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日本小児科学会雑誌 目次 |
第106巻 第4号/平成14年4月1日
Vol.106, No.4, April 2002
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【原著】 |
■題名 |
高度の肺高血圧患者における航空機搭乗中の経皮的酸素飽和度の検討 |
■著者 |
東邦大学医学部第一小児科学教室,帝京大溝口病院小児科*
高月 晋一 |
松裏 裕行 |
竹内 大二 |
星田 宏 |
中山 智孝 |
小澤 安文* |
石北 隆 |
佐地 勉 |
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■キーワード |
原発性肺高血圧,Eisenmenger症候群,航空機,低酸素血症,SpO2 |
■要旨 |
肺高血圧を合併する重症心疾患患者の航空機内における酸素飽和度(SpO2)の変動を検討した.対象は原発性肺高血圧(PPH)5例,Eisenmenger症候群(Es)3例の計8例で,健常人14例のデータと比較した.方法は帝人社製パルソックスM2○Rを用いて手指におけるSpO2,心拍数を1分毎に測定し,航空機搭乗中のSpO2の変化を室内気及び酸素投与下(2L/min,経鼻カニューラ)測定した.その結果,機内における酸素非投与時のEs群のSpO2の低下は平均−20%であったが,酸素投与下のPPH及びEs群は平均−8%の低下に留まった.一方健常群もSpO2の軽度の低下を認めたが,PPH群とEs群は酸素投与下においてもSpO2の低下は健常群に比べ大きい傾向があった.航空機において重症肺高血圧疾患患者では低酸素血症の増悪を呈する事が明らかになり,SpO2モニタリング及び酸素投与を行うことが望ましいと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
小児がん患児の心理的晩期障害としての心的外傷後ストレス症状 |
■著者 |
お茶の水女子大学大学院1),聖路加国際病院小児科2)
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■キーワード |
小児がん,心理的晩期障害,心的外傷後ストレス症状 |
■要旨 |
治癒後の小児がん患児の一部に認められる心理的問題を,「突然の診断や過酷な治療・入院の経験がトラウマとなって引き起こされる様々なPTSD(心的外傷後ストレス障害)症状」という視点から検討する.58例の患児に対してPTSD症状をスクリーニングする検査を実施し,全21項目について主成分法,バリマクス法による直交回転を用いた因子分析を行ったところ,I.情動調整困難/闘病についての刻印的記憶(26.6%),II.精神的・感覚的過敏性と鈍麻反応(19.4%),III.闘病体験の否認/低い自己評価(31.1%),IV.解離・防衛反応(45.2%),V.対人的無関心(24.2%)の5因子が抽出された.これらは患児の背景要因(性別,調査時年齢,発症年齢,告知の有無)及び患児自身の主観的要因(特性不安,治療強度の主観的評価,ソーシャルサポートの主観的評価)によって発症が有意に異なっていた.しかし,生命危険度の主観的評価は関係していなかった. |
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【原著】 |
■題名 |
急性気道感染症に罹患した乳幼児の上咽頭からの分離菌 |
■著者 |
東北労災病院小児科1),かやま小児科医院2),かわむらこどもクリニック3),のりこ小児科4),桂内科こどもクリニック5),
高松小児科医院6),木町小児科医院7),池田クリニック8),(財)微生物化学研究所9)
遠藤 廣子1) |
高柳 玲子1) |
加藤 卓1) |
嘉山 益子2) |
川村 和久3) |
佐藤 紀子4) |
下田 春海5) |
高松 徳光6) |
田野 みよ7) |
綿谷かおる8) |
生方 公子9) |
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■キーワード |
ペニシリン耐性肺炎球菌,β-ラクタマーゼ非産生性アンピシリン耐性インフルエンザ菌,乳幼児,保育園児,急性気道感染症 |
■要旨 |
急性気道感染症に罹患した3歳未満乳幼児を対象に上咽頭ぬぐい液細菌検査を施行した.抗菌薬前投与の無い181名(I群)と3日以上の抗菌薬投与にても症状改善の無い56名(II群)において分離菌を比較した.肺炎球菌はI群の58.8%,II群の53.6%から分離され,うちペニシリン耐性菌はI群で77.6%,II群で96.7%,マクロライド耐性菌はI群で71.4%,II群では89.7%を占めており,薬剤耐性を認めない肺炎球菌はI群の15.7%に認められたがII群では皆無であった.インフルエンザ菌はI群の38.2%,II群の37.5%から分離され,うちBLNARはI群で40.0%,II群で28.6%,β―ラクタマーゼ産生菌はI群で6.0%,II群で19.0%を占めていた.
