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日本小児科学会雑誌 目次 |
第105巻 第7号/平成13年7月1日
Vol.105, No.7, July 2001
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【原著】 |
■題名 |
カルバマゼピン服用者の低ナトリウム血症について |
■著者 |
国立精神神経センター武蔵病院小児神経科
須藤 章 |
須貝 研司 |
宮本 健 |
佐々木匡子 |
福水 道郎 |
花岡 繁 |
佐々木征行 |
加我 牧子 |
高嶋 幸男 |
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■キーワード |
カルバマゼピン,低ナトリウム血症,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 |
■要旨 |
カルバマゼピン(CBZ)の服用中の入院患者64例中,130mEq/l未満の低ナトリウム(Na)血症を4例,(うち2例は成人例)に認めた.全て多剤服用中で,CBZ血中濃度は,有効域かそれ以下であった.亜急性に出現した2例に活動性の低下やけいれんの増加などを認めた.4例ともCBZの血中濃度の上昇に伴い血清Na値が低下する傾向を認めた.また,低浸透圧血症にもかかわらず,抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が見られた.全例,CBZを減量か中止することにより血清Na値が正常化した.外来通院患者では,CBZの服用群150人と非服用群117人の血清Na値に有意差を認めなかった.しかし,外来患者群は入院患者群より年齢が低かった.CBZ使用時には,血中濃度が高くなくてもADHの分泌が刺激されて低Na血症が出現しうると考えられ,定期的な検査が必要で,危険因子として特に高年齢と多剤併用,血中濃度の上昇に注意を払うべきである. |
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【原著】 |
■題名 |
進行神経芽腫における末梢血幹細胞および骨髄中微少残存病変検出の意義 |
■著者 |
京都府立医科大学小児科学教室
田畑 博子 |
河村栄美子 |
家原 知子 |
有本 晃子 |
近江園善一 |
白井 千晶 |
細井 創 |
澤田 淳 |
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■キーワード |
神経芽腫,微少残存病変,末梢血幹細胞移植,骨髄,RT-PCR |
■要旨 |
進行性神経芽腫患児12例の骨髄および末梢血幹細胞(peripheral blood stem cell;PBSC)採取液中の微少残存病変(minimal residual diseases;MRD)の検出をreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)法で行い,PBSCの適切な採取時期および骨髄穿刺液,PBSC採取液中MRDの臨床的意義について検討した.NB細胞の遺伝子マーカーとして,neuroendocrine protein gene product 9.5とtyrosine hydroxylaseを用いた.厚生省進行神経芽腫研究班治療プロトコールによる化学療法を2〜3(平均2.4)クール終了後,骨髄穿刺液中MRDは陰性となったが,PBSC採取液中のMRDが陰性化するには4〜13(平均6.9)クールを要した.骨髄穿刺液中およびPBSC採取液中のMRDの有無をRT-PCR法で検討することにより,再発の予知,より安全なPBSCTの施行が可能と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
アデノウイルス肺炎における血清KL-6の検討 |
■著者 |
幌南病院小児科
高橋 豊 |
田端 祐一 |
岡田 善郎 |
鹿野 高明 |
穴倉 迪彌 |
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■キーワード |
アデノウイルス3型,アデノウイルス7型,間質性肺炎,KL-6 |
■要旨 |
血清KL-6は間質性肺炎の疾患活動の臨床マーカーとして成人において評価されている.今回小児アデノウイルス肺炎11例(7型6例,3型5例)の血清KL-6の動態について検討した.急性期には7型肺炎6例中3例,3型肺炎5例中2例で高値を示した.7型肺炎で後遺症を残した2症例はともに急性期著明な高値を示していた.また血清KL-6は回復期には急性期より有意に上昇し,特に7型肺炎では急性期正常であった症例も全例異常域となった.血清KL-6はアデノウイルス肺炎においても肺胞障害の程度を反映し,呼吸器後遺症の予知マーカーの一つとなる可能性が推測された. |
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【原著】 |
■題名 |
麻疹に合併したクループ症候群に対する臨床的検討 |
■著者 |
千葉市立海浜病院小児科1),千葉大学医学部小児科2)
星野 直1)2) |
玉井 和人1) |
太田 文夫1) |
黒崎 知道1) |
河野 陽一2) |
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■キーワード |
麻疹,クループ症候群,クループスコア,重症度 |
■要旨 |
麻疹入院患者に合併したクループ症候群に関する後方視的臨床検討を行った.1997年1〜7月の麻疹流行期に,千葉市立海浜病院小児科に58例の麻疹患者が入院し,14例(24.1%)でクループ症候群の合併が認められた.その合併頻度は,肺炎,胃腸炎のそれぞれ51.7%に次いで高かった.麻疹に合併したクループ症候群は,麻疹以外が原因と考えられたクループ症候群17例に対し,軽症例が多かったが症状は遷延していた.また,クループ症候群と肺炎を同時に合併した例では,クループ症状の重症化が認められた.麻疹に合併するクループ症候群は,その合併率の高さと併せ注目すべき合併症と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
良性家族性新生児痙攣の1家系におけるKCNQ2遺伝子変異の検索 |
■著者 |
国立療養所香川小児病院小児科1),愛媛大学医学部衛生学教室2),
国立療養所香川小児病院脳神経外科3),高松市民病院小児科4)
牛田 美幸1) |
福田 隆之2) |
西山 逸子3) |
中野 修身4) |
遠藤 彰一1) |
福田 邦明1) |
太田 明1) |
