報告されているが,小児例や兄弟例の報告はない.兄弟例であることから共通の遺伝子異常の存在が示唆される. |
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