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日本小児科学会雑誌 目次 |
第106巻 第3号/平成14年3月1日
Vol.106, No.3, March 2002
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【原著】 |
■題名 |
人工乳のIgE抗体産生抑制作用 |
■著者 |
静岡県立こども病院感染免疫アレルギー科1),現 千葉大小児科2),
現 静岡市立静岡病院小児科3)
関根 裕司1) |
木村 光明1) |
山出 晶子1)2) |
鶴田 悟1)3) |
岡藤 郁夫1) |
吉田 隆実1) |
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■キーワード |
食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,母乳,人工乳,IgE抗体 |
■要旨 |
人工乳摂取は,牛乳蛋白に対するIgE抗体産生の原因となり得るが,逆に牛乳蛋白に対する免疫寛容を誘導し,IgE抗体産生を抑制する可能性もある.人工乳の実際の作用を明らかにするために,われわれは,乳児アトピー性皮膚炎患者を対象として,授乳期の栄養方法と牛乳特異的IgE抗体産生との関係について調査した.その結果,人工栄養児は母乳栄養児に較べ,牛乳特異的IgE値が有意に低いことが明らかになった(幾何平均値0.35対2.40 UA¥外字(9250)ml,p<0.005).さらに,前者では,卵白特異的IgE値(4.47対10.2 UA¥外字(9250)ml,p<0.02)や血清IgE値(51.3対131.8 IU¥外字(9250)ml,p<0.01)も,後者より有意に低かった.混合栄養児の牛乳および卵白特異的IgE値,そして血清IgE値は,人工栄養児と同等であった.これらの結果から,人工乳は経口免疫寛容誘導により,食物アレルゲンに対するIgE抗体産生を低下させる作用を持つことが示唆される. |
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【原著】 |
■題名 |
軽症胃腸炎に伴うけいれんの臨床的検討 |
■著者 |
千葉市立海浜病院小児科1),千葉大学医学部小児科2)
小俣 卓1) |
玉井 和人1) |
黒崎 知道1) |
中田慎一郎1) |
古島わかな1) |
元吉八重子1) |
高橋 良仁1) |
星岡 明1) |
太田 文夫1) |
河野 陽一2) |
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■キーワード |
胃腸炎,ロタウイルス,けいれん,フェノバルビタール |
■要旨 |
下痢,嘔吐を主訴に当科に入院した601例の胃腸炎症例のうち,19例を「軽症胃腸炎に伴うけいれん」と診断した.10例で便中ロタウイルス抗原が陽性であった.12例で複数回のけいれんを認めたが,すべて初回発作から20時間以内に消失した.現在まで,てんかんへの移行はなく,発達も正常である.
治療に関して,ジアゼパムでは,けいれん再発の抑制効果は得られなかった.フェノバルビタールについては,9例と少数例での検討ではあるが十分な導入量を使用すれば発作再発予防に有効と考えられた.またその効果により,従来の報告より短時間に発作が消失したと推察された. |
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【原著】 |
■題名 |
初発尿路感染症104例における,腎・尿路系異常の検討 |
■著者 |
松戸市立病院小児医療センター小児内科1),松戸市立病院泌尿器科2)
江口 広宣1) |
新津 健裕1) |
山本 祐子1) |
奥村 恵子1) |
上瀧 邦雄1) |
平本 龍吾1) |
小森 功夫1) |
中村 仁1) |
星 まり1) |
網代 成子1) |
林 龍哉1) |
村山 直人2) |
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■キーワード |
尿路感染症,膀胱尿管逆流,下部尿路異常 |
■要旨 |