これら耐性菌は市中感染菌として重要であるとともに,気道感染症難治化の原因となっていることが判明した.耐性菌は下気道炎および中耳炎合併例からより高率に,また保育園児から高率に分離された. |
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【原著】 |
■題名 |
RSウイルス再感染罹患時の臨床像に関する検討 |
■著者 |
公立相馬総合病院小児科1),福島県立医科大学医学部小児科学講座2)
川崎 幸彦1)2) |
細矢 光亮2) |
高橋 亜依1) |
増子 晴美1) |
片寄 雅彦1) |
鈴木 仁2) |
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■キーワード |
RSウイルス,再感染,重症度 |
■要旨 |
RSウイルス(RSV)再感染罹患時の臨床像について検討した.対象は1994年から1996年までの3年間に当科でRSV初感染と診断し,以後3年間経過観察中にRSV再感染に罹患した41症例である.これら患児の初感染と再感染について臨床病型,臨床症状や重症度などを比較した.臨床病型は初感染では細気管支炎,肺炎が,再感染では気管支炎,咽頭炎が多かった.再感染では初感染と比較して発熱,陥没呼吸,喘鳴の出現率が低かった.再感染患児の22%が入院加療を要したが,酸素投与を必要とするような重症例はなかった.再感染症例中4例にRSV再々感染がみられ,全例下気道感染症を呈した.再感染時の症状は初感染時と比較して軽症で経過し,重症例は少なかったが,再々感染症例では全例入院加療を要し,症状の軽症化はみられなかった. |
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【原著】 |
■題名 |
乳幼児健診における難聴児発見の試み |
■著者 |
富良野協会病院小児科
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■キーワード |
乳幼児健診,難聴児,スクリーニング,聴性脳幹反応 |
■要旨 |
乳幼児健診における難聴児の発見率向上を試みた.対象は,富良野市など1市3町で1997年9月からの3年間に乳幼児健診を受けた児.鈴などを用いた簡易聴力検査で異常があった児の他,ことばの遅れや家族歴から難聴が疑われた児に対し積極的に耳鼻科診察やauditory brainstem response(ABR)検査を行った.ABR検査の対象51例中,左右いずれかのV波閾値が40dB以上あった児は7例であった.このうち,3例が中耳炎治療後に,1例は髄鞘形成進行に伴い聴力が正常化し,残る3例が永続性の両側難聴と診断された.教育的介入が必要な永続性の両側難聴児の発見数は対象1,000人あたり,約2.1人であり,診断時期は平均で生後28.3カ月であった. |
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【原著】 |
■題名 |
サラゾスルファピリジン治療により汎血球減少を来した全身型若年性関節リウマチの1例 |
■著者 |
岩手県立北上病院小児科1),弘前大学医学部小児科2)
中畑 徹1)2) |
平野 浩次1) |
伊東 亮助1) |
小野寺典夫1) |
田中 完2) |
和賀 忍2) |
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■キーワード |
全身型若年性関節リウマチ,サラゾスルファピリジン,汎血球減少 |
■要旨 |
4歳発症の全身型若年性関節リウマチ(JRA)の男児の治療経過中に非ステロイド性消炎剤,ステロイド剤(ス剤),メトトレキサート,オーラノフィン,ミゾリビンを使用したが,ス剤依存性のためサラゾスルファピリジン(SASP)の併用を開始した.SASP開始後2週間で汎血球減少が出現し,骨髄検査にて有核細胞数45,500/μlと著明な減少を認めた.ス剤以外の薬剤の中止により汎血球減少は速やかに改善傾向を示した.汎血球減少出現前後の経過からみて,本症例における汎血球減少はSASPが誘因と考えられた.
