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日本小児科学会雑誌 目次 |
第105巻 第5号/平成13年5月1日
Vol.105, No.5, May 2001
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【原著】 |
■題名 |
成長ホルモン分泌不全性低身長症における遺伝子組換え成長ホルモン治療による最終身長の正常化の割合 |
■著者 |
成長科学協会 成長ホルモン治療専門小委員会
田中 敏章 |
藤枝 憲二 |
羽二生邦彦 |
西 美和 |
立花 克彦 |
横谷 進 |
五十嵐 裕 |
平野 岳毅 |
藤田敬之助 |
寺本 明 |
肥塚 直美 |
島津 章 |
田中 弘之 |
谷澤 隆邦 |
長谷川行洋 |
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■キーワード |
成長ホルモン分泌不全性低身長症,遺伝子組換えヒト成長ホルモン,catch‐up,最終身長,成長科学協会 |
■要旨 |
成長科学協会に登録されて,遺伝子組換えヒト成長ホルモン(rhGH)で最終身長まで治療された1,201名(男649名,女552名)を対象に,最終身長正常化の要因を検討した.
最終身長の平均は,男160.3±6.1cm(−1.80±1.08SD),女147.8±5.4cm(−2.03±1.08SD)で,平均治療期間は5年を越えているのにも関わらず,男の38.1%,女の46.2%が最終身長が正常化(−2SDを越える)していなかった.治療開始時身長SDSが−3SDを越えていた場合は70.7%が,−2.5SDを越えていた場合は79.5%の例が最終身長が正常化していた.治療1年目,2年目,3年目に身長SDSが−2SDを越えていた人のうち,最終身長が正常化していた人の割合は,それぞれ80.0%,82.7%,85.7%であった.治療3年目と最終身長時の身長SDSの分布は,ほぼ同じであった.
最終身長の正常化のためには,低身長の程度が軽度のうちに早期に診断し,治療を開始して,最初の3年までに正常身長にcatch‐upしておくことが重要であると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
若年者の肥大型心筋症における心筋障害の検討―電子ビームCT上のlate enhancementの意義― |
■著者 |
国立循環器病センター小児科,同 放射線診療部*
黒嵜 健一 |
吉林 宗夫 |
塚野 真也 |
小野 安生 |
新垣 義夫 |
内藤 博昭* |
越後 茂之 |
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■キーワード |
肥大型心筋症,電子ビームCT,late enhancement,心室性頻拍,心筋障害 |
■要旨 |
電子ビームCT(EBT)上,造影剤注入後の後期像での心筋濃染(LE)は心筋線維化を示す所見とされている.本研究の目的は若年者の肥大型心筋症における左室心筋LEの実態とその臨床的意義を調査することである.対象は肥大型心筋症45例(14.6±5.5歳).全例に対してEBTおよび心臓超音波検査を施行した.また31例でホルター心電図を,37例で心筋シンチを行った.LEは29例(64%)に認められた.失神既往と突然死の家族歴をそれぞれ7例が示したが,その全例がLEを有していた(p<0.05).ホルター心電図で心室性頻拍を認めた10例は全例がLEを認めた(p<0.05).心筋シンチでの灌流欠損はLEを有する群でより高頻度に認められた(14/26対2/11,p<0.05).LEと失神既往,突然死の家族歴,心室性頻拍,心筋障害との関連が示唆された. |
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【原著】 |
■題名 |
剖検となったNoonan症候群の臨床病理学的検討 |
■著者 |
大阪府立母子保健総合医療センター検査科病理1),新生児科2),
小児循環器科3)
竹内 真1) |
中山 雅弘1) |
北島 博之2) |
中島 徹3) |
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■キーワード |
Noonan症候群,胎児水腫,肺リンパ管拡張症,肥大型心筋症,剖検所見 |
