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日本小児科学会雑誌 目次 |
第105巻 第8号/平成13年8月1日
Vol.105, No.8, August 2001
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【原著】 |
■題名 |
尿セルロプラスミン測定によるWilson病スクリーニング法の検討 |
■著者 |
(財)東京都予防医学協会1),日本大学医学部小児科2)
鈴木 健1) |
大和田 操2) |
穴澤 昭1) |
松本 勝1) |
北川 照男1) |
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■キーワード |
Wilson病,セルロプラスミン,スクリーニング,3歳児検尿,銅排泄量 |
■要旨 |
Wilson病には薬物療法が有効であるが,診断が遅れて肝障害や神経障害を残す症例も少なくなく,従って,発症前に診断をする必要がある.抗ヒト活性型セルロプラスミン(CP)モノクローナル抗体によるELISA法で尿と血液のCPを測定したところ,本症では正常対照者に比べて尿と血液のCP値が有意に低く,尿CPを測定してその早期診断が可能であった.しかし,少数ではあるが,これらの値が正常な症例もみられ,このような症例の早期発見は困難と思われた.また,蛋白尿を認める腎疾患々児の尿CP値は高いので,蛋白尿を伴うWilson病の発見は本法では不可能と思われた.尿CP値は,試料を4℃で保存すると約3日間殆ど変化せず,特にグルコン酸クロルヘキシジンを添加した容器を使用した場合,尿CPは比較的安定であった.上記の条件で尿CPを測定して本症をスクリーニングするのが良く,確定診断には,血液CP,銅および尿銅の測定と,遺伝子解析が良いと思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
白血病・非ホジキンリンパ腫寛解導入時の腫瘍崩壊症候群に対する持続腹膜透析と持続血液透析の有効性の比較検討 |
■著者 |
茨城県立こども病院小児1),独協医科大学病院小児科(血液)2),
筑波大学臨床医学系小児科3)
東邦大学第1小児科4),同 第2小児科5),山梨医科大学小児科6)
山崎 弥生1)2) |
田村 和喜1) |
福島 敬1)3) |
小池 和俊1) |
田中 宗史1)4) |
奈良 千春1)4) |
大嶋 政明1)4) |
徳山 美香1)4) |
渡辺 温子1)5) |
古市 嘉行1)6) |
泉 維昌1) |
磯部 剛志1) |
土田 昌宏1) |
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■キーワード |
急性リンパ性白血病,非ホジキンリンパ腫,腫瘍崩壊症候群,持続腹膜透析,持続血液透析 |
■要旨 |
腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome;TLS)発症の可能性の大きい白血病・非ホジキンリンパ腫患者に対して,持続腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis;CAPD),持続血液透析(continuous hemodialysis;CHD)を行い,その効果を比較検討した.CHD群は導入直後から大量の透析液が使用でき,TLSの腎機能障害発症因子と考えられる尿酸,リンの除去に優れていた.さらに,クレアチニン比の比較からもCAPD群よりもCHD群で明らかに優れた効果が認められた.上記の結果より,CHDは血管確保が可能な症例で,TLS発症の危険が大きい患者には積極的に行うべき治療法と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
長期間尿中podocyteの観察を行った小児期発症IgA腎症の検討 |
■著者 |
新潟県立吉田病院小児科
池住 洋平 |
原 正則 |
菅野かつ恵 |
石原 俊二 |
柳原 俊雄 |
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■キーワード |
IgA腎症,尿中podocyte |
■要旨 |
背景:私達は尿中の糸球体上皮細胞(podocyte)が,IgA腎症の進展に関与する管外性病変を反映することを報告してきた.今回尿中podocyte排泄の推移を観察することで管外性病変の進行を予測できるか検討した.
方法:当科で加療,経過観察を続けているIgA腎症の20例について2年以上尿中podocyte排泄の推移を観察した.
結果:経過観察中に排泄が減少し消失した群(A群;6例),持続して排泄がみられた群(B群;8例),排泄がほとんどなかった群(C群;6例)の3群が観察された.観察期間中に経皮的腎生検が行われた症例はA群4例,B群5例,C群1例で,このうち病理組織学的に管外性病変の進行が確認された4例はいずれもB群の症例であった.
