会長挨拶

(登録:10.6.3)
(更新:12.1.16)
■■ 会長挨拶

2012年 年頭所感

 新年、あけましておめでとうございます。日頃より会員の皆様には日本小児科学会の活動に甚大なる御協力を戴き、深く感謝申し上げます。
 昨年3月11日の東日本大震災では多くの尊い命を失いましたことに、こころよりお悔やみ申し上げます。また、未だに多数の方が避難生活を余儀なくされていることにこころを痛めます。さらに、放射線被ばくを受けて生活せざるを得ない子どもの将来に対して強い危惧感を抱きます。
 日本小児科学会は大震災直後から国や地方公共団体、関連学協会などと協力して様々な支援活動を行って参りました。さらに、昨年10月末まで福島県いわき総合磐城共立病院に週末の当直業務として小児科医を毎週2名派遣しました。また、岩手県大船渡病院に1週間単位で2名の小児科医を派遣しており、本年3月末まで支援を続ける所存です。この支援活動に御協力を戴いている全国の日本小児科学会会員の皆様に深く御礼申しあげます。また、こうした活動を支援するための義捐金を会員の皆様から戴きましたことに対しても感謝申し上げます。さらに、日本小児科学会のこの支援活動に参加する医師に日本医師会が傷害保険をかけて下さっている点につきましても申し添えさせて戴きます。
 大震災からの避難生活や放射線被ばくのために日常生活の制限を余儀なくされている子どもに、被災した地域とその周辺の地域では子どものこころと体の健全な育成を目指して様々な活動が行われています。日本小児科学会はこうした活動に対して、長期間にわたる支援を行いたいと考えます。被災した子どもは外見上元気に見えても、こころに深い傷を負っています。また、避難生活の長期化や震災による生活への影響により、子どもの虐待が今後増加することも危惧されます。こうした状況の中で、地域の医療・教育関係者などと連携して被災した子どものこころを支援する地域での活動を支援するために「中央子ども支援センター」が昨年11月に設立されました。日本小児科学会はこの事業にも積極的に協力するつもりです。とりわけ、関連学協会と連携して、長期的な支援体制を地域に構築することが求められています。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線被ばくによる子どもの健康被害が危惧されます。日本小児科学会は日本医師会、日本小児科医会、日本小児保健協会、日本保育園保健協議会と連名で子どもの安全を守るために放射線被ばく線量を減らす対策を実施するよう文部科学省に要請しました。さらに、保護者が放射線についての正しい理解を深めるため、いわき市にて放射線と子どもの発育・発達講演会を日本小児救急医学会と共催しました。今後現在続いている低線量放射線被ばくがわが国の子どもの健康にどのような影響を与えるかについて、科学的で長期的な調査が必要です。また、国は放射線被ばくを減らすための環境整備を行うとともに、わが国の子どもが一人たりとも放射線被ばくによりがん死とならない体制を構築すべきです。すでに福島県立医科大学と福島県によるこうした取り組みが始まっており、日本小児科学会としてもこの活動を支援したいと考えます。
 日本小児科学会の最大の使命はわが国の小児科学という学術活動を発展させることです。日本小児科学会研究活性化ワーキンググループの調査により、わが国の小児医学の学術活動は11年前に比べ英文論文発表数として評価した場合に約1割程度減少していることが判明しました。わが国の小児科学の臨床を高いレベルで充実したものにするためにも、日本小児科学会は臨床・基礎研究を促進する仕組みを具体化し、積極的に若手・中堅小児科医の臨床・基礎研究への参入を促す施策を実行する所存です。また、若手小児科医の臨床能力の向上や研究マインドの育成を目指したセミナーを開催するなど、小児医療の真の意味での質の充実に向けた課題に引き続き取り組むつもりです。
 日本小児科学会は予防接種スケジュールについて昨年会員と国民に向けて公表しました。その後、わが国においてもロタウイルスワクチンが使用できるようになったことから、予防接種スケジュールを改訂しました。さらに、定期接種になっていないムンプス、水痘、B型肝炎ウイルス、Hib、肺炎球菌、ロタウイルスなどのワクチンを定期接種にすること、現行のワクチンを改善すること、その他の予防接種の改善や導入を含め、わが国のあるべき予防接種メニューについて厚生労働大臣と政権政党に働きかけを行いました。しかしながら、子どもが受けるべき予防接種すべてを定期接種化するだけでは不十分です。自分の健康を守り、健康を増進するために、子どもが感染症や予防接種等の正しい知識を持つことができるように現行の学校教育を変えることも必要です。
