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日本小児科学会雑誌 目次 |
第105巻 第6号/平成13年6月1日
Vol.105, No.6, May 2001
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【原著】 |
■題名 |
防已黄耆湯のpuromycin aminonucleosideネフローゼラットにおける尿蛋白抑制効果について |
■著者 |
福島県立医科大学医学部小児科
長澤 克俊 |
鈴木 順造 |
鈴木 重雄 |
川崎 幸彦 |
鈴木 仁 |
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■キーワード |
微小変化型ネフローゼ症候群,漢方薬,防已黄耆湯,puromycinaminonucleoside,prostaglandin |
■要旨 |
微小変化型ネフローゼ症候群の実験モデルとされているpuromycin aminonucleosideネフローゼラットに防已黄耆湯を経口投与し,尿蛋白抑制効果ならびにその作用機序をthromboxane(TX)A2とprostacyclin(PGI2)代謝の面から検討した.その結果,防已黄耆湯は尿蛋白排泄量を有意に抑制することが明らかになった.またTXA2の代謝産物であるTXB2の尿中排泄量は有意に抑制され,PGI2の代謝産物である6‐keto‐prostaglandin(PG)F1αとTXB2の比は有意に高値を示した.また,ラットの単離糸球体と培養メサンギウム細胞を用いて防已黄耆湯のPG産生に及ぼす影響を検討した結果,6‐keto‐PGF1α¥外字(9250)TXB2比は防已黄耆湯添加によりラット培養メサンギウム細胞で有意に増加した.以上より,防已黄耆湯はネフローゼラットの尿蛋白抑制効果および腎内のPGI2とTXA2産生のバランスをPGI2優位にする作用を有するものと考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
マルチプレックス蛍光1塩基プライマー伸長法を用いた先天代謝異常症の遺伝子検査 |
■著者 |
東北大学大学院医学系研究科小児医学講座遺伝病学
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■キーワード |
蛍光1塩基プライマー伸長法,ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症,糖原病1a型,テイ・ザックス病,フェニルケトン尿症 |
■要旨 |
複数の既知点変異を同時に検出するマルチプレックス蛍光1塩基プライマー伸長法の有用性を検討した.サーモシークエネースで伸長された蛍光標識ddNTPは極めて忠実に標的変異塩基を反映していた.鋳型DNA断片をマルチプレックスPCRで増幅し,更に長さの違う伸長反応用プライマーを用いて複数の変異を同時に検出することが出来た.本法を用いて,日本人ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症の5変異(L237P,R508W,1067delG,V550M,942insA),糖原病1a型の3変異(R83H,g727t,R170X),Tay‐Sachs病の2変異(613delC,IVS5‐1G>A),フェニルケトン尿症のエクソン7上の4変異(R241C,R252W,T278I,R243Q)及び他エクソンの4変異(R111X,IVS4‐1G>A,R413P,P407S)の同時検出が可能であった.本法は1検体につき多変異の検査が必要なものに向いており,自動化も可能であり,先天代謝異常症の遺伝子検査などに臨床応用し得る有用な方法と考えられる. |
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【原著】 |
■題名 |
福島県下における小児期発症急性脳炎・脳症105例の疫学的臨床的検討 |
■著者 |
福島県立医科大学医学部小児科学講座
川崎 幸彦 |
細矢 光亮 |
永井 真紀 |
萩原 典之 |
根本 健二 |
鈴木 英樹 |
森田 浩之 |
鈴木 仁 |
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■キーワード |
急性脳炎・脳症,インフルエンザウイルス,小児,予後不良因子,血漿交換療法 |
■要旨 |
1986年から2000年までの15年間に福島県内において急性脳症・脳炎(本症)と診断された105症例について疫学的臨床的検索を行い,予後関連因子を検討した.罹患年齢は平均4.0±3.7歳,男女比は60:45であった.病因が判明した症例は46例(43.4%)と低率であり,その内訳はインフルエンザウイルス11例,HHV‐6 5例,水痘帯状疱疹ウイルス5例,風疹ウイルス5例,麻疹ウイルス4例,マイコプラズマ4例であった.本症の予後不良因子としては,遷延する意識障害,肝・腎機能障害やDICなどの多臓器障害を有すること,病初期から頭部画像および脳波上異常所見を有することなどが挙げられた.本症の予後を改善するためには,個々の症例に関して病初期の段階で病因検索や予後関連因子の検討を充分に行い,適切な早期治療を行いかつワクチン接種を主体とした早期予防に努めることが肝要であると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
小児における血清KL‐6値の基準範囲の設定および有用性の検討 |
■著者 |
東京女子医科大学附属第二病院小児科
鈴木 里香 |
鈴木 葉子 |
伊藤けい子 |
和田恵美子 |
杉原 茂孝 |
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■キーワード |
KL‐6,基準範囲,間質性肺炎,染色体異常 |
■要旨 |