■要旨 |
剖検となったNoonan症候群4例(男3例,女1例:死亡年齢23日〜8.3歳)の胎児期からの臨床経過および剖検所見について検討した.胎児期は全例,胎児水腫,羊水過多を合併し,在胎週数31〜37週,出生体重1,744〜2,969gで出生した.生後すぐに全例,呼吸障害のため人工呼吸管理となり,2例は胸水または慢性肺疾患のため死亡時まで人工呼吸管理が必要であった.合併心疾患は大動脈縮窄・心室中隔欠損が1例,肥大型心筋症・肺動脈狭窄・心房中隔欠損が1例,肥大型心筋症のみが2例であった.大動脈縮窄・心室中隔欠損の1例は肺リンパ管拡張症による胸水のため手術が不可能で,新生児期に死亡した.肥大型心筋症の3例は全例,乳児期に出現し,2例に左室流出路閉塞性病変が明らかとなった.新生児期に死亡した1例は肺リンパ管拡張症が,乳児期以降に死亡した3例は肥大型心筋症の進行が死因に大きく関与していると考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
大頭症および大泉門開大の小児神経学的意義―臨床像,画像診断による検討― |
■著者 |
東邦大学第一小児科学教室
星野 恭子 |
■キーワード |
大頭症,大泉門開大,巨脳症,髄液吸収障害,精神運動発達障害 |
■要旨 |
2SD以上の大頭症または大泉門開大を示した62名の臨床像と画像所見について検討した.大頭症群38名の平均年齢は,12.5カ月,大泉門開大群30名では7.4カ月であった.6名は両者を合併していた.うち48名について頭部CTスキャンを施行し,正常群(a群)と軽度の脳室やクモ膜下腔の拡大のみられる群(b群)に分類した.大頭症のなかでa群の7名は巨脳症と診断され,精神・運動発達遅滞を呈する率が高かった.b群の16名は巨脳症と髄液吸収障害の両者を有すると診断された.大泉門開大のなかでb群の13名は髄液吸収障害と診断された.大頭症,大泉門開大のb群の精神・運動発達は良好であった.62名中6名は大頭症,大泉門開大の両者を合併しており,巨脳症,髄液吸収障害という共通した病態が推測された.また,巨脳症の程度により神経学的予後が異なるため,画像による診断が重要であると思われた. |
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【原著】 |
■題名 |
小児慢性反復性頭痛の研究 第4編:一般小児科から他科へ依頼する頭痛 |
■著者 |
筑波学園病院小児科1),筑波技術短期大学視覚部臨床医学系2),
筑波大学小児科3),
茨城県立こども病院小児科4),筑波大学脳神経外科5)
藤田 光江1) |
磯部 規子1) |
藤原 順子2) |
柴崎佳代子1) |
中原千恵子3) |
土田 昌宏4) |
榎本 貴夫5) |
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■キーワード |
小児慢性反復性頭痛,国際頭痛学会による頭痛分類,脳腫瘍,レニン産生腫瘍,好酸球性肉芽腫 |
■要旨 |
1987年4月から1999年6月までの12年6カ月間に,筑波学園病院小児科を慢性反復性頭痛を主訴に受診した小児は478例(男208例,女270例)(年齢2〜15歳:平均10.4±3.0歳)であった.478例の国際頭痛学会による頭痛の分類は,片頭痛275例(57%),緊張型頭痛75例(16%),両者の合併18例(4%),分類できない頭痛97例(20%)で,その他が13例(3%)であった.その他の13例は,当院から他科へ紹介した症例であり,紹介先は,脳神経外科8例,耳鼻咽喉科2例,眼科1例であり,2例は精査のため大学病院などの小児科に紹介となった.脳神経外科へ紹介された8例のうち頭蓋内腫瘍の3例は水頭症を合併し,転院までの間頭蓋内圧亢進に対する治療を要し,緊急性が高かった.他科へ依頼した頭痛は3%と少数であったが,緊急を要する疾患も含まれ注意が必要と考えられた. |
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【原著】 |
■題名 |
β-ラクタマーゼ陰性ampicillin耐性インフルエンザ菌type bによる化膿性髄膜炎を来した1乳児例 |
■著者 |
1)佐賀県立病院好生館小児科,2)佐賀医科大学小児科
西 奈津子1) |
太田 光博1) |
稲田 成安1) |
松尾 宗明2) |
山口 秀人1) |