 長い間紛糾していましたが、日本小児科学会の考える小児医療提供体制についての具体案がまとまり、昨年8月の総会にて承認を戴く事が出来ました。今後、わが国の小児医療機関を地域小児科センター、中核病院小児科、地域振興小児科などに分類し集計することにより、わが国の小児医療の実態をより正確に把握したいと考えます。この資料を国の考える小児医療の在り方の基礎資料とするだけでなく、医療施設への支援体制を構築する際の資料としても利用させて戴く予定です。一方、優れた小児医療体制を構築することと同様に、わが国の子どもの死を正確に評価し、真実の姿を公表することもわが国の小児医療の質を向上させるために不可欠です。死亡小票の解析と評価、その記載法の改善、死亡患者への医師の対応能力の向上など子どもの死に対して改善しなくてはならないことが多数あります。こうしたchild death review体制をわが国に定着させるため、現在WGを立ち上げて検討中です。
 0歳児保育の対象児が10万人を超えています。保育所へ入所する子どもも212万人となり、幼稚園に入園する子どもよりもはるかに多い状況になっています。また、保育園で子どもが過ごす時間は11時間に及びます。保育施設での感染症や食物アレルギーなどへの対策が必要です。小児科医は地域の保育施設の園医となって保育施設での子どもの保健・予防活動に御尽力戴きたく存じます。また、経済状況の悪化を理由にともすると劣悪化しかねない保育施設の環境を、子どもの健全育成の立場から改善するように地域にて働きかけて下さい。日本小児科学会は園医、看護師、保育士を対象とする研修を行い、幼い子どもの成育環境を整備したいと考えます。
 こころの問題や性感染症などの問題を含め、思春期の子どもの医療・保健の必要性が高まっています。17歳の時点で何らかの医療的支援が必要な子ども(children with special health care needs)は米国では17%、英国では12%に及ぶとされます。わが国ではこれに関する正確な数字はありませんが、すでに英米と同様の傾向が見られます。日本小児科学会は関連学協会と協力して思春期の子どもの医療・保健問題にも適切に対応できる小児科医を育成するための活動をこれからも続けます。さらに、成人に移行(transition)する慢性疾患を持つ子どもの治療・療育が様々な施設にて大きな問題になっています。日本小児科学会はこの問題の実態を調査し、内科などの関係する科との協議が必要と考えます。この問題に対応するWGを立ち上げ、検討が始まりました。
 日本小児科学会の専門医が社会から信頼される存在になるために、専門医教育の内容について具体的に検討し、それを社会に示し、意見を募ることが求められます。専門医認定機構と協力して、今後もこの問題を検討する予定です。これまで、日本小児科学会は指導医の育成に向けての講習会を年2回開催し、毎回45名前後の会員の参加を得ております。この様な取り組みはわが国の学協会の中でも極めて先進的であり、厚生労働省からも高い評価を戴いています。また、昨年10月には専門医のための講習会(インテンシブコース)を初めて開催し、570名の会員の参加を得ました。今年は8月4、5日に京都にて第二回のインテンシブコースを開催予定です。指導医講習会やインテンシブコースの企画・運営にこれからも多くの会員が御支援下さるよう、お願い申し上げます。
 日本小児科学会は公益社団法人化に向けて準備して参りました。基本的方向性については昨年8月の総会で承認され、関係者の御努力により準備も整い、11月に内閣府に申請いたしました。また、日本小児科学会理事・監事などの執行部の利益相反の開示は昨年4月から運用を開始しております。
 以上の活動を推進するため、今後日本小児保健協会、日本小児科医会、日本外来小児科学会、日本保育園保健協議会などの関連学協会や日本医師会との連携をさらに密にしたいと考えます。
 会員の皆様には日本小児科学会の活動に一層の御理解と御支援を戴けるよう、こころよりお願い申し上げます。