これまでSASPは疾患修飾性抗リウマチ薬としてJRAでも使用されているが,汎血球減少を来した詳細な報告は極めて少ない.JRAにおけるSASP療法では汎血球減少の出現にも十分留置する必要がある. |
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【原著】 |
■題名 |
膵Solid and cystic tumorの治療後に膵機能低下を示した15歳男児例 |
■著者 |
幌南病院小児科
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■キーワード |
Solid and cystic tumor,pancreatectomy,chemotherapy,Pancreatic function,IDDM |
■要旨 |
7歳時に膵のSolid and cystic tumorで腫瘤摘出術を受け,15歳時に再発した.膵頭部十二指腸切除術を受け,後腹膜への浸潤を認めたため,その後2年間cyclophoshamide,cisplatine,vincristineなどを含む化学療法を行った.膵臓を30%切除したのみであったが,化学療法終了1年目頃から膵外分泌機能の低下と耐糖能低下を示した.膵部分切除と化学療法を行った場合は,膵機能低下を来さないか長期に観察する必要がある. |
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【原著】 |
■題名 |
リポ蛋白糸球体症の1例 |
■著者 |
山形大学医学部小児科1),山形県立新庄病院小児科2)
松永 明1) |
沼倉 周彦1) |
簡野美弥子2) |
吉村 洋三2) |
早坂 清1) |
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■キーワード |
リポ蛋白糸球体症,Apo E Sendai,遺伝子,高脂血症 |
■要旨 |
リポ蛋白糸球体症は,III型高脂血症と腎糸球体毛細血管に特異的リポ蛋白を含んだ血栓様物質が認められる非常に稀な疾患である.本症には,アポ蛋白E(アポE)の遺伝子変異の関与は明らかではあるが,この変異を有していても必ずしも発症しない.今回,我々は3歳時に蛋白尿と軽度の血尿を指摘された6歳のリポ蛋白糸球体症の1女児例を経験したので報告する.患児はアポE遺伝子のR145P変異(Apo E Sendai)のヘテロ接合体であり,変異は患児の父親と妹にも認められた.父親は腎機能正常で尿異常も認められなかったが,妹には一過性の尿蛋白を認めた.発症には遺伝子変異に加えて,他の要因の関与が考えられ,変異を有する未発症者の経過観察は病態の解明に重要な情報を提供するものと考えられる. |
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【原著】 |
■題名 |
乳児期に末期腎不全に至った若年性ネフロン癆の1例 |
■著者 |
東京慈恵会医科大学附属柏病院小児科1),同 青戸病院小児科2),
東京慈恵会医科大学附属病院本院小児科3)
寺本 知史1) |
斎藤 義弘1) |
大野 京子1) |
小林 尚明1) |
玉置 尚司1) |
臼井 信男2) |
伊藤 文之1) |
久保 政勝1) |
衞藤 義勝3) |
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■キーワード |
若年性ネフロン癆,尿細管間質性腎症,乳児期,腎不全,infantile nephronophthisis |
■要旨 |
乳児期に末期腎不全に至った若年性ネフロン癆(juvenile nephronophthisis:以下JNと略す)の1例を経験した.症例は呼吸障害,貧血,腎機能低下を主訴とした11カ月の女児で,入院4時間後に心肺停止をきたし蘇生に反応せず死亡した.JNでは一般に加齢に伴って慢性的に腎機能低下が進行するが,乳児期に短期間で末期腎不全に至る症例も散見されinfantile nephronophthisis(以下INと略す)と提唱されている.本邦においてJNは過去に50例余りの報告がみられるが,INの特徴に合致する報告としては本症例が本邦2例目である.今日のところJNに対する明確な原因治療法はなく,乳児期に短期間で末期腎不全に至るINでは早期診断も困難である.近年JNやIN等の責任遺伝子がそれぞれ同定されつつあり,今後の病態解明が治療法の開発や発症の抑制につながるものと期待される. |
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【短報】 |
■題名 |
Miller症候群の1例 |
■著者 |
熊本市立熊本市民病院小児科1),人吉総合病院小児科2),
熊本大学医学部小児科3)
川田 潤一1) |
星野 洋2) |
原 紳也2) |
田中 直子2) |
木村 宏2) |
森島 恒雄2) |
関根 暉彬3) |
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■キーワード |
慢性活動性EBウイルス感染症,活性化T細胞療法 |
■要旨 |
慢性活動性EBウイルス感染症の13歳男児例に対して,活性化T細胞療法を行った.投与後EBウイルス特異的CD8陽性細胞の一過性の増加を認め,ウイルス量の減少や肝障害の改善がみられた.活性化T細胞療法は慢性活動性EBウイルス感染症の有効な治療法となる可能性が示唆された. |
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【短報】 |
■題名 |
Rieger奇形に心房中隔欠損症と感音性難聴を合併した1例 |
■著者 |
日本鋼管福山病院小児科
寺岡 通雄 |
石原 陽子 |
一ノ瀬洋次郎 |
喜多村哲朗 |
池田 政憲 |
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■キーワード |
Rieger症候群,感音性難聴,心房中隔欠損症,RIEG遺伝子 |
■要旨 |
Rieger奇形に心房中隔欠損症と感音性難聴を合併した2歳男児を経験した.本奇形に歯の低形成,臍周囲の皮膚退縮不全,特異な顔貌など,全身的な異常を伴う場合Rieger症候群と呼ばれるが,本症例にはこれらの症状を認めず,最近Cunningham,Baruchらによって報告された家系と一致する孤発例と考えられた.Rieger奇形に心房中隔欠損症と心房間動脈瘤を合併した報告もあり,心疾患の合併に注意して検索を行う必要がある. |
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