近藤 郁子2) |
古川 正強1) |
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■キーワード |
遺伝子診断,新生児痙攣,てんかん,カリウムチャネル,チャネル病 |
■要旨 |
良性家族性新生児痙攣の1家系を経験した.発端者は日齢1に無呼吸と強直性痙攣で発症した男児である.母親,姉,祖父,叔父,叔母に同様の症状の既往があった.叔父は発達障害とてんかんを有して幼児期に事故死したが,他の家系員は正常に発育し,乳児期以降痙攣はない.家族歴と臨床症状から良性家族性新生児痙攣と診断した.抗痙攣剤の内服を開始し,日齢22に発作は消失した.現在1歳であり発達は良好である.発端者において,第20番染色体長腕のvoltage-gated potassium channel gene(KCNQ2)について検討した.エキソン13からイントロン13への移行部のGがTへと変異していた.同様の既往を持つ母,姉,祖父,叔母に同じ遺伝子異常が確認された.KCNQ2はカリウムチャネルを規定する遺伝子と言われ,今後,カリウムチャネルと痙攣との関係の解明が期待される. |
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【原著】 |
■題名 |
4番染色体長腕部分トリソミーの1乳児例 |
■著者 |
福井医科大学小児科1),福井医科大学看護学科2),
福井総合病院小児科3)
轟 夕起子1) |
塚原 宏一1) |
重松 陽介2) |
小畑浩一郎1) |
古畑 律代1) |
小野合歓子1) |
藤澤 和郎1) |
平岡 政弘1) |
堀 親秀3) |
眞弓 光文1) |
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■キーワード |
4qトリソミー,染色体異常,多発奇形 |
■要旨 |
46, XY. ish der(13)ins(13;4)(q12.1;q25q35)(wcp4+,wcp13+,LSI13+)という4番染色体長腕部分トリソミー(以下,4q部分トリソミー)の1例を報告した.モノソミーを伴わない4q部分トリソミーの報告例と比較すると,成長障害,発達遅延,小頭症,耳介低位,鼻根部変形が共通した症状であった.一部の4q部分トリソミーで報告されている腎と母指の奇形の合併が患児にもみられた.これまでの報告例と共通しない奇形として無眼球症,口唇口蓋裂,腸回転異常も認められた.これらは挿入部位である13番染色体の切断に関連した可能性も否定できないが,4q部分トリソミーによる症状の多様性を示すものと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
サイトメガロウイルス脳炎の合併が推測されたCockayne症候群の1例 |
■著者 |
愛知医科大学小児科1),千葉大学教育学部基礎医科学2),
日進おりど病院小児科3)
北川 幸子1) |
中村 有里1) |
縣 裕篤1) |
杉田 克生2) |
山本 喜史3) |
鶴澤 正仁1) |
藤本 孟男1) |
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■キーワード |
Cockayne症候群,サイトメガロウイルス脳炎,免疫不全,脳内石灰化 |
■要旨 |
症例は9歳の男児.見当識障害を認め,髄液タンパクの上昇,血清サイトメガロウイルス(以下CMV)・IgM抗体陽性より,CMV脳炎が疑われ,グロブリン製剤,ガンシクロビルにて治療した.治療により意識障害は10日前後で改善するが,治療を中止すると再び意識障害を認めるという状態を,4カ月間に5回繰り返した.経過中,血清CMV・IgM抗体は持続陽性であったが,液性免疫,細胞性免疫に異常はなく,免疫不全状態は認めなかった.
一方,以前から著明な低身長,小頭症,中等度の精神運動発達遅延があり,入院時頭部CTにて,大脳基底核,前頭葉に左右対称性の石灰化が認められた.身体の特徴的な所見よりCockayne症候群と診断した.
免疫不全状態にない小児のCMV持続感染の報告はなく,Cockayne症候群を基礎疾患にもつ貴重な症例と考えられた. |
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【短報】 |
■題名 |
後遺症なく回復したインフルエンザ脳症の児における血清サイトカインの変動 |
■著者 |
旭川厚生病院小児科
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■キーワード |
インフルエンザ脳症,サイトカイン,大量ヒト免疫グロブリン療法 |
■要旨 |
大量ヒト免疫グロブリン,デキサメサゾンおよびアマンタジンを投与した2名のインフルエンザ脳症において第14日目までTNF-αとIL-6を測定した.症例1では入院時のTNF-αは114pg/ml,IL-6は295pg/mlと高く,ヒト免疫グロブリンが終了した第2日目に急激に低下し第5日目から再び増加する2峰性を示した.症例2でもTNF-αは第1日目に57.4pg/mlと高く,症例2と同様に変動した.IL-6は有意な変動を認めなかった. |
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【短報】 |
■題名 |
学校検尿尿糖陽性者に対する経口ブドウ糖負荷試験の適応の検討 |
■著者 |
鹿児島市医師会学校腎臓糖尿検診委員会1)
鹿児島県医師会学校腎臓糖尿検診マニュアル作成委員会2)
太原 博史1) |
河野 泰子1) |
前田 忠1) |
今村 正人1) |
有馬 桂1) |
溝田美智代2) |
二宮 誠2) |
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■キーワード |
学校検尿尿糖検診,経口ブドウ糖負荷試験(OGTT),HbA1c |
■要旨 |
学校検尿尿糖陽性者への経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の適応条件について検討した.一次検尿および二次検尿で,尿糖(+)以上が一回以上,または尿糖(±)が二回連続確認されたものを三次検診対象者とした.空腹時血糖(FPG),HbA1c,肥満度を検査し,FPGやHbA1が正常でも50%以上の高度肥満のある児童に耐糖能の低下がみられたことから,FPG 110mg/dl以上またはHbA1c 5.8%以上または50%以上の高度肥満をOGTTの適応条件とすることの有用性が示唆された. |
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