初発尿路感染症104例に対し,腹部超音波,排尿時膀胱尿道造影を行い,基礎疾患の有無とその種類,割合を検討した.基礎疾患あり群<I群>59名と,基礎疾患なし群<II群>45名の 2 群に分け,更に上記I群の内,3年以上観察出来た27名をVURのグレードの推移に応じて3群[(A)自然軽快群19名(B)不変群1名(C)増悪群7名]に分類し,増悪に関わる因子を検討した.最も多かった異常はVUR38名で,次いで下部尿路異常28名であった.I群とII群の間に発症年齢,入院時血液・尿検査諸項目に有意な差を認めず,(A)群,(C)群間でもNAG(P<0.05)以外は差がなかった.またVURを有した児のうち15例(39.5%)に下部尿路異常が合併していた.尿路感染症患児に諸検査を行う場合は,下部尿路異常に対しても十分な注意が払われるべきと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
低出生体重児の腎の長径に関する検討 |
■著者 |
土浦協同病院新生児集中治療科
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■キーワード |
低出生体重児,腎の長径,超音波検査,多変量解析 |
■要旨 |
当科に入院した出生時体重2,500g未満の低出生体重児199例,398腎(在胎24から40週,出生時体重558〜2,484g)に出生後早期に超音波検査を行い,左右の腎の長径を測定した.全体で左腎の方が右腎よりも大きく,有意差を認めた.性差はなかった.在胎週数,出生時体重,出生時身長はいずれも腎の長径と正の相関を示したが,右腎,左腎とも出生時体重が最も高い決定係数(それぞれR2=0.616,0.604)が得られた.また,多変量解析(重回帰分析)を施行したところ,左右とも腎の長径に有意に寄与する因子は出生時体重のみであった.以上より,左右の腎の長径についてそれぞれ出生時体重別に参考基準値を設定した. |
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【原著】 |
■題名 |
胎便吸引症候群における急性期血清KL‐6およびSP‐Dの検討 |
■著者 |
東京医科大学小児科学教室
高見 剛 |
武井 章人 |
立花 真紀 |
熊田 篤 |
宮島 祐 |
星加 明徳 |
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■キーワード |
KL‐6,肺サーファクタント蛋白質D(SP‐D),間質性肺炎,胎便吸引症候群(MAS) |
■要旨 |
成人領域で間質性肺炎の活動性の指標として注目されている血清KL‐6および肺サーファクタント蛋白質D(SP‐D)について,胎便吸引症候群(MAS)における比較検討を行った.出生時の平均値は,血清KL‐6ではMAS群(n=50)218.2±18.5U¥外字(9250)ml,肺病変のない正期産新生児(コントロール群;n=50)161.1±9.1U¥外字(9250)mlでMAS群で有意に高値を示したが,血清SP‐DではMAS群66.9±10.2ng¥外字(9250)ml,コントロール群90.8±8.5ng¥外字(9250)mlと両群間に有意差は認められなかった.また,経時的推移における検討では,血清KL‐6はコントロール群(n=10)およびMAS軽症群(n=7)と比較しMAS重症群(n=7)で日齢3から10にかけて有意に高値を示したが,血清SP‐Dでは3群間に有意な変化は認められなかった.MASでの血清KL‐6の上昇は肺間質の炎症性変化の病態を反映し,呼吸状態の重症度の指標になると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
EBウイルスによる小児伝染性単核症の臨床的検討 |
■著者 |
国家公務員共済組合連合会幌南病院小児科
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■キーワード |
EB virus,伝染性単核症,小児 |
■要旨 |
小児のEBウイルスによる伝染性単核症70例を0〜2歳,3〜5歳,6〜15歳の3群に分け検討した.発熱期間は年長児で長かった.発疹と眼瞼浮腫は年少児で多くみられた.白血球数は低年齢ほど高かった.血清GOT・GPT値は年長児ほど高かった.血清LDH値は全年齢で高値を示した.EBウイルスのVCA‐IgM抗体価は低年齢で低かった.