2011年 年頭所感

 新年あけましておめでとうございます。日頃より会員の皆様には日本小児科学会の活動に甚大なる御協力を戴き、深く感謝申し上げます。
 日本小児科学会の最大の使命はわが国の小児科学という学術活動を発展させることです。日本小児科学会は昨年初めて研究活性化ワーキンググループを立ち上げ、わが国の小児医学の学術活動の現状を調査しました。結果は、10年前に比べ英文論文発表数は約1割程度減少していました。臨床と研究とは表裏一体の関係にあります。わが国の小児科学の臨床を高いレベルで充実したものにするために、日本小児科学会は臨床・基礎研究を促進する仕組みを今後具体化し、積極的に若手・中堅小児科医の臨床・基礎研究への参入を促す施策を実行したいと考えます。また、若手小児科医の臨床能力の向上や研究マインドの育成など、小児医療の真の意味での質の充実に向けた課題に取り組むつもりです。
 昨年7月に改正臓器移植法が施行されました。日本小児科学会理事会は関連する委員会と協力して昨年10月に「子どもからの臓器提供と移植に対する日本小児科学会の基本的姿勢」(声明)を会員にお示ししました。会員であるわが国の小児科医は限られた医療資源の下で救急を含め懸命に小児の医療に貢献しています。日本小児科学会は不十分な救急医療体制の下で行なわざるを得ない脳死判定や虐待死の診断などの問題や難しさを社会にアピールし、その体制作りを支援すると共に、脳死判定の具体的方法について会員を対象とした講習会を開催する予定です。今回の声明に対して会員の皆様からご意見を戴き一部修正をいたしました。貴重な御意見を戴いたことに、深く感謝申し上げます。さらに、日本小児科学会が開かれた学会にするため、こうした重要な案件については今後も出来るだけ会員の皆様の御意見を戴く姿勢を取る所存です。
 定期接種になっていないムンプス、水痘、B型肝炎ウイルス、Hib、肺炎球菌などのワクチンを定期接種にすること、現行のワクチンを改善すること、わが国に導入されていないワクチンを導入することを目的に、日本小児科学会は昨年日本医師会や予防接種推進専門協議会などの関連学協会と協力して署名運動を行いました。会員だけでなく、コメディカル、保育園・幼稚園関係者、患者さんからも御協力を戴き、日本小児科学会として20万人以上の方からの署名を戴くことが出来ました。昨年12月には日本医師会保坂シゲリ常任理事や予防接種推進専門協議会神谷齋委員長を中心とする関係者と一緒に約270万人の署名を細川律夫厚生労働大臣にお届けいたしました。今後、その他の予防接種の改善や導入を含め、わが国のあるべき予防接種メニューについて国に働きかけることを検討しています。また、子どもが感染症や予防接種等の知識を学校教育によって正しく持つことができるように文部科学省にも働きかけたいと考えます。
 時間外診療を含めて小児の救急医療を確立し、速やかに診療できる体制を構築することも重要です。ただし、どの地域においても昼夜同じ様に高い診療レベルを維持することは不可能です。従って、出来るだけ昼間の受診を促すように社会へアピールすることも必要と考えます。また、今後限られた医療機関に時間外診療が集中することが予想されます。こうした状況の下での小児科医の負担についても今後現状を調査する予定です。さらに、小児医療提供体制について具体的案を公表し、会員の皆様と共に検討するつもりです。
 0歳児保育の対象児が9万人を超えています。さらに今後増える状況の中で、日本小児科学会は園医、看護師、保育士を対象とする研修や地域の保育機関との連携が必要になります。幼い子どもの成育のために望ましい保育環境を整備することを求めた運動をしたいと考えます。また、こころの問題や性感染症などの問題を含め、思春期の子どもの医療・保健の必要性が高まっています。日本小児科学会は関連学協会と協力して保育施設での医療・保健問題や思春期の子どもの医療・保健問題にも適切に対応できる小児科医を育成するための活動をこれからも続けます。
 病院小児科の集約化、変則時間勤務や短時間勤務、ワークシェア、グループ診療、医療クラークの採用、当直回数の制限、職員子弟の保育環境整備などについて、学会として具体的なモデル案を検討したいと考えます。忙しい子育てがほぼ終わった女性医師の復帰支援システムを日本小児科学会が地域の病院と協力して作り上げる事も求められています。ただし、これらの事業を行う際には地域の実情に合わせたプログラムを作ることが何よりも大切です。
 日本小児科学会の専門医が社会から信頼される存在になるために、専門医教育の内容について具体的に検討し、それを社会に示し、意見を募ることが求められます。
 日本小児科学会理事・監事などの執行部の利益相反開示事項についてもまとめ、昨年11月にこれを会員に公開し、御意見を戴きました。本年4月からの運用を目指します。
 以上の活動を推進するため、今後日本小児保健協会、日本小児科医会などの関連学協会との連携をさらに密にしたいと考えます。
 会員の皆様には日本小児科学会の活動に一層の御理解と御支援を戴けるよう、お願い申し上げます。