上田 義治1) |
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■キーワード |
化膿性髄膜炎,インフルエンザ菌,β―ラクタマーゼ陰性ampicillin耐性,硬膜下膿瘍 |
■要旨 |
症例は2カ月女児.発熱,嘔吐を主訴とし,髄液検査でH. infuluenzaeによる化膿性髄膜炎と診断した.ampicillin,cefotaximeを投与したが薬剤感受性検査でampicillin耐性と判明した.抗菌薬をpanipenem/betamipronへ,さらにminocyclineへ変更したが十分な効果がなく,経過中に硬膜下膿瘍を合併した.ceftriaxoneに変更してから炎症反応も陰性化し硬膜下腔も縮小し後遺症もなく軽快した.髄液と血液から分離されたH. infuluenzaeの血清型はtype bで,髄膜炎の起炎菌としては報告が少ないβ―ラクタマーゼ陰性ampicillin耐性(BLNAR)であった.早期に適切な薬剤使用が必要とされる化膿性髄膜炎では,初期治療における抗菌薬の選択に今後はBLNARも検討に加える必要があると思われる. |
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【原著】 |
■題名 |
突発性発疹の解熱発疹期にけいれんを群発し,ヒトヘルペスウイルス6による脳血管障害の関与が示唆された1例 |
■著者 |
大阪赤十字病院小児科1),
大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学専攻小児発達医学講座小児科学2)
住本 真一1) |
渡辺 康宏1) |
天羽 清子2) |
多屋 馨子2) |
山本 英彦1) |
葭井 操雄1) |
西村 実保1) |
新居 正甫1) |
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■キーワード |
突発性発疹,中枢神経系障害,無熱性けいれん,ヒトヘルペスウイルス6,脳血管障害 |
■要旨 |
今回われわれは,突発性発疹の9カ月女児例を経験した.患児は,有熱期に全身性のけいれん重積を起こし,解熱発疹期に左半身の群発けいれんと一過性の左半身麻痺をきたした.頭部SPECTで,右大脳半球の血流低下を認めたが,症状とともに軽快した.また各々のけいれん時のヒトヘルペスウイルス6(human herpesvirus‐6:以下HHV‐6)DNAの検出を試みたところ,有熱期の血清と解熱期の髄液は陽性,有熱期の髄液と解熱期の血清は陰性であった.この結果と臨床経過およびSPECTの所見から,本症例の有熱期のけいれん重積は熱性けいれん(複雑型)で,解熱期の片側性の群発けいれんは,HHV‐6の脳血管障害による二次的な中枢神経系障害が示唆された. |
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【原著】 |
■題名 |
定量PCR法による治療効果の判定を行った全身型新生児ヘルペスの1例 |
■著者 |
愛知県心身障害者コロニー中央病院新生児科1),名古屋大学小児科2)
名古屋大学保健学科3),名古屋徳洲会総合病院小児科4)
加藤 丈典1) |
遠藤 大一1) |
長谷川泰三1) |
本庄 孝江1) |
二村 真秀1) |
木村 宏2) |
森島 恒雄3) |
井上 浩行4) |
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■キーワード |
新生児ヘルペス,定量PCR法,HSV‐DNA |
■要旨 |
発熱と肝機能異常を主訴とした新生児ヘルペス(全身型)の1例を経験した.入院時GOT,GPT,LDHの著明な増加を認めたが,特徴的な水疱の形成は認められなかった.直ちにアシクロビルを開始し(45mg/kg/day),連続3週間投与した.入院時,および入院後ほぼ1週間毎に血漿,髄液,咽頭拭い液,結膜拭い液を検体とした定量PCR法を行いHSV‐DNA量を経時的に測定した.入院時には血漿,髄液から多量のHSV‐DNAが検出されたが,治療開始後次第に減少し,それとともにGOT,GPT,LDH値も低下した.
新生児ヘルペスの診断及び治療効果の指標として定量PCR法が有効であると思われた. |
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