年齢を考慮に入れた注意深い症状や検査所見の観察が小児のEBウイルスによる伝染性単核症の診断の精度を上げる. |
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【原著】 |
■題名 |
終末期の小児がんの子どもたちに認められた死の予感と不安 |
■著者 |
浜松医科大学小児科1),共立菊川総合病院小児科2),
県西部浜松医療センター小児科3)
藤井 裕治1) |
渡邉千英子1) |
岡田 周一1) |
山田さゆり1) |
本郷 輝明1) |
大関 武彦1) |
井上 紀子2) |
矢島 周平3) |
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■キーワード |
死の予感と不安,小児がん,死への準備教育,終末期医療 |
■要旨 |
小児がん患児が自らの死を予感し不安を表現する実態については十分に解明されていない.私たちは1994年から1999年までの6年間に当科で終末期医療を受け死亡した小児がん患児のうち18歳未満の24人を対象として,死の予感や不安の表現を診療録より求めた.さらに,それらの表現と終末期の状況や症状との関連について検討した.5歳児を最年少とした8人(33.3%)に死の言語的表現が認められた.これら死の表現を行った患児と病気説明の有無,final stage conferenceへの参加の有無,治療期間,ターミナルケアの状況,死亡時年齢,死因,死亡場所および終末期の症状である呼吸困難や疼痛の有無とは有意な関係は認められなかった.終末期の小児がん患児は誰でも死の予感や不安を持ち両親や医療者に問い掛ける可能性があるので,死にゆく子どもたちと接する者はそのコミュニケーションの方法に熟知しておく必要がある. |
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【原著】 |
■題名 |
学童期肥満の治療反応性に対する背景因子の影響 |
■著者 |
山梨医科大学小児科1),産業医科大学小児科2)
内田 則彦1) |
朝山光太郎2) |
林辺 英正1) |
土橋 一重2) |
中根 貴弥1) |
小寺 浩司1) |
中澤 眞平1) |
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■キーワード |
肥満,家族歴,行動療法,運動療法,多変量解析 |
■要旨 |
生活習慣自己管理チェックリストを用いた治療を200日以上継続して最終成績が判明した男児44例,女児29例の治療開始時点の身体計測指標および既往歴,運動歴,家族歴などの背景因子と,最終治療成績との関係を検討し治療反応性に影響する因子を解析した.最終肥満度は初診時肥満度(r=0.705),体脂肪率(r=0.268),出生時体重(r=0.346),肥満発症年齢(r=−0.275),父親のBMI(r=0.332)と有意に相関した.治療成功群と脱落群の比較では初診時肥満度,体脂肪率,出生時体重,父親のBMIが治療成功群で低値で肥満発生年齢は高く,一日平均歩数は多かった.ロジスティック回帰分析では,初診時肥満度55%以下,出生時体重3,250g以下では治療成功のオッズ比は各々4.4および2.9だった.運動量は多いほど治療反応性が良かった.本治療法は低学年で,高度肥満になる前に開始すれば有効性が高い.高度肥満児や出生児体重が高い場合は治療を強化する工夫が必要である. |
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【短報】 |
■題名 |
13C呼気テストによるフェニルケトン尿症患児および保因者のフェニルアラニン代謝能の検討 |
■著者 |
新潟大学大学院医歯学総合研究科内部環境医学講座小児科学分野1),
大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学2)
和田 雅樹1) |
菊池 透1) |
松永 雅道1) |
和田 有子1) |
岡野 善行2) |
西 泰明2) |
内山 聖1) |
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■キーワード |
フェニルケトン尿症,13C‐フェニルアラニン,呼気テスト |
■要旨 |
フェニルケトン尿症の児と保因者である両親,姉に対して13C呼気テストを施行し,フェニルアラニン代謝能を評価した.規定量の13C‐フェニルアラニンを経口投与し,投与後180分まで計9回の呼気を採取し,GC¥外字(9250)MSで呼気中の13CO2濃度を測定した.累積排出率180分値は患児が健常児の56.3%,両親と姉は健常人の62.2〜79.8%であった.本検査によりフェニルアラニン代謝能が評価できるとともに,患児のみでなく保因者でも代謝能が低下していることが示唆された. |
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【短報】 |
■題名 |
慢性活動性EBウイルス感染症における活性化T細胞療法の応用 |
■著者 |
岡崎市民病院小児科1),名古屋大学医学部小児科2),
株式会社リンフォテック3)
川田 潤一1) |
星野 洋2) |
原 紳也2) |
田中 直子2) |
木村 宏2) |
森島 恒雄2) |
関根 暉彬3) |
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■キーワード |
慢性活動性EBウイルス感染症,活性化T細胞療法 |
■要旨 |
慢性活動性EBウイルス感染症の13歳男児例に対して,活性化T細胞療法を行った.投与後EBウイルス特異的CD8陽性細胞の一過性の増加を認め,ウイルス量の減少や肝障害の改善がみられた.活性化T細胞療法は慢性活動性EBウイルス感染症の有効な治療法となる可能性が示唆された. |
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