日本小児科学会会長就任のご挨拶

 この度日本小児科学会会長に選出されましたので、ご挨拶申し上げます。小児科学会の質的な向上を目指し、会員に目を向けた小児科学会にするために力を尽くす所存です。

1.日本小児科学会の基本

 日本小児科学会はわが国の小児科学を発展させて社会に貢献することを目的とする学術団体です。わが国の小児科学という学術活動を発展させることが最も重要な使命です。私どもは基礎研究と臨床研究を含め優れた学術活動を行い、優れた成果を世界に発信することにより内外から初めて評価される存在と考えます。世界から注目される基礎・臨床研究が日本小児科学会の会員から現在どのくらい発信されているのか、自己点検することがまず必要です。さらに、地方会、地区学会、分科会、小児科関連の国際学会など、いずれのレベルにおいても学術活動をさらに活性化する努力が求められています。臨床と研究とは表裏一体の関係にあります。わが国の小児科学の臨床を世界に負けない充実したものにするためには、小児科学の研究をこれからも活性化することが不可欠です。
 わが国全体の臨床医学の論文発信能力は最近数年間で約17%低下したと指摘されています。小児科学に限ってのわが国全体での統計はありませんが、新臨床研修制度開始以来小児科学の研究だけが他の診療科と違って活性化しているとは考えられません。このような状況が続けば、早晩わが国の小児科学の臨床、研究面でのプレゼンスは世界の中ではもちろんのことアジア地域の中においてすら低下することが危惧されます。これは結果的にわが国の子ども達へ不幸な結果を招くことになります。現在他の診療科は様々な方策を用いて学術活動の活性化に向けた努力をしています。日本小児科学会は学会として臨床・基礎研究を促進する仕組みを模索し、積極的に若手・中堅小児科医の臨床・基礎研究への参入を促す施策を実行する時期に来ています。
 新臨床研修制度の実施により小児科を選択する医師の減少が危惧されました。それに対して、当学会もその対応に努め一定の成果をあげたことは記憶に新しいところです。今後は若手小児科医を増やすための施策だけではなく、彼らの臨床能力の向上や研究マインドの育成など、小児医療の真の意味での質の充実に向けて小児科学会として取り組まなくてはならない重要な課題が残っています。その点において、女性医師への支援制度を具体的に提案していくことも速効性はないかも知れませんが小児医療の質の充実に不可欠と考えます。また、小児科学会は会員である小児科医が自らの仕事に対してself-esteemを持ち続けるための活動を今後展開することも求められています。