結論:IgA腎症において,尿中のpodocyte排泄が持続している症例では,糸球体管外性病変が進行している可能性があると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
日本版MAI尺度による母性愛着の評価と関連要因に関する研究―第1報 |
■著者 |
岡山大学医学部保健学科
太 田 に わ |
■キーワード |
母性愛着,母子相互作用,日本版MAI尺度,家族の状況 |
■要旨 |
日本版MAI(Maternal Attachment inventry)尺度の信頼性・妥当性を検討することと母性愛着得点に関連する要因を明らかにすることを目的とし,自記式質問紙法による調査を行った.対象は岡山市の一病院を乳児健診のために訪れた1〜8カ月の乳児をもつ母親150名で,郵送により回答が得られた102名(68.0%)とした.MAI尺度の信頼性はcronbach’sのα信頼性係数0.94により内的整合性を認めた.妥当性は因子分析の結果から構成概念妥当性を認めた.母性愛着得点に関連する要因の分析結果では,生活の充実(p<0.001),母親の年齢,授乳の服装,配偶者の支援(p<0.01),分娩方法,子どもの好き度,育児の主な相談相手,家族関係(p<0.05)の8項目に統計的な差を認めた. |
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【原著】 |
■題名 |
小児救急医療における骨髄針による輸液路確保の経験 |
■著者 |
国立小児病院麻酔・集中治療科
本間 靖啓 |
中川 聡 |
鈴木 康之 |
阪井 裕一 |
宮坂 勝之 |
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■キーワード |
骨髄針,輸液路,蘇生 |
■要旨 |
国立小児病院では1996年に患者の急変時の輸液路確保のために骨髄針を導入した.2000年8月までに7症例に対して骨髄針による緊急輸液路確保を試みた.対象となった症例は4カ月から21歳で,5例は2歳未満であった.体重は6kgから26kgで,6例は10kg以下であった.7症例に対し合計12回の穿刺を行い9回で骨髄針の穿刺に成功し(成功率75%),薬剤や輸液の投与ができた.骨髄針穿刺までの時間は2分以内であった.骨髄針の穿刺が成功した5症例中,3症例では骨髄針を用いた蘇生手技は有効と判断された.心肺停止状態だった1例では自己心拍が再開し,ショック状態であった 2 例では循環動態の安定化を得ることができた.穿刺の失敗は 3 回であり,基本的手技の誤りが原因であった.骨髄針による輸液路確保は生命の危機的状態に陥った小児の治療に有効であると判断され,救急処置の基本手技として広く普及されることが必要である. |
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【原著】 |
■題名 |
ペンタゾシン長期投与母体から出生し,貧血とsubependymal pseudocystを合併した1例 |
■著者 |
木沢記念病院小児科
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■キーワード |
ペンタゾシン,禁断症状,貧血,subependymal pseudocyst |
■要旨 |
原因不明の痛みのため,ペンタゾシンを妊娠初期より長期投与されていた母体から出生し,貧血とsubependymal pseudocystを認めた男児を経験した.出生時の血液生化学検査でNa,K,Clの低下と貧血,頭部エコーでsubependymal pseudocystを認めた.出生時はペンタゾシンの禁断症状と思われる嘔吐が繰り返し認められた.Na,K,Clの低下は,母体がペンタゾシンの副作用と考えられる嘔吐を繰り返していた結果の電解質異常が原因と考えられた.
貧血とsubependymal pseudocystについてはペンタゾシン長期投与が原因になった可能性も考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
血栓性自然閉鎖を示した未熟児動脈管瘤の1例 |
■著者 |
北里大学医学部小児科
佐藤 雅彦 |
平石 聡 |
野渡 正彦 |
隅越 誠 |
広田 浜夫 |
武田 信裕 |
神前 泰希 |
松浦 信夫 |
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■キーワード |
動脈管瘤,血栓,心エコー図 |
■要旨 |
スクリーニング検査で動脈管瘤を認めた未熟児の1例において,その自然閉鎖の過程を心エコー検査を用い経時的に観察した.生後8時間に6.5×14.5mmの動脈管瘤とその肺動脈端および大動脈端の両側に狭小像を認めた.短絡血流は左―右方向で動脈瘤内は乱流を示した.生後1日には瘤内に血栓を認め,生後2日に動脈管は閉鎖した.この間,動脈管瘤に起因する症状はみられず,生後19日の退院前の心エコー図上,動脈管瘤内血栓の肺動脈,大動脈側への突出像はみられなかった.本報告は,心エコー検査を行わなければ気付かれずに経過する動脈管瘤の存在を示唆するものである.本症例では,閉鎖機転に血栓形成が関与したが,動脈管の肺動脈端および大動脈端側の狭小化により,動脈管瘤内の血栓の流失が防がれ塞栓を合併しなかったものと考えられた. |
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【短報】 |
■題名 |
RSウイルス感染小児のツ反発赤径の検討 |
■著者 |
共立湖西総合病院小児科
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■キーワード |
respiratory syncytial virus,ツベルクリン皮内テスト |
■要旨 |
RSウイルスによる下気道感染症で入院したBCG接種歴のある小児16名を対象に入院日にツ反を行い退院日まで発赤径を観察した.48〜72時間後の急性期と144〜196時間後の回復期の発赤径を比較検討した.急性期平均径は4.5mmで,16例中13例(81%)が10mm未満の陰性であった.回復期は平均7.5mmと発赤径は有意(t検定P<0.05)に拡大した.RSV感染の急性期は遅延型過敏反応は低下し,症状の軽快に伴って回復すると考えた. |
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