KL‐6は内科領域で間質性肺炎の血清マーカーとしての有用性が報告されているが,小児での報告は少ない.今回,我々は呼吸器症状のない非呼吸器疾患群299例において小児におけるKL‐6値の基準範囲を検討した.基準範囲は84.3〜297.7U¥外字(9250)ml(中央値154.0U¥外字(9250)ml)と算出された.KL‐6値に性差はなく,年齢による相違も認めなかった.血清LDH値とは弱い正の相関関係が認められたが,血清CRP値,白血球数とKL‐6値には相関はなかった.また,臨床症状のある呼吸器疾患群111例において,各呼吸器疾患別にKL‐6値の分布を検討した.間質性肺炎に有意なKL‐6値の上昇を認めたが,他疾患では有意なKL‐6値の上昇は認めなかった.染色体異常症では正常群と比較しKL‐6値が上昇する傾向がみられた. |
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【原著】 |
■題名 |
Ganciclovirによる治療を試みた乳児サイトメガロウイルス肝炎の2例 |
■著者 |
土浦協同病院小児科
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■キーワード |
サイトメガロウイルス,ガンシクロビル,乳児肝炎,凝固異常 |
■要旨 |
乳児のサイトメガロウイルス(以下CMVと略す)肝炎は多くは軽度で自然軽快するといわれているが,凝固異常を伴うような重度の肝機能障害をきたす症例もあり,これら重症例に対する治療は未だ確立されていない.今回我々は生後1カ月で発症した重症のCMV肝炎2例を経験し,Ganciclovirの投与を行った.1例は著効を示したが,1例では治療に対する反応は不良であった.Ganciclovirの有効性については今後症例数を増やして検討する必要があるが,重症肝不全を呈した乳児CMV肝炎に対して考慮してよい治療法であると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
DNAコピー数を経時的に観察し得た先天性サイトメガロウイルス感染症の1例 |
■著者 |
富山医科薬科大学医学部小児科1),
名古屋大学大学院医学研究科小児科2),
名古屋大学医学部保健学科3)
渡辺 綾佳1) |
吉田 丈俊1) |
野村 恵子1) |
金兼 弘和1) |
田中 直子2) |
木村 宏2) |
森島 恒雄3) |
宮脇 利男1) |
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■キーワード |
サイトメガロウイルス,網膜炎,ガンシクロビル,DNA,リアルタイムPCR |
■要旨 |
網膜炎を合併した先天性サイトメガロウイルス感染症にガンシクロビル投与が有効であった一例を経験した.また生下時から回復期にいたるまでリアルタイムPCR法を用いて血漿,白血球,尿,髄液中のCMV‐DNAコピー数を経時的に測定した.ガンシクロビル投与中の血漿,白血球中のCMV‐DNAコピー数と臨床経過は相関しており,治療効果の判定に有用であると考えられた.しかし回復期においては臨床症状とCMV‐DNAコピー数は相関しなかった.特に尿中のCMV‐DNAコピー数は一定せず,治療効果判定には適さないと考えられた.ガンシクロビル投与によって血漿,白血球中CMV‐DNAコピー数は減少し網膜炎は消失したが,神経学的後遺症は残存した.今後,神経学的後遺症を回避できる予防方法の開発が望まれる. |
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【原著】 |
■題名 |
沖縄旅行後に発症した広東住血線虫症による好酸球性髄膜炎の1例 |
■著者 |
京都大学医学部小児科1),新河端病院神経内科2),
宮崎医科大学寄生虫学3)
服部 春生1) |
加藤 竹雄1) |
長門 雅子1) |
岡野 智恵1) |
木 元2) |
名和 行文3) |
中畑 龍俊1) |
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■キーワード |
広東住血線虫,好酸球性髄膜炎,沖縄 |
■要旨 |
症例は13歳男児.1999年12月下旬の沖縄旅行の1週間後に頭痛,嘔気で発症した.第8病日の初診時,髄膜刺激症状以外には特記すべき理学所見はなかった.髄液検査で,脳圧亢進(初圧30cm H2O),著明な好酸球増多を伴う髄液細胞増多(897¥外字(9250)μl,うち好酸球45%)を認めた.ステロイド剤内服,鎮痛剤・鎮吐剤内服,脳圧降下剤点滴などの治療を行った.症状の消失と脳圧正常化に約50日,髄液細胞増多の消失に約90日を要した.血清,髄液中の広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)に対するELISA抗体価の経時的上昇により,本例を広東住血線虫による好酸球性髄膜炎と診断した.本邦においては,本症は1970年の第1例より1999年までに40例近くが報告されている.うち,半数以上は本邦での流行地である沖縄での症例である.さらに,2000年に入り沖縄では10例以上の発症の報告があり,2000年6月には本邦ではじめての死亡例も発生した.なお,沖縄旅行後に発症した報告は本例で4例目である. |
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【短報】 |
■題名 |
フィブリン製剤の胸腔内投与が有効であった極低出生体重児の緊張性気胸症例 |
■著者 |
東京都立母子保健院未熟児新生児科1),
東京慈恵会医科大学付属病院小児科2)
寺本 知史1)2) |
布山 裕一1)2) |
副田 敦裕1)2) |
衞藤 義勝2) |
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■キーワード |
フィブリン製剤,気胸,新生児 |
■要旨 |
遷延する極低出生体重児の緊張性気胸に対してフィブリン製剤の胸腔内投与を行い,有効な結果を得た.患児は日齢2に両側の緊張性気胸をきたし胸腔内の持続吸引を開始したが,左胸腔への空気の漏出は遷延した.フィブリン製剤の胸腔内投与後は再発はみられず,明らかな後遺症もみられなかった.遷延する新生児の緊張性気胸に対してフィブリン製剤の胸腔内投与は積極的に使用する価値のある治療法であると思われた. |
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