2.日本小児科学会の社会・国に向けての対応

 子どもを安心して育てることの出来る社会にするために、小児科医は小児医療・保健など多方面で貢献することが可能です。たとえば、わが国の予防接種体制は世界標準に遙かに及ばない状況にあります。わが国ではこれまで予防接種の副反応などの悪い面が強調されて来ました。社会に対しては学校教育を含めて予防接種の目的と意義を啓発しなくてはなりません。また、国に対しては副反応に対して国からの補償をこれまで以上に充実させること、定期接種になっていないムンプス、水痘、B型肝炎ウイルス、Hib、肺炎球菌などのワクチンを定期接種にする運動を展開する必要があります。特に、厚生労働省や関連学協会と連携して日本版ACIPの設立を目指すとともに、わが国の予防接種メニューに関して国に勧告を出すべきと考えます。また、子どものhealth reformを促進する一環として、子どもが感染症や予防接種等の知識を学校教育により正しく持つことができるように文部科学省に働きかけたいと考えます。
 時間外診療を含めて小児の救急医療を確立し、速やかに診療できる体制を構築することも重要です。現在進行している地域小児医療センター・中核病院構想を推進することも求められます。ただし、その際に地域の実情を十分に反映した柔軟な体制にすることが地域小児医療を担う小児科医の協力を得るために不可欠です。また、小児医療の集約化が進んだ場合、地域医療センター・中核病院に夜間・休祭日に患者が殺到することにより小児科医の負担が増えることがないかなど、現在構築されつつある新しいシステムに対する評価・対応も必要です。
 0歳児保育の対象児が9万人を超え今後さらに増える状況の中で、園医や看護師の教育や地域の保育機関との連携が今後ますます必要になります。また、こころの問題や性感染症などの問題を含め、思春期の子どもの医療・保健の必要性は今後さらに高まる一方です。小児科学会は関連学協会と協力して思春期の子どもの医療・保健問題に適切に対応することの出来る小児科医を引き続き育成しつつ、そのために必要な資源の配分を国や公共団体に求める運動を展開するべきです。
 本年7月から15歳未満の小児の臓器提供を認める改正脳死臓器移植法が適用されます。現在の不十分な救急医療体制の下で行わざるを得ない脳死判定や虐待死の診断などの問題と難しさを小児科学会は社会にアピールし、この問題に慎重に対応することは言うまでもありません。今後も学会内で議論を続けることが必要です。さらに、小児に脳死臓器移植を実施する場合には、移植を実施する医療機関への国や公共団体からの様々な支援が必要なことを明らかにし、アピールしなくてはなりません。
 わが国の子どもの健康を維持し増進することの対極に子どもの死があります。わが国にはしっかりとした子どもの死亡統計がありませんでした。研修指定病院は子どもの死に対して客観的なChild death reviewの出来る病院であるべきです。研修指定病院でChild death reviewが出来るような制度設計を検討したいと思います。
 以上の活動を推進するために、今後日本小児保健協会、日本小児科医会などの関連学協会との連携をさらに密にすることが求められます。また、日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会・外来小児科学会の4学会合同で開催する学会「小児科week(仮称)」を将来開催することも検討したいと考えます。

3.会員に対する広報活動の充実と会員からの意見拝聴

 会員が日々直面する医療上の課題についてその時点で最も適切と考えられる対応法を小児科学会が時期を失することなく会員に呈示する広報活動を充実させる必要があります。さらに、各種委員会報告を理事会にて討議し承認するだけでなく、少なくとも社会的影響の大きな事項については、小児科学会としての方針をあらかじめホームページなどで公開し約2万人に及ぶ会員からの意見を募るなど、理事会の意思決定に関わる方法論についても再検討が必要です。

4.会員に対する研修事業の充実

 小児科学会は専門医指導者講習会などの会員向けの研修事業を行っています。また、思春期医学臨床講習会、園医・保育士のための講習会などを開催しています。しかしながら、約半数を占める実地医家、約4割を占める病院勤務医に共通して必要な臨床講習会などがあまり開催されてきませんでした。今後、専門性の高い疾患だけでなく、頻度の高い疾患や一般的な治療法に対する臨床講習会などを積極的に行うことが必要です。

5.専門医制度のあり方

 専門医制度のあり方が現在問題になっています。これまで主として制度的な問題が検討されてきました。しかし、その前にしなくてはならないことがあります。現在のわが国の専門医になるための必要条件が米国とは全く異なっていることをはっきりと示すべきです。米国における専門医とは、研修期間中に専門とするsubspecialtyの臨床・専門知識を会得するだけでなく、ある一定期間それに関連する研究を行い、成果を出して公表することを必須としています。日本小児科学会専門医が社会から信頼される存在になるために、専門医教育の内容について具体的に検討し社会に示し批判をお受けする姿勢を示すことが求められます。

6.各種委員会・プロジェクトについて

 小児医療現場における様々な問題に対応するため、小児科学会では各種の委員会活動が活発に行われています。しかしながら、社会的影響の大きい事項に関する委員会の結論とそれについての理事会での討議結果に関して、小児科学会会員の多くは詳細を知らされてきませんでした。また、現在活動している委員会はすでに34に及んでおり、委員会・プロジェクトを整理統合するとともに新たな問題に対してはしかるべき対応をとる所存です。

7.国際活動について

 米国小児科学会(PAS)だけでなく、欧米のPediatric Research学会との関係を今後さらに深め、交流を深める必要があります。これは独り立ちして活動されている小児科医にとってもちろん重要ですが、これから海外の最先端の小児科臨床を学んだり、小児医学研究を行いたいと考えている若手小児科医にとってさらに重要です。予算上の制約はありますが、関連分科会と協力してPASやアジア小児医学研究学会(ASPR)への若手医師の参加を積極的に支援する制度を出来るだけ早く検討します。

8.小児科医の生活向上を目指して

 現在問題になっている医療崩壊の中心は病院崩壊に他なりません。これまでのように病院に勤務する小児科医の職業を聖職として捉え、自分の生活を犠牲にした勤務状況を勤務医に強いる時代ではありません。一方、小児科医の労働者としての権利のみを強調することは、真に実力を持ち周囲から信頼される小児科医を育て上げるために必ずしもふさわしいとは言えません。しかしながら、子育て中の女性医師が勤務する上で支障となる様々な障壁を取り除き適切な環境を整備することは、男女を問わず小児科医が勤務医として誇りと自信を持って働き続けることにつながります。そのために、病院小児科の集約化、変則時間勤務や短時間勤務、ワークシェア、グループ診療、医療事務員の採用、当直回数の制限、保育環境の整備などについて、学会として具体的なモデル案を示す事が必要です。また、子育て終了後の女性医師の復帰支援システムを小児科学会が地域の病院と協力して作り上げる事も求められています。ただし、これらの事業を行う上で、地域の実情に会わせたプログラムを作ることが何よりも大切です。

9.小児科学会執行部の利益相反事項の開示について

 すでに日本小児科学会は学会発表や小児科学会雑誌での発表における会員の利益相反事項の開示について定めてきました。しかしながら、小児科学会の理事・監事などの執行部の利益相反事項についてはこれまで開示されてきませんでした。今後出来るだけ早い時期にこの問題に適切に対処する所存です。今回は執行部を対象とした利益相反事項の開示基準作りから着手しますが、将来は各種委員会委員にもその適用範囲を広げたいと考えます。
 これからも会員の皆様から小児科学会の活動に御理解と御支援を戴けるよう、お願い申し上げます。